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07-03

「それは、私が話そう。」

「王子!?」


 よろよろと、大男に抱きかかえられて木陰から姿を現したのは王子だった。


「……我々は道に迷ってしまったのだ。」


 王子は淡々と説明した。最終日に向けた遠征の前の、金星学園との合同演習。そこで道に迷い土熊と出くわした、と。


「でもグレイブベアって……そんなに強くないわよ?」

「しかし、苦戦した。あれはおそらく授業で聞いていたのとは別の特別体だろう。だから、私はここで戦うのは得策ではないと判断し、……逃走命令を出した。それだけだ。」

「だから……最も足の遅かった……シアが犠牲となった。」


 しばしの沈黙。


「おかしいじゃない!魔術師なら誰が守らなければいけないんじゃないの!?勇者学園ではそう学ばなかったの!?」


 シアは魔術師だ。恐らく、撤退命令が出るギリギリまで魔法の準備をしたに違いがないのだ。だから、逃げ遅れたのだろう。しかし。返ってきた答えは。


「……勇者学園では、個人個人の考えを重視するんだ。逃走も個人個人各自で判断して逃走することになる。そして、俺は…殿下の無事を最優先に撤退することに決めた。」


 戦士と魔術師。分業制の金星学園と、一人で何でもこなす勇者育成の勇者学園。一つのパーティに二つの教えがシアを殺した。


「……自己責任だよ?☆」

「えっ?」


 事態の重さゆえか、今まで不思議なくらい黙っていた勇者学園一のお調子者が口を開く。


「聞いてなかった?自・己・責・任・だ・よ☆」

「何それ!パーティに自己責任!?聞いたことないわ!」


 なぜパーティにリーダーがいるのか。責任者だから、ではないのか。


「君達が学んでいるのは古い価値観に固まった、ゴリゴリの組織論さ☆この世は弱肉強食。自然の摂理☆」

「そうです、殿下!命令通り行った結果、弱者が死んだ。これは殿下が手を下したわけではない!自然な摂理だ!むしろ、一人だけで済んだこと事僥倖!殿下のご英断があってこそ!」


(……違う。)


 この違和感。ナナは断固抗議した。


「弱者は守るべきよ!」

「では戦士に飛び込めというのか?パーティで戦っても敵わなかった魔物に?私だって命は惜しい。」

「そうだよ☆それこそ犬死だよ☆」


(違う!)


 だが、うまく言葉にできなかった。違う事だけは感覚で分かってる。でも、その違いを今のナナには言語にする事ができなかった。


「それに、死んだのは聞いたこともないネームレスの庶民じゃないか☆むしろこれだけの重鎮を抱えて生き残れたのは奇跡☆」

「その通り!まさに王子のご英断だ!」


 ご英断。各々が発した言葉が森にこだまする。


(な、何言ってるの?)


 一体何が起きているのか、全く分からずナナはウィードに助けを求めた。


「ねぇ、ウィード!どうなのよ!」

「……殿下にお怪我がなくて何よりです。」


 違う。こんなおかしな人間に聞いたのが間違いだった。


「そうだ!ミユ!ミユはなんて思ったの!?」


 ミユなら。いつも正しい答えを教えてくれたミユなら、本当の事を教えてくれるはず。ナナはそう確信していたが、しかし。


「……ご英断です、殿下。」


 ミユもまた、それだけ伝え、王子に頭を下げた。

 

「何言ってるの!?みんなおかしい!おかしいわ!」


 ナナだけが一人、絶叫していた

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