07-04
シア・ヴィーナス、享年15歳。
王子たちは逃げるように帰国し、彼女は学園の名を与えられ埋葬された。彼女を慕うであろう下級生たちのすすり泣く声が聞こえる。それに、ミユの顔。
(あんな顔、初めて見た。)
あの後も、あのパステル男は言っていた。
「命には優先順位があるのさ☆君だってミユが死ななくてホッとしたんじゃないかい?☆」
……事実だ。もしあの場面がミユであったのなら、と思うだけで心が張り裂けそうになる。しかし、本当にそうだろうか。そして、それでいいのだろうか。それらの問いかけは教室に戻ってからもナナの頭の中を巡っていた。
「野猿も悩むのね」
ミルの挑発にも黙り込むナナ。
「言い返さないとか、よっぽど重症だわ。」
「……あんたこそ、ウィードはどうしたのよ。一人なんて珍しいじゃない。」
「そうねぇ、これはいい機会だと思って。」
と、ミルはナナのそばにあった適当な机に腰かけた。
「あなたはこの結果に満足しているの?」
「……いうわね。」
ナナは苦虫をすりつぶしたような顔をした。
「正直、ホッとした部分はある。でも、それはほんの一瞬なの。やっぱりおかしいの。ミユのあの顔は耐えられないし、なにより、ミユの学友というのなら、私の学友でもあるわ。」
「それは、同じ学園の生徒として?」
ナナはこくりとうなずいた。
「はい、よくできました。」
ミルの突然の拍手にナナは困惑した。こんな時にからかっていい事じゃないとナナは怒る。
「はぁ?馬鹿にしないで!それくらいの事、私にだってわかるわよ!それを何よ!あなたは何もしてないのに、上から目線で、」
「そうね。だから、それを皇帝の前で言って。」
「え?」
ナナは目が点になった。
「聞こえなかったの?皇帝の前で言って。それくらいの事でしょ?聞いたわよ。」
「そんなのいえるわけないでしょ!皇帝陛下に意見なんて!」
皇帝といえば最も偉い人であることくらい、ナナにだってわかる。そんな偉い人に反抗したら、何が起きるか、くらい。
「そう?私も王族よ?誰だと思って力説してたの。」
ミルが、まるでナナの心を覗き込むかのように見つめてくる。
「私なら、か弱いから?腕っぷしで勝てそうだから?それとも、王族ごとき、とでも思ってるのかしら?でも。それが、あなたが言う平等というものなの?」
(……悔しい。)
パステル男も、小娘も。間違っているはずなのに、正しい言葉でナナの心を傷をつけていく。
「あなたが覚悟があるのなら、皇帝陛下の前でも言えるはずだわ。」
(覚悟。それを持てば……いいのかな。)
ナナはミルに尋ねた。
「言って、殺されたりしない?反逆者って。」
「さぁ?されるかもね。」
「私に死ねっていうの!?」
ナナの激昂をミルはけらけらと笑う。
「冗談よ。そういう仕来りは200年前はあったみたいだけど。そんなの今は聞いたこともないわ。」
そう言って、ミルは腰を掛けていた机から降りた。
「本気ならばできるはずよ。その気になったら連絡して頂戴。あなたが良ければその機会はいくらでも与えてあげる。」




