E-1
授業中。
相も変わらず座学に気分が乗らないナナは、授業そっちのけで、窓の外で自由に飛び回る白い鳥を見ていた。小鳥たちは。ナナの気持ちなど知ったことかと、楽しそうに愛の歌をさえずっている。
(わたしもあの鳥のように、早く自由になりたいなぁ。)
そのためには、早く卒業して、冒険者になって、名声を得て、貴族になって。
(そして、いつの日か王子様が迎えに来るの。『ようやく見つけた。君が私のお姫様だ』、なーんて言われたりして。)
と、ここまであり得ない妄想をしていることに気付いたナナは、恥ずかしくなって一度考え直す。
(いつか、では駄目ね。王子様は待っても来ないのよ。もう少し現実を見ないと。そうね、今すぐ。今すぐよ。今、あの教室のドアをバーンと開いて、絶世のイケメンが、将来のお婿さんが……)
ガチャ!
(……えっ?)
妄想が途切れる程の大きな音を立てて教室の扉が開くと、人影が飛び出してきた。ウィードである。
「ウィード先生?どうしたんですか?」
「特級命令だ。説明は後でする。」
授業を中断され慌てふためくミランダ先生をしり目に、ウィードはナナの方へ向かっていった。
「へ?わたし?」
「そうだ。行くぞ!」
ぽか~んとするナナを脇に抱え、ウィードは窓から飛び出した。
「ちょっ!なにしてんのよ!離して!」
「それは出来ない。」
「どうして!」
「特級命令だからだ。」
(……とっきゅう?)
特急といったって急ぎ過ぎである。窓から壁へ、壁から木へ、足を巧みに動かし、次から次へと飛び移って行く。体幹は強いナナではあるが、自分で移動するのと人に移動してもらうのは訳が違う。うまく整えきれずにナナは目を回した。
「きゃぁぁあ!やめて!見える!見える!パンツ見えちゃう!」
「大丈夫だ。私からは見えない。」
そういう問題じゃない。他の人に見られたらどうする、ってことだ。
(でもここには、女子しかいないし、ほとんど授業中だし、他に人はいないから見られる心配はないか。ならいいか、って、そうじゃなくて!)
いつものように頭がぐちゃぐちゃになったナナは叫んだ。
「とにかく、もうちょっと優しくできないの!?」
「優しく?」
「例えば……お姫様抱っこ、とか?」
「分かった。」
おずおずとナナが申し出ると、ウィードはナナを前に抱え直した、
「きゃー!ちょっと待って、冗談!冗談!冗談だからぁ!」
思ってもみなかったウィードの行動に、いたたまれなくなったナナは抵抗するも、敵うわけはない。仕方なくそれを受け入れる。
「……お尻、さわらないでよ?」
「わかっている。」
「で、どこに行くのよ!目的は?」
「すぐにわかる。」
ウィードの言葉の通り、二人が第二校舎の裏側に回りこむと、すぐにナナにも目的が分かった。校庭にミルたちが待ち構えていたからだ。




