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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第二章

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60.タマネギと涙

 テルルダンジョン、地下七階。
 六階と似ている、木々があってぺんぺん草があって、野外の様なダンジョンだが、雪が降っていた。

「雪? ダンジョンの中なのに?」
「ダンジョンスノーよ。モンスターを倒して何もドロップしなかったとき空気か水になるわよね。ダンジョンの構造次第で一部雪が降る階層ができるの」
「そういえば水は地面に吸い込まれていったな、なるほど」

 ちょっとだけ面白かった。
 手のひらを上向きにして雪をキャッチ。手のひらに触れた瞬間雪は溶けてなくなった。

「冷たくないな」
「ダンジョンで倒されたモンスターの養分や魔力でなった雪だからね」
「温度でじゃないのか」
「ダンジョンスノーが降る階層は冒険者もモンスターも強化されるのよ、その養分と魔力を体に受けるからね」
「へえ。流石セレスト、詳しいな」
「え、そ、そんなでもないけど……やった、ほめられた」

 声が尻すぼみになっていって、顔を赤らめるセレスト。
 そんな彼女と、エミリーにイヴと一緒にダンジョンを進んでいくと、いつぞやに遭遇した顔を出くわした。

 初老の男と若い男女の三人組だ。
 ちょうどモンスターを倒したところのようで、初老の男はドロップしたタマネギを拾って魔法カートに入れた。

「よくやった! おれは今猛烈に感動している」
「「隊長……」」

 初老の男はいかにも感動した様子で涙を流した。
 それを見つめる若い男女は――前にみたときよりもやつれていた。
 格好はボロボロ体は生傷だらけ、相当に無茶をしてきたようだ。

「つらかったよな、しんどかったよな。倒してもドロップしないときもあった、倒し損ねて逃がしてしまったこともあった。その度にお前達が悔しくて、つらい思いをしてきた……おれは全部しってる」
「隊長……」
「おれも同じ気持ちだ。お前達がつらい思いをするたびにおれも同じ気持ちになってた。だけど言えなかった、それを言ってしまえばお前達はそこで終わってしまうって思ったからだ」

 初老の男は更に涙を流して、ぽろぽろと、嘘くささ全開の大泣きで。

「隊長もつらかったんですね……」
「おれの事なんかどうでもいい! お前達だ。しんどさに耐えて成長して、成し遂げたお前達のことを、おれはほこりに思う! お前達と出会えてよかった!」
「隊長……ううんおれ達こそ」
「隊長についてきてよかったです」

 初老の男の涙に二人は感動して、三人はそこで抱き合った。

 いやな現場を目撃してしまったので、おれは足早に立ち去った。
 「洗脳完了」という言葉が頭に浮かんだ。
 またちょっと昔の事を思い出しそうになった。

「……今日は適当にちょっとだけやって、レアモンスターと出会えなかったらあがるか」
「はいです」
「い、一緒に夕ご飯どうかな。ダンジョンの光がよく見える酒場を見つけたの、リョータさんと一緒に」
「わたしは地下二階にもどる。ニンジンに囲まれて寝たい」

 エミリー、セレスト、イヴのそれぞれらしい(、、、)返事に、首をもたげた黒い感情が少しずつ消えていく。

「ヨーダさん! モンスター出たです!」

 エミリーの声で全員が一斉に気を引き締めた。
 ダンジョンスノーが降りしきる中、エンカウントしたのはちょっと大きいが変哲のないスライムだった。

 ここは硬い(、、)おれが先陣を切ることにした。
 疾走してスライムとの距離を詰めつつ二丁拳銃で貫通弾を撃つ。
 弾がスライムを貫通したが、倒れなかった。

 ならばとそのまま飛びついて、全力の右ストレート。

「え?」

 思わず声が出てしまった。全力の右ストレートに手応えがなかった。
 取り憑いたまま今度は二丁拳銃を連射、込められた銃弾をありったけ撃ち込んだ。
 ――が、だめ。最初の貫通弾以降まったく効いてる様子はない。
 ならばと貫通弾を放つが、今度は貫通しかなった。

「どういう事――くっ!」

 戸惑った一瞬にスライムの反撃を受けた。至近距離からの打撃をとっさに腕でガードして、その勢いで後ろに飛んだ。

 腕がじんじんする。地下六階の親子スライムよりも痛い。
 ダンジョンスノーの影響かも知れない。

「ダメですリョータさん、ガッツスライムは一人じゃ倒せないわ!」
「どういうこと?」
「ガッツスライムは即死になると無敵になるの。最後に攻撃した人からのダメージを一切受け付けなくなるわ」
「削り役とトドメ役が必要って事か」
「うん」

 セレストはそういって、バイコーンホーンで小さな炎の弾を飛ばした。
 銃弾の連射で倒れなかったガッツスライムがそのまま倒された。

「すごい、倒れたです」
「ソロ禁止の階層。たまによくある」

 エミリーとイヴが口々にいった。

「そういうことだからこの階はわたし達に任せて。トドメ役はあれを持ってるリョータさんがベストだから」
「そういうことなら仕方ないな」

 三人と雪の中を歩く。
 何となくまわりを観察すると、二種類の冒険者がいることに気づく。

 片方は普通に出会ったモンスターを狩ってドロップを魔法カートに入れる、安定志向の生産冒険者。
 もう片方は出会ったガッツスライムを無視して、猛禽類のような目で何かを狙ってる冒険者。きっと収穫祭用のレアドロップ狙い、一発大きいのを当てる――って連中なんだな。

 そんな冒険者がスルーしたガッツスライムをおれが達がもらう事にした。
 エミリーが飛び出した、ハンマーをぐるぐる回して、勢いつけてたたきつける。
 スライムは半分はじけ飛んだ、同時にエミリーも反撃を受けた。

「エミリー」
「と、トドメをするです!」

 スライムから距離をとりつつ叫ぶエミリー。
 おれは銃を両手で構えた。

 まずエミリーに回復弾をうってから、スライムに通常弾をうつ。
 エミリーが回復して、スライムから複数のタマネギがドロップされた。

「大丈夫かエミリー」
「はいです。それよりも成功したのです」
「そうだな、攻略法が分かればそれほど強い相手じゃない」
「一人だとどうしようもない階層だけどね」

「タマネギ……」
「イブちゃんはタマネギ好きです?」
「ニンジンさえいればいい」
「相手が人みたいな言い方だな」
「らばー」
「頬を染めて言わないでくれ!」

「それじゃ今夜はカレーにするです。ジャガイモとタマネギと、ごろごろニンジンが入ったカレーなのです」
「ごろごろニンジン……」

 イヴはジュルリとよだれをたらした、エミリーが慌ててそれを拭く。
 自前のウサミミにバニースーツで大粒のよだれ……シュールな光景だ。

「一緒につくるです」
「任せて、切るのは得意」

 イヴはそういって、早い(、、)チョップでタマネギを切った。

「ひゃう……な、涙がでるです」
「ごめん」

 イヴがきったタマネギにやられて、エミリー……そして当のイヴ本人のまなじりから涙がにじんだ。
 なにやってるんだいったい、とちょっと微笑ましくなった

「セレストはカレー好き――」
「危ない!」

 注意とほぼ同時に何かに横から殴られた。
 衝撃と共にすっ飛んで、地面に突っ込んで砂埃を巻き起こす。

「ヨーダさん!」
「ニンジン!」
「大丈夫だ! あと呼び方変えてくれ!」

 地面から飛び上がった。
 完全な不意打ちで脇腹がズキズキする。

「ちっ」

 すぐそばから舌打ちが聞こえた。
 みると、一発狙いの冒険者が悔しそうな顔をした。

 振り向くと、おれがいたところに違うスライムがいた。
 地下七階のレアモンスターか!

「運のいいやつめ」

 冒険者はそういって、ふてくされた表情でたちさった。
 そうか、おれがモンスターの奇襲をうけて、おれ達がモンスターの攻撃権を持ったから悔しがってるのか。

 ま、こればかりは運だから。
 男にほんのちょみっとだけ申し訳ないと思いつつ、みんなのところに戻った。
 攻撃する前にセレストに聞いた。

「こいつの倒し方は?」
「ハイガッツスライム。トドメが別な人なのは同じだけど、体力の限界を超えた攻撃とか、無敵になったときの攻撃をまるまる反射するから気を付けて」
「丁寧に削らないとだめです」
「まかせて、こいつの体力は把握してる」

 イヴがそう言って飛び出していく。

「把握してる?」
「前にやった事がある。大体これくらい」

 イヴはチョップを放った。
 速さが中くらい――おれを叩くときよりちょっと遅く、全力の時よりもちょっと早くみえるチョップをはなった。
 それがスライムを頭からかち割った。
 ぱっくりとザクロのようになったスライムが反撃しようとして、イヴがサッとかわした。

「もうおっけー」
「ああっ」

 銃を構えてトリガーを引く。
 通常弾が打ち出されて、レアモンスターを撃ち抜く。

 スライムの目から涙がこぼれた。
 大粒の涙はスライムの体が消えたのとほぼ同時に地面に落ちて、そのまま固まった。

「その宝石がドロップだわ、装備すると攻撃を一部反射する効果があるの」
「へえ」

 地下七階のレアモンスター、そのドロップはちょっと面白い効果を持っていた。
 HPと体力S、それと組み合わせて使いたい効果だった。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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