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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第二章

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35.追尾弾の威力

 疲れ果てて倒れた女性をエミリーに預けたあと、おれはダンジョンの方に向かった。
 まずは到着した事の報告と、これからの事を聞こうとした。

 セレンはダンジョンの入り口を中心に、まるで野戦陣地の様に多くのテントが並んでいる。
 そこいら中に冒険者が数多く行き交い、ドロップ品の入った魔法カートを押してる。
 魔法カートを押した冒険者は特定のいくつかのテントに集まっている、あそこが買い取りをする場所か。

 何となく眺めててもよく分かる、建物がテントになっているだけで、街の中と同じ生活の営みが行われている。

 おれはすれ違った青年冒険者を捕まえて、シクロダンジョン協会の担当者がどこにいるのかを聞いて、そこにやってきた。

 かなり大きい、遊牧民族が使っていそうなテントだった。
 中はまるでオフィスの様な雰囲気の内装に作られてて、何人かの秘書がせわしなく動き回ってて、一番奥に30代の責任者らしき男が座っていた。

「すみません、シクロから来た佐藤亮太ですけど」
「おお、待ってたぞ」

 名乗ると、男は両手を広げて立ち上がり、おれの方にやってきた。
 手を差し出し握手を求めてきたので、よそ行き用の笑顔で握り返した。

「連絡は受けてる、来てくれて本当にありがとう。おれがここの担当、名前はデュークだ」
「佐藤亮太です」

 もう一度名前を名乗って、早速と話を進める。

「ざっくりとした話しか聞いてないので、具体的に何をしたらいいのかを説明をしてもらえないだろうか」
「もちろんだ」

 オフィスのように出来てるテントの中にあはソファーもあって、そこでデュークと向かい合ってすわった。

「レアモンスターのドロップを調査する、という話は聞いてるだろうか」
「ああ」
「それも実は少し状況が変わってきている。というのもこのセレンは全部で地下十階まであるんだが、現時点の調査だと、通常モンスターのドロップが野菜、肉、野菜、肉と交互になってるんだ」
「なるほど」
「こういう場合、他のダンジョンもそうだが、レアモンスターのドロップも野菜、肉、野菜と揃ってることになる」
「それなら調査する意味はなくないか?」
「だけどシクロかヘテロのどっちのものになるのかを決める必要がある」

 デュークは直接質問には答えず、話を先に進めた。
 それに頷くおれ。

 今回の話はシクロとヘテロの争いであるのと同時に、街の収入、税金に関わる話になっているのだから、白黒をつける必要は確実にある。

「だから実質、期限内にレアモンスターのドロップが判明した分で決めるということで合意した。レアモンスターは出現がレアだしドロップも必ずするわけじゃない、期限内にしなかったのは『しないもの』とみなす事になったのだ。もちろん本当にしないという可能性もある」

 たしかに、何もドロップしないモンスターはあるな。

「なるほど、つまりおれは10階層のうちの五階分のレアモンスターを重点的にたおせばいい、ってことだな」

 デュークははっきりと頷いた。
 話はシンプルになっていた。
 そういうことならわかりやすい、ターゲットも目標もはっきりしてるから行動しやすい。

「わかった、さっそく明日からもぐって――」
「それは大丈夫だ、冒険者には報奨金を出すようにした」
「報奨金?」
「レアモンスターが出たら――野菜の階層でそれがでたら連絡をもらって、こっちが――つまりあなたが出向いて倒す事にした」
「なるほど」

 おれ一人がレアを探して回るのだと効率が悪くて、シクロの協会としてレアモンスターの情報を冒険者からかって、おれをピンポイントに送り込むって事か。
 ますますわかりやすくなって、やりやすいなと思った。

     ☆

 その日のうちに早速連絡が入った。
 セレンの地下一階、そこにレアモンスターが出たと連絡を受けた。

 デュークと一緒に向かうと、何人もの人間ががそこにいた。

 青年の冒険者が一人いて、そいつはスライムの様なモンスターを捕まえている。
 軟体動物の様なモンスターはうねうねしながら脱出しようとしてるが、冒険者ががっちり捕まえてる。

 一方で、すこし離れたところに身なりのいい初老の男と、精悍な顔つきの冒険者がが立っていた。
 初老の男はニヤニヤしながらこっちを見ている。
 なんというか、見下されてるように感じて妙に不快感を覚える。

 気になって、デュークに聞いた。

「あの人は?」
「ハーバードだ。ヘテロダンジョン協会の――おれと同じような立場の人間だ」
「向こうの責任者か」

 確かに中間管理職っぽい顔をしてる、いろんな意味で。

「その後ろに一人冒険者がいるだろ? あいつはの名前はユージン、実力のある冒険者だけど、植物のドロップが最低のFの男だ」

 植物のドロップF?
 なんでわざわざその事をいってくるんだデュークは?
 わざわざ言うからには意味がある、それを考えた。

 考えて、ふとひらめいた。

「野菜がドロップするだろうレアモンスターに植物ドロップ最低の冒険者をぶつける」
「すると野菜がドロップするかも知れないレアモンスターからはドロップされない。それを期限まで続ければ――」
「ようするに妨害工作か」

 なるほど、向こうの責任者のニヤニヤ笑いの理由が分かった。

「セコイ手だ。しかし実力の冒険者なのは間違いない、そいつがレアモンスターを倒したところで誰も止めることは出来ないし、とがめることも出来ない」
「そりゃそうだ」

 ドロップFだから倒したらだめって決まりはどこにもない。そんな事を言い出したらエミリーはモンスターを倒したらいけない事になってしまう。
 ドロップFだろうが、一発逆転を狙ってレアモンスターを倒すのは許されていることだ。
 それを逆手にとった実質的な妨害工作――デュークの言うとおりセコイ手だ。

「なんにせよ、今回は我々の勝ちだ。あの冒険者はこっちと契約を結んでる、彼が捕らえている以上ユージンは横取りはできない。ある冒険者が確保したモンスターを無許可に倒してはならないのだから」
「いまから倒す」
「頼む」

 銃を取り出し、通常弾を込めた。
 味方の冒険者がつかまえてるから通常弾で大丈夫だと思った。

「そのままつかまえててくれ」
「任せろ」

 青年の冒険者ははっきりと頷いた。
 銃を構えて、念の為に二丁とも構えて、融合した威力の高い貫通弾でモンスターを撃ち抜いた。
 モンスターは撃ち抜かれて、三日月のように欠けた。

 一丁上がり――と思いきや。
 ハーバードがますますニヤニヤしたのとほぼ同時に、モンスターが再生した。
 再生と共に体積が膨らんで、青年冒険者の手をはじいて地面におちた。

「そいつは」

 ヘテロ側の冒険者、ユージンと紹介された男が渋い声で言った。

「体のどこかに核がある、核をつぶさない攻撃をする度に再生する、そして再生の度に強くなる。そういうものだ」
「核の場所は個体ごとに違う、それを見破れるのはこのユージンだけだ」

 ハーバードが付け加えるように言った。

「闇雲に倒しても強くさせてしまうことになる、それでは皆を危険にさらす。ここは我々に任せたまえ」

 ハーバードは言った、ますますのにやけた顔で、まるで勝利宣言の如く。
 それをきいたデュークは苦虫をかみつぶした顔になった。

「ぐぐぐ……ヤケに余裕綽々だと思っていたがそういうことだったのか」

 悔しがって、それから申し訳なさそうな顔でおれをむいた。

「すまない、こっちの調査不足だ。こいつの弱点はすぐに調べさせる、ここは――」

 デュークが実質敗北――撤退宣言をしてる横で、おれは銃に別の弾丸を装填して、無言のまま明後日の方向に向かってトリガーを引いた。
 多分いける――と半ば確信して撃った銃弾はブーメランのような軌道を描いて、地面を跳ねるモンスターを撃ち抜いた。
 撃ち抜かれたモンスター、さっきと同じように三日月のように欠けて――再生することなく砕け散った。

「なっ――」
「コアを見抜けるのか?」

 ヘテロ側の二人の表情が一変した。
 ハーバードは唖然として、ユージンは苦虫をかみつぶしたような顔になった。

 それを無視した、じっと砕けたモンスターの残骸を見た。
 やがてモンスターは消えて――もやしがドロップされた。
 よく見たら粒が黄色くておおきい、大豆もやしだ。

 もやし……レアモンスターのくせにしょぼいドロップだったが。

「見ての通り野菜だな」

 デュークがむこうにむかって、勝利宣言の如くいいはなった。
 ヘテロの二人は悔しそうな顔をして、ダンジョンから立ち去った。
 とりあえずここはおれ達の勝ちだな。

 そいつらがいなくなった後、デュークはおれの手を両手で握り締めて。

「ありがとう! 来てくれて本当にありがとう」

 と何度もお礼を言ってきた。

 早速依頼を果たせたことに、おれはホッとして、満足感をおぼえたのだった。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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