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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第三章

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176.アンダッチャブル

 男の前に座った。
 ニコラス・ライクフィールド。

「お待たせしました」
「おっ、来たな。姉ちゃんこれ本当にこの店でいちばん古い酒か?」
「はい、お値段はーー」
「あーいい、いい。金の話はいいから」

 ニコラスは店員から酒瓶を受け取って、くんくんと匂いをかいてから、コップに二人分を注いだ。

「ささささ、ぐいっといって、ぐいっと」
「それよりも、なんで俺の事を知ってるんだ?」
「んあ?」

 すすめてきたくせに自分はさっさと口をつけたニコラス。
 黙っていれば割とダンディな顔なのに、表情や仕草が子どもっぽいっていうか、コミカルっていうか、そんな感じがする。

「これだよ、これ」

 ニコラスは一枚のカードを取り出しテーブルの上に置いた。
 それはーー俺のカードだった。
 ☆7つ、シクロが俺を表彰して同時に発行したカードだ。

「うがあ!」

 ま た セ ル か

「これあんただろ? リョータ・サトウ。最初分からなかったぜえ、このカード出来がわるすぎるもんよ」
「出来?」
「ぜっっっぜん再現してねえだろ? 実物のオーラの十分の、んにゃ、百分の一も再現できてねえ」
「オーラって……そりゃカードだし」

 俺にあるかどうかはともかく、カードにオーラを再現しろってのは無茶な注文だ。
 まあ、それはともかく。カードをちらっと見た。
 俺の顔と名前を知ってる理由が分かった。

「ほらほら、のんでのんで、ぐぐぐいっと」

 ニコラスにすすめられた酒で唇を湿らせた。
 彼の注文法のせいで何の酒はしらないが、蒸留酒って事はわかって、すっきりして飲みやすく、いい酒だってのも分かる。

「いやあ、こんなところであんたに会えるなんて思わなかった。ずっと会いたかったんだぜえ?」
「会いたかった?」
「リョータファミリーのボス。アンタッチャブル、リョータ・サトウ」
「アンダッチャブル? 何だそりゃ」
「あんたの事だよ。ほらあ、あんたの前で理不尽な事をすると介入されて、やってる事を阻止されるだけじゃなくて運気まで落ちるっていうじゃねえか」
「あぁ……」

 そういえばそんな話もあるな。
 最近よくそんな風に言われる、クリフォードの一件以来ますますそう言われる。

「それでついた名前がアンタッチャブル。あんたにふれちゃいけねえって事だ」
「なるほどな。はた迷惑な二つ名だよ」
「なあなあ、俺とたたかってくんね?」
「……は?」
「だーかーらー、俺と戦えくれっていってるんだよ。☆7の冒険者と遭遇したら戦ってみたくなるもんだろうが?」
「ならないよ! なんだよその戦闘民族的な発想」

 コップを置いて、きっぱり断る。

「戦わない。あんたと戦う理由がない」
「なんでだよ。いいじゃねえか、ちょっとだけ、なっ、ちょびっとだけ」
「せがまれてもだめ」
「どっちかが倒れるまででいいからさ、なっ」
「すっごいガチな戦いじゃないかそれ! しないから」
「なんでだよお、たたかおうよお」
「子供か!」

 ニコラスは駄々をこね始めた。
 ダンディな顔持ち、渋みのある声。
 だけどわがままをいってる子供の様な振る舞い。

 何なんだこの人はって思わず呆れる様な振る舞いだ。

「そうだ」

 ぞくり、と背中に汗が伝う。
 それまで駄々をこねていたニコラスが幽鬼のごとく立ち上がる。

「さっきお前さんがアイツをやってたな。よし、あれと同じ店員にちょっかいをーー」
「やめろ」

 俺は静かに、だけどはっきりとした口調でニコラスを呼び止めた。
 繁盛してる店の中でせわしなく動き回ってる店員に今にも襲いかかろうとしたニコラスが動きをとめてこっちを向いた。
 目が妖しいひかりを放っている。

「やめろ?」
「ああ。……そんな事をしたら一生お前と戦わない。何があっても」

 頷いた瞬間、ニコラスに言われた事を思い出した。
 アンダッチャブル、おイタをした人間が阻止されるだけじゃなくて運気を落としてしまうと言う話を。

 それを思い出して、ニコラスを睨んで、警告した。
 すると。

「ちょちょちょちょ、それは困るって」

 ニコラスのやる気が一瞬で瓦解して、椅子に座り直して俺にすがりついてきた。

「そっか、わざとおイタしたら逆に望みは叶わねえのか」
「……」
「うーん、むむむむ……うがあああ」

 唸って、呻いて、頭を抱えて奇声を上げる。
 なんというか……大きな子どもだなあ、本当に。

「……はあ、しかたない、諦めるか」
「というかなんで俺と戦いたいんだ?」
「お前さんつよいだろ」
「……まあ、それなりに」
「つよいもんとたたかうとよお、こう……股間がうずくんだよ」
「え?」
「びんびんになって、はち切れそうになって、うあああああ……って爆発しそうになってーー」
「変態だー!!」

 ここ二も変態がいた、しかもやばいタイプの変態だ。

「わからないかい? 女を抱くときの快感と似たようなもんだよ、こっちの方が十倍ーー」
「しってるよ! そういう変態なのは聞いてすぐに分かったよ!」

 というかわざわざ説明するなキモイから!

「はあ……なあ、どうしたら戦ってくれるんだ?」

 ニコラスはテーブルに突っ伏して、切ない目で俺を見あげながら聞いてきた。
 おっさんなのに子ども……こいつの事こどもおっさんって呼ぶか。
 ……そう呼ぶと妙に可愛く感じちゃうからやめとこ。

「諦めてくれると助かる」
「俺はあきらめねえぞ! 何があってもだ」
「かっこいい台詞やめてくれ。いつか本当に戦わざるをえない気になってしまう」

 無理矢理しかけてくる様子もないし、やばいやつだけどとりあえず無害と判断して、酒に付き合った。

「ちょ、ちょっと何をするんですか!」

 店の入り口から騒ぎ声が聞こえた。
 何事かと見ると、さっきの借金取りの姿が見えた。
 人数が増えてる、仲間を連れてリベンジか?

 チンピラはさっきの女を捕まえて、ドスのきいた声で迫る。

「さっきの男はどこだ」
「え、え……」
「答えろや!」
「きゃっ!」

 男が手をあげた、女は頬をはたかれ、バランスを崩して倒れてしまった。
 あいつらーー。

「おいおいおいおい」

 俺よりも先にニコラスが動き出した。
 立ち上がって男達のいる入り口に向かう。

 俺は様子を見守ろうと思った。
 (☆7)に挑戦をしてくる人間だからつよいはずだ、ここは任せても大丈夫だろうと思ったのだが、意外な展開になった。

「ボ、ボスっ。お疲れ様です!」
「「「お疲れ様です!!」」」

 男が頭を下げると、そいつが連れて来た仲間達も一斉に頭を下げた。
 って、ボス?

「おいおいおいおい、おまえら何してんだ」
「え? いや俺らは取り立てを……この女はうちから金をかりてて」
「おりゃ見てたぞ。この人は金を返した。金をきっちりかえしたお客さんになにしようとしてんだおめえは」
「そ、それは……」

 男が直立不動になって、しかしガクガクと震えだした。
 連れてきた仲間達も似たようなもんだ、まるでとんでもないモンスターに遭遇してしまったかのように、完全に怯えていた。

 応えない男、ニコラスは男を殴った。
 予兆のないパンチ、男はきりもみして店の外に吹っ飛ばされていった。

 ニコラスはゆっくりと歩いて、吹っ飛ばされた男の前に立った。
 そのまま蹴りをいれた。
 蹴って蹴って踏みつけて、男を痛めつける。

 さんざん痛めつけた後、しゃがんで髪をつかんで顔を上げさせる。

「なあ、おりゃいつもいってるよなあ。金をかえさねえのは客、きっちりかえしたのはお客様だ」
「あ、う……」
「おめえ、お客様に何をしようとしてたんだ、ああん?」
「や、め……」
「ああん!?」

 掴んだ頭を地面にたたきつける。
 そのままもう一度あげて、更にーー。
 ってなったところで俺が止めに入った。
 男の頭と地面の間の手をいれて止めた。

 ずしり、ときた。
 止めなかったら男の頭がトマトみたいにぐちゃっといってたくらいつよい力だった。

「なんだ?」
「もういいだろ」
「こいつは俺の子分だ、子分がミスしたから説教してるんだ。わかるだろお?」
「殺してしまったら意味がない。説教が無駄になる」
「無駄に?」

 ニコラスは首をかしげ、空を見上げて考える。

「そうだな」

 にかっと笑って、男の頭をはなした。
 そのまま立ち上がって、俺をまっすぐ見つめて来た。

「うんうん、そのとおりだ。お前さんが正しい。殺したら説教がむだだもんな」
「分かってくれたらいい」

 俺はほっとした。
 とりあえず後味の悪いシーンは回避できたみたいだ。

「いやあ、やっぱりお前さんはいいやつだ。なあ、やっぱり今からでも俺と戦わねえ?」

 毒されてきたのだろうか、ニコラスに愛嬌があるようにみえた俺は。

「さっき放っておいたら俺と戦えてたかもけどな」
「はえ?」
「俺がお前の子分をやっつけたら、親分としてけじめをつけるために出てきたら、戦えたかもだろ?」
「……あああああ! やっちゃまった! もういっかい! いまからもいっかいーー」
「ちなみにそのためにわざわざしかけてきたら筋が通らなくなって望みがかなわなくなるよ」
「うがあああ!」

 ニコラスはますます頭を抱えて悔しがった。

「ちっくしょ……神は意地悪だ」

 がっくりとかたをおとすニコラス。
 やっぱりどこか、愛嬌のある男に見えてしまうのだった。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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