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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第三章

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177.通常業務

 一通り喰って飲んだあと。
 騒ぎの中心で注目されてる事もあって、俺は早めに退散することにした。

 レジで会計を済ませて外に出ると、さっき助けた女の人が慌てた様子で追いかけてきた。

「あ、あの!」
「うん?」
「ありがとうございます! 見ず知らずの私なんかをたすけてもらって……なんとお礼をしたらいいか」
「気にしなくてもいい、偶然だから」
「偶然、ですか?」
「ああ偶然だ。俺が偶然そこに居合わせて、偶然解決出来る手段を持ってただけ」

 そう、全くの偶然だ。別に狙った訳じゃない。

「でも……」
「俺の知りあいがこんなことを言ってたんだ。『困る者がいて助ける力をもっている者がいた』ってさ。それだけの話だから」
「それでも……ありがとうございます!」

 女の人は頭を下げた。

「絶対、このご恩は返しますから」
「だから……」
「絶対!」

 女の人は力強い眼差しで、まっすぐ俺を見た。
 その意気込みは半端なくて、何が何でもそうする、って意思が読み取れた。

「……そうか。俺は佐藤亮太。普段はシクロにすんでる」
「え?」
「恩返しするって言うのなら止めないけど、ムリだけはするな。俺は逃げも隠れもしない」
「は、はい……」
「恩返しなんかの為にムリをしてそれで困ったら、また助ける力をもったどこかの俺がしゃしゃり出るからな」

 ウインクしながら、おどけた感じで言い放つ。
 女の人はしばらくきょとんとした後、もう一度深々と頭を下げた。

「はい! ありがとうございます!」

 といった。

 その後彼女が店の中に戻っていくのを見送ってから、俺は再び歩き出した。
 ザッザ、ザッザ、ザッザーー。
 重なる足音が二人分する。
 後ろから誰かがついてきている。

 立ち止まるとそいつも止まった。
 ついてきたのは……言うまでもなくニコラスだった。

「はあ……なんでついてくるんだ?」
「かっけえよお前さん、今のやりとりかっけえよ」
「いやそんな事ない」
「あの女お前に惚れたぜ。今追えばヤれるぞ」
「別にそのために言ったんじゃなくてーー」
「俺も惚れ直した、濡れた!」
「そのためじゃもっとないよ!!」

 背中がぞわわってなった。

「なあなあ、これから俺んちで飲み直さねえか。喧嘩はダメでも飲むくらいはいいだろ」
「身の危険感じるからやだ」
「いいじゃねえか。大丈夫、おりゃあ戦う前に襲ったりしねえから。ヤるのは戦いで十分に体をほぐしてからじゃねえと気持ちよくならねえ」
「アピールするなよ! 知りたくないからそんなの!」
「つーことで、飲みなおすぞ」

 ニコラスは乱暴に肩を組んできた。
 わりと普通に、男同士のスキンシップの域だ。

 ニコラスに引っ張られていった。
 変態で警戒しなきゃならない相手だけど、裏表がないから、嫌いになれないタイプだな。

 そんなニコラスに引っ張られて、古びた街の区画にやってきた。
 さっきまでいた繁華街の真新しく立派な建物とちがって、古びたボロボロな区域だった。

「こんなところを通らないといけないのか?」
「いや、おりゃここにすんでんだ」
「ここに?」
「って言ってる間につーいた。ここだ」

 ニコラスに連れてこられたのは古い建物だった。
 それなりに手入れされてるそうだが、それでも年季が入ってるのは一目で分かる。
 下手したら50ーーいや100年ものの建物だ。

「ここにすんでるのか?」
「ああ」
「……なんで? こんな古いところじゃなくて、お前なら屋敷とかそういうのにすめるだろ?」

 ☆7の男、子分を持つ(多分)ファミリーの長。
 出会ってからまだ間もないけど、今まで見てきたかぎりマフィア的な意味でのファミリーのボスだから、普通にいいところにすめそうだ。

 それがこんな……築100年はあろうかというボロ家に住んでるってのは意外だった。

「お前さんわかってねえな。この家、サメチレンでいちばん古い家なんだぜ?」
「いちばん?」
「おうさ。この街が出来た時にたてた家の一軒。同じなのがもうねえ、ここが一番古いんだよ」
「一番古い……そういえばさっきも『古い酒』を注文してたな」
「おうよ。お前さん……この世で一番の贅沢がなんなのか知ってるかい。時間だよ」
「時間」

 平坦な発音、おうむ返しでつぶやく。

「いいものとやらはいくらでも作れる。一番いいものだってそうだ。人間がその気になりゃ次から次へと作れんだろ?」
「なるほど。でも古いものだけはむり、と」
「ああ。古いものは時間をかけるしかねえ。人間の力じゃどうしようもねえ。だから一番の贅沢なんだよ」
「なるほど」

 古い酒、古い家。
 なんでそれにこだわってるのか疑問に思ったが、言われてみれば理にかなった話だった。

「結構金のかかるこだわりなんだな」
「金なら腐る程もってる。おりゃあこの街でなんでも屋やってんだ。なんでもやって、それで金がはいってくる」
「冒険者じゃないのか?」

 さっき肩を組まれた時に分かった。
 ニコラスはーー強い。
 今まであってきた人間の中でも最強の域、あのネプチューンに勝るとも劣らないレベルだろう。

 この世界での強者は例外なく冒険者になってるという認識があるから、俺は彼も冒険者なんだとおもってたのだ。

「そりゃお前さん、おりゃFファイナルだからよ」
「そうだったのか」

 それは意外だ。
 強さとは関係のない、ステータスの2ページ目。
 ドロップステータス、それが全部最低ランクのFの人間をFファイナルと呼ぶ。
 ダンジョンに入ってもほとんど何もドロップさせられない人間をそう呼ぶ。一種の蔑称だ。

「そうだったか」
「そんな事よりも中入って飲み直そうぜ」
「ぼ、ボス……」
「はあ?」

 俺の手を引いて家の中に連れ込もうとしたニコラスだったが、物陰から飛び止められて不機嫌な顔をした。
 目を片方だけ器用にみはって、口角をゆがめる。

 物陰から一人の男があらわれた。
 初めて見る男、だけど雰囲気は分かる。
 さっき懲らしめた男たちと同様の空気、ニコラスの子分なのは間違いないだろう。

 そいつはおそるおそるとニコラスの前にやってきた。

「なんだ」
「実は……」

 俺をチラ見してから、ニコラスにそっと耳打ちした。
 最初は邪魔された事で不機嫌な顔をするニコラスだが、徐々に驚きの顔になっていき、しまいにはにやり、と口角をゆがめる笑いを浮かべる様になった。

「ーーって、事らしいっす」
「わかった。受けるってかえしてこい」
「いいんすかボス、報酬とかきかねえで」
「ああん!?」
「すいませんわかりました返事してきます!」

 睨まれた男は背筋を伸ばして敬礼して、逃げる様にこの場から立ち去った。
 なんだ? どうしたんだ一体ーー。

「ーーっ!」

 とっさに上半身をのけぞった。鋭く、凍える様な何かが鼻先をかすめていった。
 地面を蹴って飛び下がる。着地して状況を把握する。

 いつの間にか短刀を抜いていたニコラスが、それを真横に振り抜いていた。
 短刀の刃は赤紫のオーラを発している、どう見てもヤバイタイプの武器だ。
 鼻先をかすめたのはそれだったのだ。

「何をする!」
「今仕事を受けたのよ」
「仕事?」
「ああ、俺といつも仕事をしてる得意先がな、ある男を消してくれって依頼してきたのよ」

 ある男……言うまでもなく俺の事だ。

「殺しもよくやるから、まあ、通常業務ってやつだ」
「そんな通常業務があるか!」

 突っ込むが、ニコラスは短刀の刃を舌でなめ回して、恍惚の表情を浮かべた。
 やばい、目がいっちゃってる。

「これでお前さんと戦えるぜぇ……何せこっちはいつも通り、ツウジョウギョウムなんだからよっ!」
「くっ!」

 ニコラスの姿が揺らいだーーと思ったら目の前に現われた。
 ものすごい踏み込み、速さは間違いなくAはある程の超スピード。

 短刀一閃、横一文字に薙ぐ斬撃をしゃがんで躱す。

 ごごごごご……どーん!

 背後から轟音がした、なんとさっき誘われた、この街最古の建物が真っ二つに斬られて、斬られた場所がずれて(、、、)しまった。

 パワーもかなりのものだ、いや武器の力か?
 どっちにしてもーー強敵だ。

「あぁ……いいよ、いいよいいよいいよいいよ! お前さんみてえなもんとこんな戦いがしたかったんだ、よ!」

 目がいっちゃってるまま突っ込んでくるニコラス。
 冷静に見て、斬撃を避けて腹に潜り込んでカウンターのパンチを放つ。

 腹に深く突き刺さったパンチ、飛び込んできたニコラスをはじき返す。
 その勢いはまるでスーパーボール。それくらいの弾きっぷりだ。

 人気の無い、古い建物をいくつかなぎ倒してようやく止まるニコラス。
 全力の一撃、完璧に入った。
 これなら立ち上がれないはずだーー。

「いってぇ、いてえよ。へへ」

 ニコラスは立ち上がった、悶え苦しみながら立ち上がったが、口元は笑っていた。
 ニコラスは突進を続けた。
 ものすごく速かった。持ってる短刀もまがまがしくて、斬られたら物理的な意味以外でやばそうな感じだったが、冷静に対処してカウンターを合わせていった。

 五発目を叩き込んで、五回吹っ飛ばす。

「さ、さすがにもう立ち上がれないだろーー」
「ひぃぃぃっっひゃっほーい!」
「嘘だろ!?」

 ニコラスは突っ込んで、なぎ倒した家のがれきの中から飛び上がった。
 まるで勝利したような、歓呼をあげながら。

 俺は身構えた、次の攻撃に備えて身構えた。
 が、来なかった。

 飛び上がったニコラスは着地すると動かなくなった。

「……」

 おそるおそると、身構えて警戒したまま近づいて様子をみる。
 ニコラスはがれきの上で大の字になって気絶していた。

 仕立てのいい服は自分がはいた血反吐で血だらけになって、俺のカウンターを受けたボディのあたりはボロボロだ。
 限界を超えたダメージで倒されて気絶ーーしているはずのニコラス。
 その顔は満足そうに笑っていた。

「ふう……これもう大丈夫か。しかし……」

 俺は周りを見る。
 おそらくはニコラスが買い占めたから人気がまったくない、古いたてものが立ち並ぶこの一角。
 俺の攻撃よりも、ニコラスの斬撃のにより破壊されて、もはや廃墟同然になっていた。

「勝つには勝ったけど、一発でも当たっていたら……」

 そう思った俺は、ぞっとしたのだった。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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