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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第三章

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175/197

175.ポケットマネー

 買い取り屋『おしどり合戦』の中、俺は買い取りの査定を待っていた。
 何となく店の中を見回した。

 買い取り屋は様々な冒険者がいたが、全員が金属の塊を持ち込んでいた。
 様々な色合いや光沢、そして大きさも様々。

 それを魔法カートから取り出してさてしてもらう。
 シクロと似てるようで微妙に違ってて新鮮な光景だ。

「や、やめてくれ!」
「うん?」

 いきなり悲鳴の様な男の声が聞こえて、そっちの方を向いた。
 持ち込んだばかりの鉱石を買い取ってもらった冒険者の男はガラのわるそうな男三人に取り囲まれている。
 二人が両横を囲んで、一人がまん中に立って、冒険者の手から金を取り上げていた。

 どういう事だ? と見ていると

「ひいふうみい……頑張ったじゃねえか、これでめでたく完済だ」

 どうやら借金取りのようだ。
 借金取りはまとまった一万ピロ抜いて、残った小銭を男に返した。
 そして口角をゆがめて、皮肉っぽい感じでいった。

「完済どうも、またのご利用をお待ちしております」
「「おりまーす」」
「ま、待ってくれ。それを全部持ってかれたら――」
「今夜の酒が飲めねえ、っていうんだろ?」
「うっ……」

 冒険者は言葉に詰まった。
 どうやら酒で身を持ち崩した男と、その男から借金を取り立てる連中みたいだ。

 冒険者は必死に食い下がるが、男達はにやにやするだけで聞き入れない。
 それところか次の借金をすすめる程だ。

「貸してくれ! 一万……二万、いや三万!」
「じゃあここにサインしな」

 よほど酒が飲みたいのか、冒険者は完済したばかりなのにまた借金をした。
 なんかこういう人間をマンガで見た事あるなあ、と思いつつ遠目で眺めていた。

「お待たせしました」

 すると、こっちの買い取りの担当者が戻ってきた。

「ああ」
「今はかりましたところ、全部で1198ジンとなりました」

 鉄塊を取り出したときの事を思い出す。
 ジンはキロと大体同じだって思っていいだろう。

「今日の相場は1ジン19ピロですので、全部で22,762ピロになります」
「そんなにやすいのか」
「鉄はやすいんですよ」
「そういうもんか」
「はい。鉄って事はクロムですよね。もうちょっと深く潜って銅やアルミ取ってきた方が割りがいいかもしれません。人それぞれですが」
「それだといくらになるんだ?」
「銅は今日の相場で800ピロくらいですね」

 比較のためか、かなり大雑把な数字を言われた。
 大雑把だが、差ははっきりとわかった。

 しかし……鉄って安いんだな……。
 金は確か4000くらいあったな。
 それと比べるとかなりもうけが少ないな。

 ま、いっか。
 これはこれでいいかもしれない、と俺は受け取った今日飲もうけど、22000ピロを見て思うのだった。

     ☆

 買い取り所を出て、すっかり暗くなったサメチレンの街を適当に歩いて回った。
 ポケットの中には今日の稼ぎ22000ピロ。
 普段より大分少ないけど、夕飯と宿屋位は問題ない程度の金額だ。

 そういえば、今は稼ぎを通帳にいれて数字を見て把握してるけど、グランドイーターのポケットに現金を入れててもいいかもしれない。

 確か一億円の重量が10キロくらいだったな。
 モンスターからドロップされるこの世界の紙幣は、大きさも価値も日本円と大体同じくらいだ。

 鉄塊1トンを余裕でいれた俺のポケットだ、全財産を現金にしても余裕で入る。

 全財産をポケットに。

「子どもの頃を思い出すな」

 金じゃないメタルゲームのメダルをポケットに入れてパンパンにしたり、500円玉で買い物したらおつりでもらった硬貨の()が増えてお金持ちになった! とか思ったり。
 そういえばマジックのアイテムでコインを自由に出し入れできるヤツがあって、それを使えば延々とコインを出せて大金持ちになれる! なんて思ったこともあったな。

「……俺、子どもの頃から結構銭ゲバだった?」

 なんとなくそんな事を思ってしまうくらいには、金に関する想い出が次々と出てきた。

 ふと、金を下ろせる店を見つけた。
 中に入って通帳と魔力による生体認証で1千万をまとめて下ろした。
 1千万ピロ、鉄の延べ棒一つと同じ1キロくらいの重要。
 それをポケットにいる、やっぱり重量を感じなかった。

 19ピロの鉄塊と1000万ピロの札束。
 どっちも同じ重量で、すんなりポケットに入るのが面白かった。

 街中を歩いてると、繁盛してる酒場を通りかかった。
 活気があっていい感じだ、ざっとメニューにかかれた値段をみる。リーズナブルな居酒屋くらいの金額設定で、今日の稼ぎ22000ピロでもお腹いっぱい食べて飲める程度の店だ。

 こういう店の方がむしろ落ち着く、なんて思いながら店の中にはいった。

「いらっしゃいませ、お一人様ですか?」
「ああ」
「それじゃこちらへどうぞ」

 店の女店員に席まで案内してもらった。

「ご注文どうしますか?」
「人気な肉料理をいくつか、それとあうお酒を。料理多めお酒少なめな感じで」
「わかりました」

 注文をとって去っていった女店員を見送ってから、店の中を見回す。
 雰囲気での判断だが、ほぼほぼ全員が冒険者だ。

 この世界に来てそれなりに時間が経って、冒険者かどうか一目で分かるようになった。
 あまり意味のないスキルだけど。
 サメチレンの情報を聞けるかな? と思いながら周りの会話に耳を傾ける。

「あしたアイザックが戻ってくるから話を聞きにいくんだけど、お前もどう?」
「アイザックってあのアウルムにいったやつか?」
「ああ、金って稼げるらしいからな。いい感じなら俺も行こうと思う」
「俺はパス、アルミがでる階層でなじんでる。ムリしてまでうつりたくない」

 なじみのある名詞と、なじみのある論調が聞こえてきてちょっとクスッときた。
 この世界の冒険者はやはり大半が安定重視だな。

「やめてください!」

 ふと、賑わってる店の中が一瞬静まりかえった。
 全員が同時に悲鳴の方に目を向けた。

「あれは……さっきの借金取り」

 それに俺を席に案内した女店員だった。
 借金取りの三人組はさっきとまったく同じフォーメーションで女を取り囲んでいる。

「なあ姉ちゃんよ、いい加減金を返してくれないかな」
「お金は必ずお返しします、だからもう少し――」
「もう少しぃ? ふざけるな!」

 まん中の男が怒鳴ると、両横の男達は息の合った動きで同時にテーブルを蹴っ飛ばして威嚇行動をした。
 女店員がビクッと身をすくませる。

「ごめんなさい! もう少し……もう少しだけ待ってください!」
「だったら利息だけでも払えよ」
「明日なんです、明日給料をもらえるんです。明日まで待ってください」

 女は必死に待ってくれと食い下がり、男達は今払えと迫る。
 よくある光景なのか、それとも関わり合いになりたくないのか。
 店の客の半分近くはもう我関せずって感じで視線をそらしていた。

「こうしようか姉ちゃん。姉ちゃんが今日一晩相手してくれたら待ってやる。どうだ」

 そういって、男達が一斉ににやにやし出した。
 下卑たいやらしい笑いだ。

「……」

 女はうつむき、ぎゅっとスカートを握り締める。
 下唇を強くかみしめる、今にも血が出そうだ。

 ……。

「やめろ」

 立ち上がり、四人の方に向かって行った。

「なんだあ? てめえは?」
「彼女の借金はいくらだ」
「ああん?」
「彼女の借金はいくらだって聞いてる」
「そんな事を聞いてなにするつもりだ? んん?」
「兄貴こいつさっきの買い取り屋で見かけましたよ」
「鉄の買い取りをしてもらってた」
「はあーん?」

 弟分の二人からそう言われて、男は見下しきった様な目を俺に向けて来た。

「ヒーロー気取りか」
「いいから金額をいえ」
「一千万ピロだ、鉄くずをせこせこ集めてザコには到底無理な――」

 ポケットから一千万の札束を取り出して、男に突きつけた。

「なっ……」
「これを持って消えろ」
「なんだと?」
「あ、兄貴、これ本物だぜ」
「鉄の買い取りをしてたヤツが……?」

 借金取りが全員驚き、戸惑っていた。
 俺は更に金を突きつける、と。
 男が顔を真っ赤にして逆上した。

「気取ってんじゃねえぞ!」

 と、殴りかかってきた。
 人間を殴り慣れてるのか、躊躇のないパンチだが、モンスターに比べると弱々しいにも程がある。

 軽く避けつつカウンターを顔面に叩き込む。

「兄貴!」
「てんめえ……」

 残った二人もかかってきた。
 兄貴とやらとどっこいどっこいで、二人も攻撃を避けつつ一撃で倒した。

 倒れて地面に這いつくばる三人、兄貴の男に札束を放り投げて。

「それを持って消えろ」
「く、くそ。おぼえてろ!」

 三人は金をもって、捨て台詞を残して逃げた。

「あ、あの……すみません……」

 振り向くと、女が申し訳なさそうな顔をしていた。

「大丈夫だったか」
「はい……助けていただいてありがとうございます。お金はなんとしても返しますから」
「ああ。それよりも俺の料理を頼むよ」
「えっ……あっはい!」

 女店員は慌てて厨房に駆け込んでいく。
 それを見て、周りの興味津々な視線を適当に受け流して、元の席に戻ってきた。

「やるじゃねえか、あんちゃんよ」

 そこに別の男が座っていた。

「そこ俺のせきなんだけど」
「いいじゃん、相席頼むよあんちゃん。おーい姉ちゃん。こっちに食器もう一人分。それとこの店でいちばん強い酒をたのむ!」

 男はマイペースに、強引に話を進めた。
 中年の男で、仕立てのいい服をラフに着こなしている。
 ヤバゲな空気を纏っている、冒険者よりも「力」の行使になれている雰囲気がする。

 関わりあいたくない。席を替えてもらおうかな、なんて思ってると。

「おりゃあニコラス・ライクフィールドってもんだ」
「はあ……」
「俺がおごるから一緒に飲もうぜ」
「いや俺は……」
「リョータ・サトウさん、よ」
「――!」

 何故か俺の名前を知っている男、どうしようかと俺は迷ったのだった。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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