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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第三章

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107.まだアルバイト

「い、インドールって?」
「最近ダンジョンが生まれた街だ、ドロップは砂金……鉱石ドロップだからあんたにぴったりだ」
「え?」
「え?」

 驚くクリフ。なんだ? この驚き方は。

「ダンジョンって……生まれるのか?」
「……なに?」
「そ、そんな話聞いたことなかったから」
「……最近でもシクロでニホニウムが生まれたぞ? それにやっぱりシクロになるセレンが」
「そ、そうだったのか」

 クリフは驚き半分、戸惑い半分って顔をした。
 そんな事も知らなかったのか。

 ダンジョンが生まれるという常識も、ニホニウムやセレンが生まれたという情報も。
 どっちも知らされず、あの男に一方的に搾取され続けてきた。

 腹がたった、メチャクチャ腹がたった。

「はっきり言う、あんたはインドールの方が合ってる」
「だ、だけど……」
「ええい」

 説得するのに時間がかかりそうだったから、さっと銃を抜いて問答無用に回復弾の誘導――睡眠弾をクリフに打ち込んだ。
 特殊弾に撃たれたクリフは白目を剥き、一瞬で夢の世界に誘われたのだった。

     ☆。

 クリフが眠っている間にかれをインドールにつれて来た。
 ほんの数日離れただけのインドールは活気に満ち満ちていて、人や物が増えたり、あっちこっちで改増築や新建築が始まっている。

 村人の顔色も明るく、アウルムの砂金がもたらした恩恵なのがはっきりとわかる。

「こ、ここは……」
「さっき言ったインドールってダンジョンだ。百聞は一見にしかず、早速ダンジョンに潜ってみるぞ」
「え? でも」
「いいから行くぞ」

 及び腰のクリフを引っ張ってアウルムダンジョンに向かって行く。

「あっ、恩人様だ」
「来てくれるのなら前もっていってくださいよ」
「お前先に帰って母ちゃんに知らせろ、恩人様がまた来てくれたから宴の用意しろってな」

 ダンジョンに向かってくだけで次々と村人が集まってきて、親しくおれに話しかけてきた。

 今回は別の用事で宴会は無理だっていうと、村人たちは残念そうな顔をした。
 それをみたクリフがポカーンと口を開け放った。

「…………」
「どうした」
「いや、リョータってもしかしてスゴイ人なのか?」
「ただの冒険者だ、この村だと一応雇われ協会長もやってるってだけだ」
「協会長?」

 それもしらないのかよ。
 ますますあの男が腹立たしくなってきた。

 そうこうしているうちにアウルムにやってきた。
 ダンジョンの外に冒険者や村人が集まっていた。
 そこにアランを見つけて、近づいて話しかける。

「アラン」
「恩人様」
「これはなんだ?」
「これですか? 次のダンジョンいりまでみんな待ってるんです。まとまった時間に入って、それ以外の時間はダンジョンの構造を変化させないようにする仕組みです」
「なるほど」

 アウルムはローグダンジョン、人間が入るたびに構造が変わる。
 こんな風にして途中で変わらないようにするって事か。

 ということは時間があるのか。
 クリフの事はダンジョンに入るまでひとまず置いておいて、アランと話す事にした。

「村の調子どうだ?」
「恩人様のおかげで絶好調ですよ。昔からの連中はほとんど家を増改築したり、若い連中で先延ばしにしてた結婚もほとんど決まってる。それもこれも恩人様のおかげだ」
「上手くいってるのならいい」
「そうだ恩人様、おれの息子レベルアップしたんだけど植物のドロップの方が高くなったんだが、どうしたらいいかな。あいつがダンジョンの楽しさに目覚めてきた矢先で、どうしたらいいのかわからないんだ」
「だったらシクロに来るといい。ある程度なら面倒みてやれる」
「そんな! 恩人様に迷惑をかけるわけには」
「気にするな、力を発揮出来るところにいた方がいい」
「ありがとう恩人様。あいつに聞いてみる」

 アランの後も村人が次々と話しかけてきた。
 表情や口調などから、この村がいかに活気と希望に満ち満ちているのが分かる。

 一通り話を終わった後に、クリフの元に戻ってきた。
 クリフは何故かまたぽかーんとしていた。

「どうした」
「なんで……あんなに仲がいいんだ?」
「は?」
「冒険者はライバル同士、いつでも虎視眈々とこっちの獲物をかすめとる事をしか考えてない。仲間以外には心を開くな、近づいてくるやつらには警戒をしろ」
「……隊長とやらが言った言葉か」

 クリフは静かにうなずいた。
 まったく、そんな事を吹き込んでたのか。
 洗脳するには他との交流を遮断した方がいいらしいとはきいたけど、それにしてもひどい。

 奴隷か子機か、そんな風にしてきたって事だ。
 ますます腹がたつ。

     ☆

 アウルムダンジョン、地下一階。
 ダンジョン入りの時間になって、おれはクリフと一緒にラストでダンジョンに入った。

「うわ! 景色が変わった」
「ローグダンジョンってヤツだ、ダンジョンの構造は人が入るたびに変わる」
「そ、そうか」
「それよりもほらモンスターが来たぞ、倒してみろ」
「わ、わかった」
「気をつけろよ、そいつはだまし討ちが得意だ。何をされても騙される倒すまで気を抜くな」

 クリフは更に頷いて、小悪魔に向かって一歩踏み出した。
 戦闘開始だ。

 さすがレベル66でカンストしているだけあって、クリフは戦い慣れていた。
 小悪魔相手に終始ペースを握ったまま戦闘が進み、後はトドメってところまで来た。

「リョータ」
「なんだ?」
「え? えとその……」
「……」

 何でトドメを刺す前におれを呼んだんだ? って首をかしげたけど、数秒して思い出した。
 クリフがあの男といた時は常にそうだ。
 クリフともう一人の女の仲間が力を合わせてモンスターを弱らせて、隊長って呼ぶ初老の男がトドメを刺す。

 そのクセがそのまま出たんだ。

「おれじゃない、あんたが倒せ」
「おれ、が?」
「そうだトドメをさせ」
「……」

 クリフは目に見えて困りだした。
 それまで順調に戦闘を進め、圧倒さえしていたのが嘘かのように、小悪魔に反撃されだした。

「どうした」
「お、おれ、トドメを刺したことが」
「……くっ。いいからやってみろ」
「……できない! トドメまで手加減する事はできるけど」

 困り果てるクリフ。
 モンスターをギリギリまで削る手加減のやり方が体に染みこんでどうしても動けないらしい。

「……」

 少し考えて、おれは小悪魔に回復弾を撃った。
 弾が当たって、小悪魔が回復する。

 するとクリフが動けるようになった、回復して動きがよくなった小悪魔に更に攻撃をしかける。
 そしてまた、後一撃で倒せるギリギリまでけずって、手が止まった。

「くっ……どうしたらいいんだ」

 クリフも困っていた。
 やっぱりトドメはさせない、でもトドメまでは順調に攻撃出来る。
 …………なら!

 もう一度小悪魔に回復弾を撃ち込んだ。
 回復するモンスター、更に動けるようになるクリフ。

 確か、さっき回復したあと攻撃を三発いれて手加減になってたな。

 集中する、クリフの攻撃を数える。
 一発、二発――そして三発目。
 そこに割り込んだ、二発目と三発目の間にただの通常弾を撃った。

 こっちの弾がさきに当たって、小悪魔の体力が削れた。
 その事に気がついたが、とっさの事で手が止まらないクリフ。

 三発目――オーバーキルで小悪魔が倒された。

「たお……した」
「それよりもほら」

 自分の手を見つめて呆然とするクリフに、おれは落ちていた、ドロップした砂金を拾ってかれに渡した。

     ☆

 インドールの村、燕の恩返し分店。

 店の建築が終わり、新しい店舗になったそこにクリフをつれてやってきた。
 店員を呼び、買い取りをやらせる。
 あのあと、まるでリハビリのようにクリフをサポートして倒させて、砂金をドロップさせた。

 ドロップCだから効率はそんなによくなかったけど、それでもいくつか稼げた。
 それを、買い取らせる。

「お待たせしました」

 顔見知りの店員、イーナが査定を終えて戻ってきた。
 トレイの上に何枚かの紙幣とコインを載せて、クリフの前にさしだした。

「税金を引いて7320ピロになります」
「……7000ピロ、これ、おれが?」
「ああ、あんたがだ」
「……」

 様々な表情がクリフの顔に浮かんでは消えた。
 驚き、戸惑い、そして感動。

「おれが……一日だけでこんなに……」

 こんなに、っていうのがまた切なかった。
 7000ピロ、アルバイトの日当程度の額だ。
 それでもあの男の元で月三万の手取りをもらっていたクリフからすればとんでもないがくなんだろう。

 次第に、心が追いつく。
 クリフは感動と喜びを顔に乗せ、お金を受け取って。

「ありがとう、リョータのおかげだ」

 と、言ってきたのだった。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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