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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第三章

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106.転職のすすめ

 ニホニウムダンジョンを出た。今日も午前中は地下五階に潜り続けて、レッドスケルトン相手に狩り続けた。
 集中して命中率は100%を維持して、MPもBからAへと上がった。

 それを表のナウボードで確認してから、充実感を抱いて街に戻る。

 シクロの街は今日も賑やかだった。
 魔力嵐もなく、日殖月殖もない、ダンジョンマスターも現われてなくて、いつも通りに冒険者が稼ぎ、街が回って潤っている。

 足が自然と家に向かったが、ふと思い出して立ち止まる。
 今朝、出かける前にエミリーが言った。

「今日はハンマーのメンテナンスに行ってくるです」

 エミリー・ハンマー。武器屋のスミスが提供してる彼女にカスタマイズされたものだ。
 スポーツ選手と同じで、有名な冒険者にスポンサーとして提供して、その冒険者が活躍すればするほど同じものが売れる。いわば広告塔だ。
 そのエミリーは最近活躍している。レベルがカンストして、シクロのダンジョン――特に岩のモンスターしかないアルセニックでは大活躍だ。

 その活躍で、アルセニックに通う冒険者は7割近くエミリーモデルのハンマーを使い出したって聞く。

「まるでエア・ジョーダンだな」

 学生時代に流行ったバスケシューズの事を思い出す。
 ともかくエミリーは今日はメンテナンスで一日中忙しい、昼に家に帰ってもメシはない訳だ。

「仕方ない、外食するか」

 街を練り歩き、食事を出してる店を見繕う。
 するとラーメンっぽいのを出してる店があった。
 匂いからして豚骨か家系か、脂のうま味が素敵なラーメンだろう。

 ふとそのジャンクな味が懐かしくなって、おれは店に入ろうとした。

 ドン!

 店に入る直前、横からぶつけられた。

「すいません――あれ?」
「えぅ……あー……ごめんなさい……」

 ぶつかってきたのはいつぞや見かけた、初老の男についてる男女二人組の男の方だった。
 夢や感動って言葉を連呼して、宗教かブラック企業のように洗脳して働かせる手法。
 その犠牲になってる男だ。

 そいつは……前見た時より更にやつれていた。

「ごめんなさい、ちょっとぼーっとしてた」
「それはいいけど……あんた大丈夫か?」
「……」
「おい」
「……え? ごめん、きいてなかった」

 上の空、ぼうっとしている男。
 心ここにあらず……って訳じゃない。あきらかに消耗しきってヤバイ領域に突入している。

「じゃ……」
「待て待て」

 去っていく男を思わず引き留めた。
 このままじゃまずい、と、おれはかれにかつての自分を見た。

     ☆

 ラーメン屋の中、男はびっくりするくらいがっついた。
 大盛りのラーメンは既に三杯目、サイドメニューで頼んだ焼きめしもぺろっと平らげている。

「おかわりくださ――あっ、ごめんなさい、つい」
「いいよ、おごるって言ったのはこっちなんだから気にしないでたべて。すいませんおかわりください」

 このままじゃ遠慮するだろうと思い、おれの口から追加の注文をした。
 倒れそうになったかれをおごるからと店の中に引き込んだ。最初は遠慮したが、運ばれてきた料理の香りを前にいともあっさり陥落した。
 この食いっぷり……よほどだぞおい。

 ちなみにおれは食べられなかった。
 なんというか、調味料の味がきつすぎて舌にあわなかった。
 いや味自体はそんなに悪くないはずだ、店内はかなり繁盛しててまわりの客は全員美味しく食べれてる。
 多分……エミリーのご飯に舌が肥えたんだろうな、と何となく思った。

 そうして男が四杯目を平らげるのを見守った。

「ありがとう、ごちそう様」
「気にするな。えっと……ああ、おれは佐藤亮太、サトウでもリョータでもどっちでも」

 そういえば互いの名前も知らなかったな、と思いこっちから自己紹介した。

「おれはクリフ、ありがとうリョータ」
「もういいのか? 足りないんならまた注文するぞ」
「もう大丈夫だ、本当にありがとう」
「そうか……それよりもどうしたんだ? 食べてないのか?」

 理由は見当つくが……あえてすっとぼけてみた。

「ちょっと手持ちがなくて。三日ぐらいメシ抜きなんだ」
「三日? クリフもダンジョンに潜ってて結構稼いでるんだろ?」
「おれ達は……ああもう一人仲間がいるけど、隊長についてて、金は隊長が管理してるだ。おれ達は隊長から給料をもらってるんだ」
「じゃあその給料は?」
「足りなくて」
「足りない?どれくらいもらってるんだ」
「先月は確か三万ピロだったかな」
「ガキのお小遣いか!」
「えっ?」
「ああいや」

 思わず突っ込んでしまって、クリフが怪訝そうな顔をした。
 いやいや、その顔はおかしいだろ。

 この世界の通貨である「ピロ」はほぼ「円」と同価値だ。
 いまくってるこのラーメンだって、一杯700ピロで大盛りは100ピロ増って金額だ。

 そんな物価で、月の給料が3万って。

「そんなんで暮らしていけるのか――ああ、スマン」

 クリフが微妙な顔をしてるのを見て、こっちから謝った。
 暮らしていけないからこうなってるんじゃないか。

「仕方ないんだ、おれ達の稼ぎが悪かったってのもあるし」
「そんなに悪いのか?」
「それにおれたちしょっちゅうケガするし武器も防具もボロボロにしちゃうから、その分引かれるんだ、隊長から」
「むぅ……」

 消耗品とか装備品は引かれるのか。
 なんというか一見理屈が通ってるけどやっぱりおかしいよな。
 だって月三万だぜ手取。あり得ないだろ。

 クリフが微かにうつむいて、意気消沈とした。

「たまに思うんだけど、この仕事おれにあってないんじゃないかって」
「そうなのか?」
「もっとおれの力を発揮出来る場所があるんじゃないかって思うんだ、隊長に言わせればそれは甘えだけどね」
「そんな事ないだろ、そう思うのは甘えでも何でもない」
「でも事実なんだ」
「うん?」
「隊長に拾ってもらった時、おれのステータスがひどかったんだ。能力は低くて、ドロップは植物だけEで他がFだから」
「そ、そうか」

 出会った頃のエミリーみたいだな。
 それだったら……色々仕方ないのかも知れない。

「ドロップって伸びなかったのか?」
「え?」
「え?」

 驚くクリフ、おれも驚いた。
 なんだ? 今の「え?」は。

「それ……どういう事なんだ?」
「どういう事って、言葉通りだけど」
「ドロップが伸びることってあるのか?」
「いや、普通に……あるだろ。レベルが上がれば」
「……」

 愕然、というのはこう言うことを言うんだろうな、とおれは何となく思った。
 瞠目して、ぽかーんと口も開けて、瞬きさえも忘れて静止してしまう。

 前にダンジョンで見かけた時の事を思い出した、クリフが隊長って呼ぶあのうさんくさい、感動と夢を連呼する初老の男の事を思い出した。

「もしかして……ドロップは上がらないって言われたのか?」

 クリフはおずおずと頷いた。

「あがる……のか?」
「上がらない人もいる、でも絶対に上がらないって事はない」

 少なくともおれの仲間たちはレベルカンストするまでに多少なりは伸びてた。

 愕然とするクリフ。
 会計を済ませて、かれを連れて店を出た。
 賑わう街中を一緒にまわる。

「なんで自分でも確認しなかったんだ?」
「隊長にやめろって言われたから。能力を見たら自分で自分の限界を決めつけてしまう。ステータスだけが強さじゃない、人間はそれを越える事はできんだって」
「まったく、屁理屈を!」

 それは一理あるが、だからといって見ないでいいわけがない。
 多分、あの男は見させないことで、植物Eしかない劣等感まみれのクリフをうまく操縦してたんだ。
 つくつく腹がたつ。

 クリフを連れて街の道具屋に来た。
 ステータスをチェックする消耗アイテムを買ってわたした。洞窟じゃないからナウボードはなくて、こうして消耗アイテムを使うしかない。

「使ってみろ」
「あ、ああ」

 クリフは言われたとおり使って、ステータスを表示させた。

―――1/2―――
レベル:66/66
HP C
MP C
力  D
体力 D
知性 B
精神 B
速さ F
器用 C
運  F
―――――――――

「レベルカンストしてるじゃん! どんだけこき使われてたんだよ」
「これが……おれの……」
「しかも割と強い、魔法よりだけどこれ結構強いぞ」
「そ、そうなのか」

 戸惑うクリフ。それよりも。

「次ぎ行って次、それが本命だ」
「あ、ああ」

 ごくり、とつばを飲む音が聞こえた。
 そうして意を決してドロップステータスを表示させるクリフ。

―――2/2―――
植物 E
動物 F
鉱物 C
魔法 F
特質 F
―――――――――

「……え?」
「はっきり言おう」

 おれはクリフに対するあきれと、あの男に対する怒りの両方を覚えつつ、かれに言い放った。

「数値はうそはつかない、お前の実力が発揮されるのはここ(シクロ)じゃない、インドールみたいな場所だ」

 クリフは、更に唖然としていた。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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