蜂退治します!
それからの数日間、俺のルーティンは完全に固定化された。
一階層でスライムの初期配置をみて、そのまま二階層でゴブリンとデート(一方的な蹂躙)を繰り返す日々。
まだまだ転移石は出なかったが、魔剣の圧倒的な火力のおかげで、二階層での周回は信じられないほど安全かつ効率的になった。
だが、効率を突き詰める男として、どうしても割り切れない引っかかりがあった。
三階層のキラービー、通称『蜂』の存在だ。
あいつらが落とすという『合成石』は、今後のダンジョン攻略において絶対に確保しておきたい重要アイテムだ。
しかし、相手は空を飛ぶうえに、集団で襲いかかってくる。
いくら魔剣が強くても、囲まれて一斉に刺されたら病院送り。最悪の場合、ダンジョン内で人生終了だ。
「いのちだいじに……だけど、合成石は欲しい」
帰宅した俺は、パソコンを開いてネットの海に潜った。
掲示板のダンジョン攻略スレッドや、害虫駆除の専門サイトまで、ありとあらゆる情報を漁りまくる。
効率厨の基本は、戦う前の徹底的な情報収集だ。
そして、見つけた。
『検証:飛行系の虫型魔物に対する状態異常について』
『マジレスすると、蜂系の魔物はダンジョン産だろうがなんだろうが基本的に煙に弱い。燻煙すると呼吸器がやられて行動不能になるぞ』
「……これだ」
俺は即座に財布を握り締め、近くの大型ホームセンターへとチャリを走らせた。
資材コーナーに直行し、防塵・防毒用の本格的なガスマスクを購入。ついでに予備のフィルターも買い込む。
ネット掲示板の知恵と、現代日本のテクノロジーの融合。
勝てる。
✳︎
翌日。
俺はいつものようにダンジョンへ潜った。
まずは二階層でゴブリンを狩る。
いつもならゴミドロップとして置いていく折れた棍棒を、今回はしっかり拾い集めて鞄に詰め込んでいく。
五本、六本。
これだけあれば十分だろう。
ずっしりとした鞄を背負い、いよいよ三階層へ向かった。
三階層の入り口。
まだキラービーに気づかれていない場所で、俺は集めたゴブリンの棍棒を床に並べた。
キャンプファイヤーの要領で組み上げる。
「魔剣、着火!」
赤い刀身の切っ先から炎を出し、棍棒に火をつけた。
木が燃え始め、煙が立ち上る。
「よし、避難!」
俺は二階層へ引き返した。
煙が三階層の奥へと流れていく。
そのまま二階層で、四、五分ほど待った。
そろそろ頃合いかな?
ホームセンターで買ったガスマスクを顔に装着する。
プシュー。
密閉される音が心地いい。
魔剣を右手に、視界が少し狭くなったマスク越しに三階層へと足を踏み入れた。
通路の奥は、白く煙っていた。
そして、その先は――案の定だった。
あれだけ獰猛に飛び回っていたキラービーの集団が、煙から逃げるようにダンジョンの角へ、角へと追い込まれていた。
羽を力なくばたつかせ、床にボトボトと落ちて身を縮めている。
完全に無力化していた。
「はい。魔剣、撃ち放題です」
近づく必要すらない。
角に固まっている蜂の集団に向け、俺は安全圏から魔剣を大きく横に振った。
ゴウッ!!!
放たれた炎が煙の向こうへ走り、キラービーたちを一瞬で焼き尽くしていく。
ノーダメージ!
ネット掲示板の書き込みひとつで、あれほど警戒していた三階層を攻略できるとは。
情報収集って大事だな。
俺はガスマスクをつけたまま、焼き尽くした跡地へと歩み寄った。
転がっているアイテムを確認していく。
視界の端に、明らかに魔石とは違う輝きを放つ石が映り込んだ。
「……ん?」
拾い上げる。
まさか?
鈍く光る、不思議な石。
え。
これ、合成石だ…
「あわわわわ。引きがおかしい。ありえへん」
とんでもない幸運。
危ない。運のしわ寄せが怖い…
三階層の大当たりパターンを1発で射止めるなんて。
ゴブリンの棍棒が、まさかこんな形で役に立つとは。
二百円のゴミが、最高の攻略アイテムを連れてきた。
「……いや、ゴブリン様々だな!感謝します!」
俺は大事に鞄へしまった。
頭の中で、今後のルーティンは組み上がった!
スライムチラ見→蜂をチラ見→ゴブリンデート
大当たりならキャンプファイヤー!
きてる。この流れ!この流れで最効率!!
うーん。しかし、合成ってどうやるんだろね?
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
「面白い!」「続きが気になる!」と思ってくださったら、ページ下部にある【ブックマークに追加】や、☆☆☆☆☆を★★★★★にして応援していただけると、この作品の運命が変わります!(ほんとです)
※第1話など途中のエピソードでは、システム上この場所に評価の星(⭐)が出現しません。その場合は、お手数ですが下記の作品トップ(目次)の一番下から応援していただけると非常に嬉しいです!




