ゴブリンとデートします!
ダンジョンに入った俺は、火属性の魔剣を握り直した。
まずは一階層。いつものスライムで試運転だ。
ぷるぷると揺れるスライムが動いた瞬間、隙を狙って魔剣を振り下ろす。
ゴウッ!
「えっ?」
炎が弾け、スライムは一瞬で消し飛んだ。
「…………は?」
念のため、もう一匹。
ゴウッ!
また一撃だった。
「ちょ、ちょっと待て。強すぎないか?」
昨日、鍋の水を温めたときはあんなに時間がかかったのに。
なんで実戦だとこんなに強いんだよ。
やばいだろ。魔剣。
まあ…強い分には困らない。
これならゴブリン相手でも戦えそうだ。
……いや、キラービーはどうだろう?
気になって二階層を素通りし、三階層まで行ってみた。何匹ものキラービーが飛び回っていた。
飛んでいる。しかも集団。
「……うん。見なかったことにしよう」
俺はなかったことにして、そっと引き返した。
今はゴブリンだ。
二階層へ移動すると、少し離れた場所に一匹のゴブリンがいた。
手には粗末な棍棒。
俺の手には火属性の魔剣。
装備だけなら圧勝だが、初めて戦う相手はやっぱり怖い。
「……できれば、遠くから」
ゴブリンの動きを見て、隙ができた瞬間に剣を振り抜いた。
刃から噴き出した火炎が、離れた場所のゴブリンへ飛んでいく。
ドンッ!パン!
ゴブリン、消滅。
「…………」
「いや、強すぎるだろ!」
近づく必要すらなかった。
これ、もしかして大当たりの買い物だったんじゃないか?
俺はゴブリンがいた場所へ向かい、ドロップ品を拾い上げた。
小さな牙。ゴブリンの牙はだいたい買取価格三百円だ。
「これはゴミドロップだな。サイズが小さいから、とりあえずは回収するか…」
牙を鞄にしまい、次の獲物を探す。
しばらくゴブリンを倒していると、今度は折れた棍棒が落ちていた。買い取り価格は二百円。
「こっちもゴミか……ん?」
俺は棍棒を手に、ふと思いついた。
「……これ、燃えるよな?」
棍棒を地面に置き、少し離れたところから魔剣を振る。
ゴウッ!
炎が走り、棍棒に火がついた。
「おお、やっぱりいけるじゃん!」
俺は鞄からカップラーメンを取り出した。
昨日は鍋の水を温めるのに苦労した。
だが今日は違う。
ゴブリンの棍棒が燃料だ。
湯を沸かし、カップに注ぐ。
あとは三分待つだけ。
「ダンジョン飯、完成!」
麺をすすった。
うまい。
いつもよりうまい気がする。
やはり、自分で狩った獲物から得た燃料で食べる飯は格別だ。
……燃やしたのは棍棒だけど。
「ゴブリン、便利だなあ」
アイテムも落とすし、燃料にもなる。
腹も満たされたところで、狩りを再開する。
次のゴブリンを倒すと、小さな黒い石が落ちた。
ゴブリンの魔石。買い取り価格は三千二百円。
「おっ、これは小当たり!」
棍棒とは違い、三千円を超えるなら大変拾う価値がある。
俺は魔石を鞄にしまった。
棍棒は燃料。牙、小当たりは回収。
うん。判断基準はばっちりだ。
あとは狩りを続けるだけ。
俺はスライムをゆうに千匹は倒してきた。
レアドロップ狙いが簡単じゃないことは、身に染みている。
それでも、欲しいものがあるなら狩るしかない。
魔剣を振る。
ゴブリンが消し飛ぶ。
牙。棍棒。魔石。
たまに魔石が出れば、ちょっと嬉しい。
肝心の転移石はまだ出ない。
まあ、いい。
ゴブリンは燃えるし、金にもなる。
最高のデート相手です。
「次、いらっしゃーい!」
俺は魔剣を構えた。
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