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とりあえずぶち当たってみました!


ここまでは裏技的に踏破してきた俺だったが、ここ第五階層では正木さんが言っていた冒険者の壁に大きく足止めを食っていた。


俺が新しくチャレンジしている浮島ダンジョン。


五階層の敵は、オーガ、ミノタウロス。


オーガ

人型の大型モンスター。圧倒的な筋力と頑丈な肉体を持ち、棍棒などの重量武器で周囲を薙ぎ払う。


ミノタウロス

牛の頭部を持つ巨体の人型モンスター。巨大な斧を扱い、直線的な突進攻撃を得意とする。高い耐久力も備える。


ギルドでお願いした通り、ダンジョン内の環境は非常に恵まれていた。


通路型のオーソドックスな環境は、これまでに慣れた四階層と大きく変わらず。


モンスターも動きが鈍重で、攻撃が当てやすく、ソロである俺には最高の環境だった。


装備の火力を活かすことで、一対一の状況では完封できるほどだった。


ただし、戦闘が長引いてしまった場合には周囲のモンスターを呼び寄せてしまう。


数的不利による離脱を繰り返していた。


転移の腕輪の効果は絶大だった。


周回効率こそ考えて作成したが、『どんな状況でも瞬時に安全圏に離脱できる』ということが、これほど冒険を楽にさせてくれるとは思っていなかった。


どっかのクランの団長がいう通り、紛れもない神アイテムだ。


俺はそんな五階層ソロ踏破という無理ゲーを、転移の腕輪による安全マージンの確保と、試行回数を武器に一歩一歩検証し、クリスタルまでの踏破ルートを築いていった。


まるで、最高峰の山々に挑戦する登山家のようだ。


ルートを選択し、少しずつ進める。


彼らにあるのは経験、体力、知識、直感、そして勇気。


俺が持っているのはこの装備と『観測記録』

記録、分析、繰り返しだ。



ダンジョン攻略というものを実感できるこのプロセスは、自分でも意外だったがこの上ない快感だった。


魔力適応は、身体だけではなく精神にも影響を与えているのかもしれない。 


五階層に潜り続けた俺の身体能力は、その魔力適応の影響で以前に比べ大幅に向上していた。


自分の変化に気づき、その変化に酔う。


冒険者たちがダンジョンに吸い寄せられる理由なのかもしれない…


攻略から12日、俺は浮島ダンジョン五階層、最大の難所にさしかかっていた。


六階層転移クリスタル前の巨大なドーム型の広間。


様々なルートの合流終着点、通称「大広間」を攻略していた。



           ✳︎




浮島ダンジョン五階層  『大広間』



ここのモンスターの数は七体から九体程度。


ここまでのルートの撃破は平均五体。ここまでは安定して周回できる。問題はこの先…


今回確認できたのは七体。わかっている限りで最も少ないパターンだ。


それでも…きつい。多すぎる。


数だけじゃなく、密集度が一番の問題だ。


一体を相手にしている間に、残りのモンスターが集まってくる。


そうなれば、離脱しかない。


「どうにか一体ずつ引き離せないか……?」


俺は広間に至る通路に身を隠し、手頃な石を拾って広間の奥へ向かって投げてみた。


ガッ!カッカッと石の乾いた音に手前にいたオーガが反応する。


オーガは棍棒を握る手に力を込め、警戒しながら音のした方へ歩き出す。


いけるかもしれない…


俺が期待しながら様子を窺っていたが、近くにいたミノタウロスも動き始めてしまった。

さらに、別のオーガまでも音のした方を警戒するよう注視している。


音では厳しいか?


じゃあ、実際に攻撃を仕掛けてみるか?


俺は通路に近い手前のオーガに狙いを定め、魔剣を勢いよく振り抜いた。


爆音とともに刃が巨体を捉える。


オーガの身体が大きくよろめいた。


これまで何度も戦ってきた相手だ。魔剣の威力なら、二、三撃も加えれば倒せる。


もう一撃!


続けざまに放った刃にオーガは倒れ、光の泡となって消えていく。


だが…


続く衝撃の爆音に、モンスターたちは一斉に突進してきた。


「いやっ、全員来るのかよ!」


これでは無理だ。一体ずつ相手にするなんて到底無理。


俺はすぐにその場を離れた。


広間から通路へと、我先に溢れ出してくるモンスター達を尻目に通路を走った。


死に物狂いで、走る!走る!走る!


それでも、背後から響く足音は次第に大きくなっていく。


ドドドッドッドンッ!ドンッ!


地面を踏みしめる振動が身体に響く!


くそ!無理だ!逃げ切れない!


視界の隅に捉えていたミノタウロスの突進は横に飛んでかわす!


直後、別のオーガの棍棒が、さっきまでいた場所を叩き潰した。


地面が大きく揺れる。


一体の攻撃を避けても、次の一体が迫ってくる。


ここまでか。


くそっ!離脱ー。


俺は転移の腕輪を起動した。



65回目の敗北だった…



「あーくそっ!もうあと少しなのに!クリスタルまで届かない!」



クリスタルまで回避をしながらたどり着いたとしても、起動するにはどうしてもその場で足を止めなければならない。


最後の数秒間、確実に無防備になる。


15秒…


15秒稼げれば、俺は六階層に行ける。


俺はそう結論づけた。


もう一人誰かいれば…話は全く違っただろう。


一人がモンスターを引きつけている間に、もう一人がクリスタルを起動する。


二人とも転移の腕輪を持っていれば、危険になった時点でそれぞれ離脱することもできる。


「……やっぱり、ソロではきついのか?」


正攻法しかないのだろうか?


一体ならば五階層でも倒すことはできている。


もう、次のクリスタルは目の前に見えているのに果てしなく遠く感じた。



ソロでの五階層踏破という意味で、おそらく浮島ダンジョンより有利な環境は滅多にない。


そういう意味で、これは俺が冒険者を続けていく上での正念場だった。


ここを超えれば、先がある。


無理なら、俺はここまでだ。


きっと、一生、この先へは進めない…


俺は大広間にいるモンスターたちのログを見つめ、次の攻略方法を考え始めた。


楽して戦いたい君島敗北!

どうなる君島!

次回は11/5(木) 17:30に公開予定です。


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