歴史に触れてみました!
ママチャリをギルドに横付けし、俺は颯爽と受付へと向かった。
受付は、編み込みのかわいいお姉さんだ!
今日は良き日!
「こんにちはー。ダンジョン情報の購入はこちらでいいですか?」
『はい。どのようなご用件でしょうか?』
今日も笑顔が素敵です!
「扇橋ダンジョンの情報を購入お願いします。全階層分があればと」
『扇橋ダンジョンですね。少々お待ちください』
お姉さんはテキパキと手元の資料を確認すると、テーブルに資料を出してくれた。
『情報購入は初めてでございますか?』
「あ、はい…」
『では、システムの方からご説明しますね。モンスター情報は階層によって料金が異なります。第四階層以降は個別の調査情報となりますので、こちらの表を参考にご希望の情報をお選びください』
にこやかに微笑んで提示した料金表には、なかなかパンチのある数字が並んでいた。
第四階層・モンスター情報一式 250,000円
第五階層・モンスター情報一式 700,000円
ダンジョン・全情報パッケージ 980,000円
……。
「えと、マップって3万円でしたよね?」
『はい』
「こちらは全部で98万円?」
『はい。第五階層までの情報を含むパッケージですと、この価格となっております』
いやいやいや。
あれれ?お姉さん?
マップ3万円に対して、情報は98万円。
ワタシ持ってきたのは1万円。
聖水売っても42万円。
計算ミスかな?おかしいぞー。
「すみません。マップに比べてモンスター情報が高くて驚いてしまって。高い理由お聞きしてもいいですか?」
『たしかに初めてだとびっくりしますよね。』
お姉さんのにこやかな表情は変わらない。
『ご説明させていただくと、マップ情報は一度攻略経験のある冒険者が調査すれば、比較的安全に短期間で作成できます』
たしかに。
『一方、モンスター情報はそうはいきません』
受付嬢は指を折りながら説明を続ける。
『実際にモンスターと戦闘し、攻撃方法や行動パターンなどを一つずつ調べていく必要があります』
確かにデータベースには色々書いてあ、見ていてとても面白かったです。
『しかも、情報の精度を上げるには何度も検証する必要があります。場合によっては、不慮の事故で調査員が命を落とすこともあります』
ダンジョンですもの。
そりゃそうね。
価格差にちゃんと納得できてしまう。
冒険者の価値の問題にも直結してますね。
そう考えれば、命を懸けて調査した人間がいる以上、情報に値段がつくこと自体は納得できる。
……できるのですが、
98万円かぁ。なかなか良いお値段です。
「…ちなみになんですが、六階層の情報ってありますか?」
「扇橋ダンジョンの六階層ですか?」
「いえ、六階層自体の値段を確認しておきたくて」
四階層と五階層の比較でもこれだけ価格差があるなら先に聞いておきたい。
受付嬢は少し困ったような表情を浮かべた。
『申し訳ありません。六階層についての情報は、この場でお渡しすることはできません』
「え?」
『六階層に到達した経験のある冒険者に限り、閲覧のみ可能となっております。情報の提供についても、個別対応での販売となります』
「閲覧にも条件ですか。ちなみに、お値段は?」
教えて。ハウマッチ。
『申し訳ありません。こちらではご案内できません』
まさかの情報制限か。
意外な反応でした。
そして本命の扇橋ダンジョン。
……98万円。
以前売却した聖水のお金を使いましょう。
「すみません。扇橋ダンジョンの情報料。お金を準備してきます。ちなみになんですが、ドロップアイテムの情報もパッケージに含まれますか?」
『はい。含まれますよ』
よかった。よかった。大事なところです。
正直、高いのか安いのか俺にはよくわからないが必要なのは間違いない。
お金を準備し、情報の守秘義務についての契約書にサインを済ますと、すんなり情報を受け取れた。
お姉さんに感謝しながら、早く中身見たいなーとギルドを出る時、後ろから声をかけられた。
『君島さん』
「ああ、正木さん。こんにちは」
『ちょうど良かった。お約束の件でご友人に伝言をお願いしてもいいですか?』
正木さんは周囲を気にするように一度視線を巡らせ、俺に近づいてきた。
『ご準備ができましたので、打ち合わせがしたいとお伝えください』
思ったよりも早いですね。予想ではまだ数日はかかると思ってた。
「夕方以降のプライベートの時間に、電話をいただければと思います」
「ありがとうございます。『親友』も喜びます。恥ずかしがり屋で、僕経由でのお電話になるかもしれませんが、よろしくお願いします」
『よろしくお願いします』
俺は正木さんとも別れ、ギルドを後にした。
ふぅ…
とりあえず早くデータ見たい。
もう少しで準備できそうねーと、鼻歌交じりでチャリをこぐ。
スーパーで、いつものご褒美も忘れずに。
*
帰宅した俺は、つまみをポリポリしながらデータをパソコンへ移した。
モンスターデータベースを開いてみる。
第四階層
レッドキャップ
赤い頭巾をかぶった小柄な人型モンスター。短剣や斧を扱い、素早い動きで相手の懐に潜り込む。
ホブゴブリン
ゴブリンよりも体格が大きく、武器の扱いにも長けた人型モンスター。簡単な防具を身につけ、連携して攻撃する。
第五階層
ウィンドフォックス
風のように素早く移動する狐型モンスター。急な方向転換を繰り返し、鋭い爪で相手を切り裂く。
ウィンドイーグル
風を操る能力を持つ大型の猛禽類。上空から急降下して鋭い爪で攻撃し、羽ばたきで相手の体勢を崩す。
よいね。よいね。
画面に並ぶ大量のデータ。
四階層はゴブリン系で、五階層は素早いモンスターかな?両方2種類だけか。
あらためて正木さんにもらったモンスターデータを見てみる。
なんで、見てるだけでこんな楽しいんだろ。
自分でも不思議だ。
ゲーム買うより攻略本見る方が好きだった。
こんなだから『観察記録』なんてスキルになったんかね?
モンスターの特徴、攻撃方法、行動パターン、弱点、危険度。
これだけの情報を自分で集めようとしたら、一体どれだけの時間と労力が必要になるのだろう?
偉大なる先人達に感謝をしなければ。
「さて……」
俺は最後にとっておいた、レアドロップ情報のファイルを開いた。
ドキドキオープン。
予想通りだった。
第一階層
水色の聖水
解毒作用のアイテム作成時に必要な素材
第二階層
転移石
ダンジョン外への瞬間転移(対象:パーティ)
第三階層
合成石
アイテム同士の合成に必要(使い切り)
第四階層
鑑定石
対象アイテムの効果判別が可能(使い切り)
第五階層
生命樹の樹液
即時性があり、高い治癒効果を持つ希少な液体。
重傷の治療などに使用される
レアドロップの設定は一致している。
生命樹の樹液やば…是非とも手に入れたい。できればストックしたい。
それでも今は、ダンジョンの特性が明らかになった事の方がありがたいなぁ。
同じ階層であれば、出現するモンスターが違っていても、レアドロップは一緒。
ダンジョン単位でなく、階層単位で固定されている。
おそらくこれで間違いない。
そして、やっぱりな…とも思う。
世の冒険者達が、弱いダンジョンでレアドロップ狙いをしないのは、ここにあるのだろう。
普通の冒険者なら滅多に出ないレアよりも、モンスターごとに違う小当たりドロップ品が、収入の糧になるはずだ。
仕組みを知らなければ、俺でも強いモンスターがドロップする、より価値のある小当たりアイテムを狙う。
一万回の周回を通じて、俺が計測した限りでは、小当たりドロップテーブルは一律10%強だった。正確には13/128。
このレベルのドロップ率なら、全冒険者がギルドのような組織と連携し統計を取れば、ほぼ正確に確率がわかるだろう。
滅多に出ないレアよりも、毎日の糧になる小当たりアイテムを拾うのは当たり前。
冒険者の収入源はドロップ品が基本だもの。
時刻は夕方5時を過ぎていた。
正木さんにお願いする交渉内容を思い出しながら、俺は電話するタイミングを待っていた…。
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