検討してみました!
帰りにビールとつまみを買ってきた。
これは、必要経費である。
まあ、とりあえず落ち着こうじゃないか。
プシュッ。
うん。
ビールおいしい…
つまみもおいしい…
おつかれさまでしたー。俺。
ふぅぅ…
落ち着いた。
さて、考えよう。
おいぃぃ。ふざけんなよ、あのギルドマスター!
なんで一発でバレてんだよ! いや、カードもらった時に、入退場の記録をチェックしてるとか、そんな説明はされた気がする。された気はするけども、聞き流すだろ、そんなもん! こっちは三万円の情報を買いに来た、ただの客だぞ!
それになんだよ、あの入退場カード! そんな便利な機能つけてんじゃねーよ! 入った時間と出た時間を記録するだけならまだしも、回数まで集計して異常値を検知するとか。
ダンジョンの攻略より先に、俺の行動ログを攻略してんじゃねえよ!
……いや、管理する側からすれば必要なんだろうけどさ!
せっかく誰にも気づかれずに稼いでたのに、魔物でも罠でもなく、ギルドの事務処理が最大の脅威って何だよ! 俺の天敵、モンスターじゃなくて管理システムか!?
しかも、情報を買いに行っただけなのに個室に呼び出されてギルドマスター直々のお出迎え? いや、VIP待遇が過ぎるだろ! 俺、まだ五階層に行こうとしてるだけの見習い冒険者なんですけど!?
挙げ句の果てに、ログを隠してやる代わりに情報をよこせって……。
それ、取引って言えば聞こえはいいけど、実質「お前の秘密は握った。さあ、洗いざらい吐け」ってことじゃねえか!
三万円払って情報を買いに来たら、情報を買う前に自分が情報を差し出す羽目になった。
何この情報の一方通行! 俺の個人情報だけがギルドに大盤振る舞い!
情報格差社会反対っ!
……くそっ。
もうちょっとこう……仕事のできない方向に才能を発揮してくれないかな! ホントに困るんですよね!
勘のいい子供は嫌いだよ!見習えこの名台詞を!
✳︎
はあ……どうすっぺよ、これ。
空になったビール缶を手の中で回しながら、もらった名刺をまじまじと見つめ考えてみる……
話した印象では、立場上守秘義務が存在するって言ってたし、真面目そうではあった。信用できそうな相手ではあるのだろう。
そして、俺の問題として、協力者が必要なのは確か。
あらためて話を聞いてわかったが、俺の所持している現状の現金資産じゃ、ソロで五階層到達はかなり苦しいだろう。そこまではわかる。
だが、問題は。
すでに首輪がつけられてるんだよなぁ俺…
俺が何かをやってるってことは、もうバレてる。今さら何も話さなかったところで、あのギルドマスターが俺に興味を失う事は絶対にない。
だってこっちの空気読めないシゴデキだし。
かといって、自分から首を絞めにいく必要もないわけで…
どうせ首輪がついてるなら、せめてこっちが動きやすい長さに調整したいところだなぁ。
それに…
あのギルドマスター、俺に必要以上の対応してくれているのもホントなんだよなぁ…
冒険者の大半が五階層まで進めないこと。六階層からはフロアボスがいること。俺がこれから何をしようとしているのか、ある程度は察していたはずなのに、わざわざ三万円で、こちらが求めていない情報まで売ってくれた。
それだけじゃない。俺の異常な行動記録を隠すという事までしてきた。
……普通に考えたら、俺をどうにかして利用しようって人間の動きとはちょっと違う。
もちろん、完全に信用するのは早い。
あの人だってギルドマスターだ。俺個人への好意だけで動いているとは限らないし、組織の利益を考えるのも当然だろう。
それでも、少なくとも俺を一方的に追い詰めようとしているわけじゃない…気がする。
うーむ…
ちょっと探りを入れてみるかなぁ。
よくある恋愛相談の「私の友達」体験談でいこう。
事実は事実として伝えずに、私の友達はこう言ってましたよ、というテイで相談する。
お互いに、そんな友達はいないってことは百パーセントわかっている。
だが、俺が事実を認めることと、友達の話は別だ。
俺の話だとは認めずに、どこまで対応できるのかを聞いてみる。
その答え次第で、次に何を話すか決めればいいね。
うん。
よし。善は急げ。
俺はもらった名刺の番号をスマホに打ち込んだ…
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