調べました!速攻でバレました!
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おかげさまで、本日朝の更新にて[日間]ローファンタジーランキング連載中カテゴリ【98位】に滑り込むことができました!
初めての経験で舞い踊って喜んでます!
本当に皆様の評価とブックマークという名の応援のおかげです。
面白いと思っていただけた方、是非とも作品最後にある評価から応援よろしくお願いいたします。
それでは、第二部『深層進出編』本編スタートです!
うーむ。
俺は悩んでいた。
もちろん、今後のことについてだ。
ソロで五階層まで到達する……。
冒険者をやっていれば、これがどれだけ難しいことかよくわかる。
けれど、俺の現状を客観的に考えれば、誰かとパーティーを組むことができないのも明らかだ。
この能力を明かせるわけもなく、戦闘能力があるわけでもない。基本的には今でも魔剣頼りになっている。
プラクティスダンジョンを攻略できたのは、ギルドが提供している有料の情報サービスを徹底的に調べ尽くしたおかげである。
五階層まで存在する大型ダンジョンで上を目指すなら、なおさら正確なデータが要る。
「……よし、もう一度ギルドに情報を買いに行くか」
そうと決まれば行動は早い。
まずは腹ごしらえである。
鶏がら濃厚豚骨風味噌カップラーメン!
ずずずと麺をすすりながら、完璧な作戦に感心していた。
✳︎
冒険者ギルドのシステムはよくできている。
五階層までの簡易マップは権利を一括で購入すれば、近隣の全ダンジョンについて教えてくれるのだが、四階層以降の具体的な情報については、有料の個別料金体系になっている。
何でもかんでも情報を流通させちゃいけないから、ギルド側が質問に対して相談に乗って答える仕組みになっているのだ。
「すみません、ダンジョンの情報調べたいんですが」
俺はあの可愛いお姉さんいないかなぁと考えながら、普段とは違うカウンターに声をかけた。
『総合相談窓口』に声をかけると、奥の扉から「あー、すいません。今そこの担当が席を外していまして」と、丁寧に応対しながら出てきた男がいた。
スーツをきっちりと着こなした、物腰の柔らかくいかにも「信用できる社会人です」といった風貌の男だ。
男は俺の初期服を見ても特に嫌な顔一つせず、穏やかに微笑んだ。
こいつは絶対俺とは違う「陽」の者だ。
俺の直感が囁いている。
「私が代わりに伺いますね。ギルドカードをお預かりしてもよろしいですか?」
俺は無言で、ポケットから鉄製のギルドカードを差し出した。
男はそれを受け取り、手元の受付パソコンへと読み込ませる。
「ちょっとデータを拝見しますね……えーと」
画面を操作していた男の指先が、ふと止まった。
パソコンの画面が砂時計のマークのまま固まり、そのまま動かなくなってしまったのだ。
「……すいません、ちょっとシステムエラーを起こしてしまっているみたいで、相談ということですし、内容を確認しながら進めたいので、あちらの個室へ移動していただいてもよろしいですか?」
「あ、はい。わかりました」
大げさに騒ぐこともなく、男は実にスマートに俺を誘導した。
普段はなかなか通されないギルドのバックヤード。お姉さんいないかなぁ、俺はその程度の軽い気持ちで、男の後を付いていった。
案内されたのは、重厚な防音扉で閉ざされた、応接セットの並ぶ静かな個室だった。
「どうぞ、そちらに座ってください」
「失礼します」
勧められるままにソファーに腰掛ける。
男は対面の席に腰を下ろすと、手元にある管理用のノートパソコンを開き、俺のギルドカードをもう一度読み込ませた。
「少々お待ちくださいね。うん。はい、わかりました。」
「さて、お話なんですが」
男は画面を見つめたまま、声音を一つ落とした。
窓口での柔らかい営業スマイルが消え、静かで冷徹な眼光がこちらを射抜く。
「まだ名乗っていませんでしたね。失礼しました。私、ここのギルドマスターをやっています、正木と言います」
「え……」
まさかのギルマス直々の対応。
思わず背筋が跳ねそうになったが、正木さんはノートパソコンの画面をスッと俺の方へ向け、静かに微笑んだ。
「君島さんでしたね…単刀直入に聞きますね。あなた、何やってます?」
「何、とは」
「惚けなくていいですよ」
正木さんは画面に表示された文字を指先でトントンと叩いた。
「あなたの活動期間は5ヶ月。元パーティーで一ヶ月、そのあとソロで四ヶ月。まだ駆け出しの冒険者だと思うのであらためて説明しますね」
「ダンジョンの入場ゲートには、ギルドが管理する識別センサーがつけられていて、冒険者が通過すれば入場・退場記録がすべて自動で同期されるシステムになっています」
「……ふぁ」
あかーん。速攻、地雷踏んだぁぁぁ。
「普通、冒険者が一日でゲートを往復する回数は多くて数回、熱心な周回クランでも十数回です」
「なのに、あなたの退場記録……なんですこれ?一日に何百回、トータルで一万回を超えてる。ログが膨大すぎて、さっき窓口の一般端末のメモリがパンクしてエラーを起こしました。駆け出しのソロがこんな異常な往復を何ヶ月単位でやるわけがない」
「そして登録されているあなたのスキル。『観察記録』戦闘スキルでもない。あまり良い表現ではないですが、冒険者の間では、不遇なハズレスキルと言われてるものです。あなた、確実に裏で何かやってますよね」
非常にまずい。
完全に計算外のところから、俺の『一万回周回』という異常値がバレている。
言い訳を組み立てようとするが、目の前の男の静かなプレッシャーに、上手く声が出ない。
「それは、その……ただ、入り口の近くを少し確認して、すぐに引き返していただけで――」
「誤魔化さなくてもいいですよ」
正木さんは俺の言葉を穏やかに、しかし冷徹に遮った。
だが、その瞳に宿っていたのは、追及ではなく、徹底的な合理主義者としての視線だった。
「改めて言いますね。私はギルドマスターです。私の立場は一般人ではなくて公人に近いんです。冒険者が世界に与えてる影響は計り知れない。保護しなければいけない。つまり私には立場上、あなたたち冒険者の個人情報に対する絶対的な守秘義務があります」
「その上で一人の責任者として聞いています」
正木さんは小さく溜息をつくと、キーボードを滑らかに叩いた。
「あなたがどんな攻略をしてるかは追及しませんが……この異常な情報をこのまま放置し、本部の監査や有名クランに見つかれば、あなたの望まない状況が生まれる可能性がありますよ?それは、うちのギルドとしても非常に損失です。あなたは情報の価値やその奪い合いの現実を甘く見てませんか?」
正木さんは画面を操作し、俺のデータを確定させた。
「とりあえず、あなたの入場ログは私の最高権限で完全にロックしました。今日から一般の職員や外部の人間は詳細データを見られないようにしています。繰り返しになりますが、その上で聞かせてください。あなたは確実に何かをやってますね?」
「……」
ぐにゃーーん。
どうしよう。まずい。まずい。まずい。まずい。信用できるか?
信用できるならこれ以上ない協力者だけど。どうするどうするどうする?
図星すぎて、お腹痛い。
なんなのこの人。陽の者どころか超シゴデキじゃん。
うーん。うーん。
しょうがない…もう開き直るか。
「えと…正木さん。対応、非常に感謝します。ありがとうございます。私は…現状ソロで五階層まで行かないと、自分の身の安全を確保できないと思ってます。その上で、私の知識では非常に危険だと思っていて、今日はお伺いしました」
俺が意を決して本音をぶつぶつと吐き出すと、正木さんは否定も肯定もせず、ただ静かに手元の画面をもう一度操作した。
そこには、この街にある大型ダンジョンの、詳細な統計データが映し出されていた。
「安全確保のために、ソロで五階層を目指す、ですか……」
正木さんは画面の数字を指でコンコンと叩いた。
「老婆心ながら、ギルドだけが持っている統計情報を教えておきますね。登録冒険者のうち、実に90%以上が七階層の手前、つまり六階層以下で足止めを食っています。五階層まで到達しない冒険者も約70%います。当然パーティを組んだ上での話です。これが現実の数字です」
正木さんは姿勢を正し、まともな社会人としての説得力に満ちた声で続ける。
「あなたも知ってると思いますが、初心者用のプラクティスダンジョンの一階層と、これから挑む大型ダンジョンの一階層じゃ、出てくるモンスターも違うし出現密度も全く違います」
「全く別の仕様と言ってもいい。そして最大の違いは六階層以降です。六階層から先には『階層主』と呼ばれるボスが出ます。五階層までが冒険者見習いの境界線で、六階層以降をアタックできる人間だけが本当の『冒険者』と呼ばれるのはそのためです」
俺は喉を鳴らして、正木さんの話を聞くことしかできなかった。
「だから、あなたの言う五階層まで行けば安全が確保できるというのは、おそらくは無理だと思います」
「あなたが言っているのは、冒険者見習いがようやく冒険者になるための『第一段階』の話です。もしそこへ到達したとしても、ソロで活動する以上、安全は絶対に保障されない」
正木さんは画面のページを切り替え、さらに深い漆黒のデータを提示した。
「情報提供として今言えることだけを言います」
「現在、国内の最高到達深度は『九階層』です。想像がつかないかもしれないけれど、そこにいるモンスターや、そこで活動できる冒険者は私達から見れば想像以上の化け物です。そういった本気の攻略勢は全員『集団』で活動しています。あなたが安全を確保できないと言った理由わかりますよね?」
正木さんは話を終えると、ノートパソコンをパタンと閉じ、俺をまっすぐに見つめた。
「……あなたがその『一万回』の往復で、何か特別なデータを得ているというなら話は別ですけどね」
正木さんは引き出しから、ずっしりとした羊皮紙の束を取り出して机に置いた。
「これがあなたの求めていた、うちの区域の五階層まであるダンジョンの簡易マップと、詳細なデータラインです。モンスターの種類なども書かれています。一括購入の規約通り、三万円なのであとで会計でデータ受け取りと合わせてお願いします」
「……ありがとうございます」
正木さんの最高権限によって守秘ロックされたギルドカードが、手元に戻ってくる。
「そしてこれが私の名刺です。私ならあなたの相談役として適任だと思います。何か相談したいことがあったら名刺に書いてある電話番号に連絡してくれれば力になれると思います。ソロでできることには限界があります。何かあれば連絡してください」
「死なないでくださいね君島さん。貴重な情報資源を失うのは、社会としても非常に大きな損失ですので」
俺は一礼して、個室を後にした。
背中を冷たい汗が伝わっていた。




