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廃神社の女神様

 かすみのすぐ後で聞こえてきたのは昨日神社の前を通った時と昨日の夢の中で聞いた歌だった。

帰らなきゃ。そう思って足早に階段を降りる。


「行かないで」


かすみが足を踏み外しそうになったところを背後から腕を掴まれ転倒を免れる。

「大丈夫?」

振り向くと巫女装束に桃色の打掛の女性がいた。年齢は20代半ばぐらいか白粉を塗って赤い口紅もしている。

「貴女は?!」

彼女はかすみの夢の中に出てきた少女だ。

「わたくしはウメザキヒメ。この神社に祀られていた女神です。驚かせてごめんなさい。」

ウメザキヒメによるとかつてはこの神社も神主や巫女がいて毎年夏になるとお祭りが行われ屋台や花火大会、選ばれた巫女の舞等で賑わっていた。

「なれどお社は廃れてしまい祭事は行われなくなり、わたくしはこのお社にずっと1人でおりました。このような場所に女の子は来ないていつもあの男の子達が遊んでいるだけ。」

あの男の子達とは先ほど一緒に遊んだ裕二達の事だろう。

「貴女が来てくれて嬉しかったからつい。」

ウメサキヒメは友達が欲しかっただけのようだ。

「ねえ、わたくしとも遊んでくださる?」

「いいですよ。私は1週間しかこっちにいないのでその間だけで良ければ。」

「ありがとう。」

ウメサキヒメは頭を下げる。

「ねえ、お友達になった証に見せたい物があるのです。来てくださいますか?」 

ウメサキヒメはかすみの手を取って境内の奥に連れて行こうとする。


「行っちゃ駄目」


今度は背後から声が聞こえて来た。しかし振り返ったがだれもいない。

「何でもありません。」

かすみはウメサキヒメの手を取り境内の奥へと進んでいく。

敷地内には社務所は巫女が舞の稽古をする歌舞練場がある。

「昔は屋台や催物もあってこの神社には沢山人が集まったのよ。」

その話はかすみが夢で見た風景と一緒だった。

「ねえ、催物って何をやってたのですか?」

かすみは夢の中の出来事を思い出した。女神の装いをした巫女が男に首を切り落とされていたのだ。

「巫女の歌や芝居でしたわ。」

「芝居?」

巫女が演じる姫が村を救うために首を切り落とされ龍に生贄として捧げらる場面を櫓で演じていたという。

「この地域に伝わる昔話のようなものでしょう。」

「そうだったのですね。」

夢で見ていたのは芝居の一場面と分かると霞は安堵する。

「さあ、着きましたわ。」

かすみの目の前には梅の花が咲く木が立っている。それも1本ではない。

「お友達になった証に1つ差し上げます。」 

ウメサキヒメは宙に浮きながら赤い梅の花を木から摘み取るとかすみの髪に付けようとする。


「駄目!!」


かすみは何者かに突き飛ばされ気を失う。

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