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魔王リライト  作者: ゆずリンゴ


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81.守りたい

 アダムの刺客来襲から二日後。


 学園側の緊急会議が行われた。ルベルドは報告を終えた。ズームという名の上位構成員が来たこと、令嬢の確保が目的だったこと、改良型の刻印を使っていたこと——そして、最後に現れたルベルドしか見ていない謎の男の事を全て伝えた。


 会議の後、学園の防衛態勢が強化された。各令嬢の近衛騎士の活動範囲が広がり、一人で行動する場面を減らすよう調整された。


 そしてその過程で、ミレイユの近衛騎士問題が再び浮上した。


「令嬢の安全を守るためには、護衛が必要です」


 学園の教員が言った。


「ミレイユ令嬢、先日の件も踏まえて——候補の方をご検討いただけませんか」


 ミレイユが少し黙った。


 いつもなら「必要ありません」と言うところだった。しかし——今日は、少し違った。


「……条件があります」


「条件?」


「近衛騎士という立場の者が傍にいることは認めます。ただし、私は指示は聞きません。命令関係は作りません。対等な関係として、共に行動できる人間でなければ受け入れません」


 教員が少し唸った。


「そのような形での近衛騎士は——」


「だめですか」


「……前例が少ないですが、不可能ではない。規則上は近衛騎士の選定方法に細かな規定はありません」


「では、その形で選びます」


 ミレイユが少し間を置いた。


「選ぶとしたら——対等に戦えて、話を聞いてくれる人間がいいです」


 その言葉を聞いたレインが少し前に出た。ダリアが隣にいた。


「俺、それに当てはまる気がするんだけど!!」


「当てはまります」


 ミレイユがあっさり言った。


「え、認めてくれるのか!!」


「あの時、頼りました。頼って助かりました。対等に話せると思います」


「やった!!」


 レインが喜んだ。


 教員が書類を用意した。


「では——レイン・ハルト受験生を候補として——」


「待ってください」


 ミレイユが言った。


「……ダリア・ハーヴェルを近衛騎士として選びます」


 静寂が落ちた。


「え!?」


 レインが固まった。


「俺じゃないのか!!!」


「レインを側近として置きます」


「え、側近?」


「近衛騎士は一番頼れる人間が良い。ダリアは先日の戦闘で一番冷静で一番的確だった。近衛騎士には実力と冷静さが必要だと思うので」


「じゃあ俺は……」


「側近として傍にいてください。あなたも頼りにしています」


 レインが複雑な顔をした。


「……喜んでいいのか悲しんでいいのか分からない!!」


「どちらでも好きな方にしてください。それにレイン」


「なに?」


「もっと頼れって言ったのはあなたでしょう。どんどん頼っていくので覚悟してください」


「それは嬉しいことだけど!!言い方!!」


「何が問題ですか」


「問題はないけど!!なんかこう、もう少し!!」


「もう少し?」


「……やっぱりいい!!分かった、全力で側近やるよ!!!」


 ミレイユが少し口の端を動かした。ほんの少し——ほんの少しだけ、上がった。それが笑顔かどうかは判断が難しかったが、レインには確かに見えた。


 ダリアがレインの隣に来た。


「お前、何をそんなに喜んでいる」


「あんなにツンツンしてたのに、もっと頼るって言ってくれたんだぞ!?それがめちゃくちゃ嬉しいんだよ!!」


「……お前は単純だな」


「褒め言葉だな!!」


 ダリアが小さく息をついた。


「……まあ、悪い結果ではない」


「ダリアは近衛騎士になったのに落ち着いてるな」


「お前が騒ぎすぎている」


「俺がおかしいのか!!!」


 ◆◇◆◇


 その夜。


 ルベルドは学園の中庭に一人でいた。


 空に星が出ていた。秋の星だ。夏より少し多い。2日前、図書室で起きた事がまるで夢だったのでは無いかと思う程に世界は今日も平和に回っている。


 ルベルドはズームとの戦いを反芻していた。


(……あの時、俺はなぜあんな事が出来た?あれはまるで)


 似たような事が過去にあった事を思い出した。神域実習でスルクが助けに入った時、同じように魔法を使わず技をいなした。

 ルベルドがやったのは無意識だった。もう一度同じことをやれと言われて出来る自信も無い。


 ただ、あの技がなければ既にルベルドは無事では済まなかった事だけは確かだ。


 そしてズームの他に不安が2つ。


 最後に現れた男の存在。あの男の正体については目星がつく。スルクが探している創設者だろう。スルクが言っていた。創設者が組織を動かしている。その創設者の実力はスルクでも手こずる可能性があると。


(……あれが創設者でなくては困る)


 あの男はスルクと同等か、それ以上な気すらする。ルベルドも今のスルクの全力を見た事がない以上は何も言えないが、そうでないと教団が本当に自分に手出し出来るものじゃ無くなってしまう。


 魔族であることも男にはバレていた。


 レインが言っていた。「隠していることがたくさんある、それは当たり前だ」と。


(それを言えば、どうなる。バレてしまえば無くなってしまうのでは無いか)


 ルベルドは手のひらを開いた。


 上着の内ポケットにある石のお守りを感じた。コゴメからもらったものだ。まだ持っている。


 これを見ても、今日は気持ちが落ち着かなかった。


 コゴメはダリアの報告を聞く限りは目を覚ましたらしい。ただ、学校には来ていない。

 体調を崩すにも時期が違う。あの時に何かされたのか──とも思う。

 ただ理由についてはダリアも聞けていないと言う。


(胸がどうにもざわつく。コゴメの傍にいると決めたはずなのに、肝心な時に居れなかった)

 

 不安が、恐怖が、心配が静かにルベルドの上に積もっていった。


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