79.その程度(ユーリ、エヴァ視点)
北の中庭の東屋に、ユーリは間に合った。
エヴァが立っていた。二人の刺客を前にして、氷の結晶を展開している。逃げていなかった。戦う気でいた。
「遅かった?」
「丁度いいくらいです。一人でも対処できましたが」
「それは格好いい。けれど、近衛騎士としては私にも仕事を与えて欲しいですね」
ユーリが前に出た。
二人の刺客は、それぞれ火属性と風属性だった。連携が取れている。火が攻撃し、風が補助するタイプの組み合わせだ。
(……二人で一人ってタイプは分断が有効だから)
ユーリが光の透過を使った。実体が薄くなり、風の魔力を通り抜けながら火属性の刺客の横に回った。そのまま光の束を側面から叩き込んだ。
「——っ」
火属性の刺客が吹き飛んだ。
風属性の刺客が追おうとした。しかし、その足元に氷の膜が広がる。
「自由に動けるとでも思ったのですか?」
エヴァが静かに言った。氷の拘束が足首を包んでいた。
「エヴァ様、サポートありがとうございます」
「お礼はいいです。倒してください」
「もちろん」
ユーリが踏み込んだ。
光の束を二発、的確に。風属性の刺客が拘束のまま衝撃を受けて気絶した。
火属性の方が立ち上がろうとした。ユーリが側に来た。
「諦めてください。あなたたちが来た方向を見ると、他の組も上手くいっていないのでは?撤退を考えた方がいい」
刺客が少し迷った。それからエヴァに言った。
「次はこうはいかない」
「本当に逃げるなんて……プライドが無いの」
エヴァが平坦な声で言った。
刺客が二人、中庭の外へ逃げた。
「……ユーリ先輩、先ほどの動き」
「どれ?」
「透過したまま火の刺客の横に回った部分。あれで体にダメージはなかったんですか」
「まぁね。透過中は基本的に攻撃は無効化できるから」
「……流石は近衛騎士ですね」
「それを言うのならエヴァ様も素晴らしいですよ」
「……強い殿方の隣に立てるよう練習してきましたから」
ユーリが少し目を丸くした。それから笑った。
「……すごいですね。エヴァ様は」
「あなたが毎日鍛錬をしているのも知っています。私は他の人に負けたくはありません」
「それはとても格好いいですね」
東屋に穏やかな午後の光が差し込んでいた。
(……コゴメ様たちも無事だといいけど)
ユーリはそれだけ思いながら、図書棟のある方を見た。




