49.抜け道
翌日の午後。
演習棟の奥の区画は、普段は上級生専用で、二年生以下は基本的に使わない場所だった。
ルベルドが行くと、レオニードはすでにいた。
「来たね。座って」
指示された場所に座った。
「今日は戦い方の前に目指している場所の確認をしたい。特別近衛騎士の選抜試験を目指しているよね」
「そうだ」
「来年の選抜試験は」
「受ける」
「通るかどうか、正直に言う。今年の君は去年より格段に上がっている。けど、それでも実力はまだ足りない加護の差は覆らない」
「……だろうな」
「正直に言うと加護を手に入れる事がルベルド、君が近衛騎士に近づくのに1番早い。けど加護を受けるかは神の気まぐれ。実力だけじゃない。加護を受けられる保証がない以上、無い前提で強くなった方が確実だ」
レオニードの声は真剣だった。
「……そんな方法があるのか?」
「それは、君が1番知ってる事だと思う」
レオニードの目が鋭くなった。まるでルベルドを見透かしているようだ。
「強さを隠している。何度か言われたことがあるだろう?私も一度言ったし、セン先輩も気づいていた」
「そうか」
今更否定は必要なかった。
「君の本当の実力は近衛騎士に匹敵する強さだと思う。これはあまり知られていない、秘密のことだけど加護が無い状態で近衛騎士になれた人がいる」
「なに?」
ルベルドの感情が揺れた。
その近衛騎士の世代も強さも知らないが自分の知る近衛騎士はどれも魔族に対抗出来る程の強さだ。そのレベルに加護の無い人間が立てるとはルベルドでも思えなかった。
「事実か」
「事実。ただ、その人もある時までは加護をもっていない事で実力を隠していた。ルベルドと同じだよ。ただ、とある抜け道を使うことでそれを解決した」
「なに」
レオニードは軽く笑った。
「方法は簡単。加護を受け取った事を偽る」
「偽るだと?そんな事が許されるのか」
「もちろん、基本的は申告した方がいい。けれど神の中には少し恥ずかしがり屋さんもいる。そういう神様は加護を与えたことを他の人に言うと剥奪する例があるの。だから、『加護の内容は言えません』って言えばどうにかなる」
ルベルドが息を飲む。
「その為―――先のことだけど夏にある休暇中に誰かと神が眠る場所に行って。その子に保証人になってもらうのがいい。それができる人はいる?」
言われてすぐに一人、顔が浮かんだ。
「いる」
「そう、なら覚えおいて。この話はここまで」
それはルベルドとレオニードの二人がした、互いの優先する物を守るための約束だった。
この日は、それだけで解散した。
帰路、ルベルドはレオニードの話を反芻しながら考え事をしていた。
抜け道のこと、加護を持たない近衛騎士がいた事。神を探しに行くこと。
それでも、いつか魔族である事を明かさないといけないどういうのはそうだ。
―――しかし、それも簡単にできる状況ではなくなってしまった。
神域実習の時に会った神殺し行おうとした謎の集団。魔族を、そして父上を殺そうという目的を持っていた。どれだけの規模か分からない、禁忌の術を使う得体のしれないもの。
スルク兄上はあの団体について何か知っているようだった。それを注意するようにも言われた。
(魔族である事がバレれば……危険が及ぶ)
自分を理由に他を危険に晒すのはできない。
ルベルドは空を見あげ、兄上の事を考えた。




