幕間 三年生大会――後記
ユーリの試合が終わった後の休憩時間、ルベルドは食堂の端で水を飲んでいた。
「今日の試合、見てたよ」
声がした。
振り返ると、ユーリがいた。制服の上に青いマントを羽織ったまま、穏やかな顔でそこに立っていた。
「去年から見ていたから少し分かる。あなた、加護を持ってないのにとっても強いね」
「優勝したのは事実だが、ダリアとの試合は際どかった」
「際どかったけど、勝った。それが大事。実力があっても実績をだせなきゃ意味はないからね」
ユーリが水の入ったカップを持ってきた。ルベルドの隣に自然に座った。
「聞いていい?」
「なんだ」
「今日のダリアの炎の輪、跳んで躱したよね。あれ、どうやって判断したの」
「逃げ場が上しかなかった」
「それ計算できるまで何秒かかった?」
「一瞬」
ユーリが笑った。
「すごいね。一瞬で状況を整理して、上を選択した。……闇魔法での圧縮反発はいつ習得したの?学校の授業には出てこない技術だけど」
「自分で考えた」
「自分で。……ねえ、一個言っていい?」
「なんだ」
「今年の選抜試験、絶対に通るよ。去年は残念だったけど、今年のあなたなら通ると思う」
ルベルドは少し止まった。
「……ユーリは選抜試験の審査に関わらないだろう」
「まぁね。でも私の勘が貴方は近衛騎士になれる実力があるって言ってる。それに今はコゴメ様の護衛になってあなたの事をよく聞いてそう強く確信したよ。意思のある人間は強い!」
「……そうか」
「近衛騎士って、強いだけじゃ意味がないんだよね。強くて守る意志がある人が最適だと私は思ってて。あなたの心の奥底には、それがある。昨日の決勝のダリアとの試合でも、何度かコゴメ様の方向を確認してたよね」
(……確認していたのか、俺は)
ルベルドは気づいていなかった。無意識に、コゴメの位置を確認していた。
「意識してなかったとしても、自然にそういう動きをしてる。……それ、大事だよ」
ユーリが立ち上がった。
「今年の選抜試験、頑張って。私は応援してる」
「……なぜ俺を応援する。お前もコゴメの近衛騎士だ。俺が入れば枠が減るかもしれない」
「今の枠は四人で、私の枠は私の枠。あなたが入るかどうかとは関係ない。それに――」
ユーリがルベルドの瞳を真っ直ぐに見る。
「コゴメ様の傍に、強くて守る意志がある人が一人でも多くいる方がいいから。私はそう思ってる」
それだけ言って、ユーリは去った。
ルベルドはしばらく、そこに座っていた。
(……近衛騎士として認めてくれた)
ユーリからその言葉をもらうことは、想定していなかった。
(……今年の選抜試験は加護がなかった。しかし――今年は違う)
何かが変わった気がした。自分でも、まだ言葉にできない何かが。




