21.夏への準備
終業式の翌朝、ルベルドの宿に二通の手紙が届いた。
片方はコゴメから、そしてもう片方の手紙の差出人を確認して、ルベルドは少し目を細めた。レインからの手紙だった。
『ルベルド!! 夏休みだぞ!!!!!
突然なんだが俺、夏に別の街へ行こうと思ってる!!うちの親父が商談でルーベンって港町に行くんだけど、せっかくだから観光もしてこいってことで小遣い増量さた!!!一人は寂しいし、お前も来ないか?!!!お前なら絶対楽しいと思うぞ!!!!!!!!
―――レイン (返事くれ!!!!)』
(……感嘆符が多い)
ルベルドは数えた。が、途中で呆れてやめた。
もう一通、コゴメの手紙を開く。
『夏休みに入ってしまいましたね。今年の夏は、前にお話した通りお父様の命で大陸各地の貴族家を訪問する会食が続くことになりました。ダリアも一緒です。本当はずっと前から一緒に遊ぶ事を楽しみにしていたので、残念です。でも何があったかは書けます。夏休みの後、何があったか聞かせてください。
それで、帰ったら話しましょう。
ルベルドさんの夏休みが、良いものになりますように。 ―――コゴメより』
(……分かっていたが)
一拍だけ間を置いた。残念だとは思う。しかし王族の義務がある以上、仕方のないことだ。
それよりレインの手紙に視線を戻した。
港町。海。まだ見たことのない景色。人間界を観察することが当初の目的だった身としては、願ったりかなったりだ。商人の家のレインが行き先を知っているなら、地の利もある。
(……行くか)
決断は一瞬だった。
返事を書く。
『行く。―――ルベルド』
一時間もしないうちにレインから返信が来た。
『よっしゃああああああ!!!!!三日後の朝、東の馬車乗り場に来い!!!絶対楽しいからな!!!!!!!!!!』
(……また感嘆符が多い)
ルベルドはコゴメへの返事も書いた。
『残念だったな。俺の方は、友人と別の街に行くことになった。帰ったら話す。―――ルベルドより』
書き終えてから、「帰ったら話す」という言葉を少しだけ見つめた。
(……「帰ったら」か。帰る場所として、ハートヴェルを基準に考えていた)
魔界ではなく。それが自然になっていることに、少しだけ気づいた。
それから荷物の準備に戻った。何を持っていくか考えながら―――最終的に小ぶりな袋一つになった。




