第二十一話:女性だけが受ける呪い
さて、続けて別の方から教えていただいた怪異をご紹介致しましょう。
六十代くらいでしたかねぇ……女性の方から聞いたお話です。
今はもう取り壊されてなくなっているそうですが、その女性が昔住んでいた団地で、ある奇妙な出来事が連鎖するように発生していたというのです。
その出来事とは何かと申しますと、妊娠された女性がその団地に住むと、必ず不幸な目に遭うというもので。
お腹の子を流産してしまったり、旦那さんが暴力を振いだし離婚する羽目になったり、その女性が知っている限りでは一人、痴情のもつれから殺人に発展し命を亡くした方もいらっしゃったとか。
とにかく、妊婦さんだけが狙われたように不幸な事故や事件に巻き込まれ、酷い思いをする団地だった。そう仰るんですね。
その頃、ちょうどお話をしてくださった女性も旦那さんと子供を作ろうかと考え始めていた時期だったそうで、正直、もし自分が妊娠をしたらどんな嫌なことが自分へ降りかかるのか、そんなことを想像すると子を授かることに踏ん切りがつけられず、旦那さん共々困り果てていた。
一人二人が、偶然……というのなら、気にも留めなかったでしょうが、団地に暮らす妊婦さんが悉くとなれば、不安になるのも当然でしょうね。
その方、旦那さんと相談し、ひとまず子供を作ることを見送ることにして、少しくらいなら家賃が高くても良いから、別の場所へ引っ越して精神的に楽になれることを優先しようと話がまとまったのだそうです。
それから、お互いの暇を見つけては新しい住まいを探し、それでも仕事の都合などで一年くらいかかったと言っていましたか。念願の引っ越しをすることができた。
これで一息つくことができると、ホッとしながら新しい場所での暮らしをスタートさせたお二人は、その後無事お子さんにも恵まれ幸せな生活をお過ごしになられてきたそうです。
……ただね、お子さんが生まれて半年と少しが経過した頃、問題の団地でよく一緒にお茶を飲んでいたご友人が出産祝いがてら遊びに来られたそうなのですが、その時にある嫌な話を教えられたそうでして。
何でも、その問題の団地は曰く付きの土地に建てられたものだったらしく、団地ができる前は長屋のような建物があったのだそうです。
まぁ、団地ができる前とは言ってもかなり昔のことらしいのですが……その長屋で暮らしていた妊婦が、強盗だか強姦に入られて殺されてしまう事件があったと。
そもそもこの話をご友人に教えてくれたのは、昔から地元で暮らしているもう九十代の老人の方だったそうで、その方が言うには、現場はかなり凄惨な状況だったらしく、殺された女性は辱しめられた後に殺害されており、臨月間近の腹部は裂かれ、お腹にいた赤ん坊まで、切り裂かれていたとか。
犯人はすぐに捕まったものの、殺された側としてはやはり、そんなことくらいで無念が晴れるわけがありませんよね。
きっと、長い年月が過ぎて尚、恨みであったり、同じ妊婦に対する嫉妬のようなものを抱いていたのかもしれません。
それで、自分が亡くなった土地を訪れた妊婦たちへ、不幸を撒き続けていたというのが、団地で起きていた不可思議な出来事の真相ではないのか。
お話を聞かせてくれた女性は、自分はそう解釈しているのだと仰っていました。




