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クラス転移でハズレ職《共鳴士》になった俺、仲間の隠れた才能を覚醒させていたら最強パーティーができていた  作者: あーる


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クラス転移

 最初に戻ってきたのは、頬の痛みだった。


「……っ」


 身体を起こす。


 掌の下にあるのは、学校の床じゃない。


 ざらついた灰色の石。


「どこ……」


「先生!」


「動ける奴、返事して!」


「水瀬、大丈夫?」


 聞き慣れた声が重なる。


 立つ前に辺りを見る。


 橘。


 佐々木。


 水瀬。


 クラスメイトたち。


 少し離れた場所では吉岡先生が頭を押さえながら膝をついていた。


「先生」


「ああ、大丈夫だ」


 先生はすぐ立ち上がった。


「橘、男子を見てくれ。怪我人優先」


「はい」


「女子は――」


「私、数えます」


 水瀬が言った。


 声は震えていた。


 それでも近くの女子の名前を呼び始める。


「美穂?」


「いる……」


「森川さん?」


「大丈夫」


 俺は佐々木を見る。


「肩」


「動く」


「頭打ってない?」


「多分」


「多分って言うなよ」


「じゃあ打ってない。たぶん」


「変わってないだろ」


「男子、全員いる!」


 橘の声。


 水瀬も人数を数え終える。


 誰も欠けていない。


 それを確認して、ようやく周囲を見る余裕ができた。


 広い。


 体育館より大きな石造りの空間。


 天井は高く、太い柱が何本も並んでいる。


 窓はない。


 代わりに青白い光の球が、壁際の宙に浮いていた。


 床には巨大な円。


 教室で見たものと似ている。


 でも模様はもっと複雑だ。


「これ」


 佐々木が床を見る。


「魔法陣?」


 誰も笑わなかった。


 他に名前が思いつかなかった。


 俺は如月を探す。


 円の端にいた。


 怪我はない。


 友達に声を掛けられ、短く答えている。


「如月」


 振り向いた。


「ここ知ってる?」


 しばらく周囲を見る。


「知らない」


「昨日のは」


「高瀬」


 橘に呼ばれた。


「先生の近く集まれって」


「……分かった」


 如月を残して先生たちの方へ向かう。


 問い詰めたい。


 ただ、今はそれどころではなかった。


 ガコン。


 重い音。


 正面の巨大な扉が開く。


「全員、後ろへ」


 吉岡先生が俺たちの前へ出た。


 扉の向こうから人が現れる。


 銀色の甲冑。


 腰には長剣。


 後ろには、長いローブと杖。


「騎士……?」


 誰かが呟いた。


 先頭の男がこちらへ歩いてくる。


 剣には触れない。


 胸の前へ拳を置く。


「――――」


「何語?」


「英語じゃないよね」


 男が後ろを振り向く。


 ローブ姿の老人が前へ出た。


 杖の石が光る。


「何をするつもりですか」


 吉岡先生が一歩前へ出た。


 光が広がる。


 身体を通り抜ける。


 痛みはない。


 老人が口を開いた。


「これで、我々の言葉がお分かりになるはずです」


「……分かる」


「口と声合ってなくない?」


 意味だけが頭へ直接入ってくるようだった。


「ここはどこです」


 吉岡先生はすぐ聞いた。


 甲冑の男が答える。


「アステリア王国王都。王城地下にある召喚殿です」


「召喚?」


「はい」


 男は頭を下げた。


「我々が皆様をこの地へお呼びしました」


 一拍。


「……勝手に?」


 女子の声。


「はい」


「帰して」


 返事はなかった。


「帰してよ!」


 声が大きくなる。


「家に何も言ってないんだけど!」


「ふざけんなよ」


 佐々木が前へ出かける。


 橘が腕を横へ出した。


「離せ」


「剣持ってる」


「だから何だよ」


「今突っ込んでどうすんだ」


「じゃあお前は平気なのかよ」


 橘が佐々木を見る。


「平気に見える?」


 佐々木は何も言わなかった。


 吉岡先生が前へ出る。


「説明してください」


「国王陛下がお待ちです」


「帰還についても話してもらえますか」


「はい」


 吉岡先生は数秒黙ったあと、生徒たちを見る。


「全員、固まって移動する。勝手に列から離れるな」


 今度は誰も文句を言わなかった。


     *


 召喚殿を出た。


 城の廊下。


 大きな窓。


 その向こうの街を見て、足が止まりかけた。


 赤茶色の屋根。


 石造りの家々。


 城壁。


 その外には平原。


 車はない。


 電柱もない。


「……マジなんだ」


 佐々木が言った。


 橘は窓を見ず、前を歩く騎士を見ている。


 水瀬は窓の外から目を離せなくなっていた。


 俺の少し前を如月が歩く。


 壁に掛かった紋章の前を通ったとき。


 彼女の歩調が乱れた。


 ほんの一歩。


 すぐ元へ戻る。


「如月?」


「何?」


「いや」


 僕はそれ以上の言葉が出なかった。


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