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雪の精霊 ~命のきらめき~【PV62000突破☆感謝!】  作者: あるて
第3章 拝啓、未来のわたし

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第175曲 仲間という絆

 クリスマスイブの合同配信はまさに圧巻と言える大盛況だった。


 きらりさんの会社からは以前にコラボしたこともある疾風クローディアさん、佐助さん、川合ナノさん。

 わたしの配信仲間の水音紡さんに冬空雪乃さん、そしてレイラさん。必死にお願いしたら文香と穂香も参加してくれた。

 

 Vtuber七人と素顔を出した三人。十人もの大所帯だ。うちの姉妹も見学しているから、広い地下室も人いきれで少し蒸している。

 

 みんなが3Dモデルを持っていることにも驚いたけど、躊躇なくわたしのPCに取り込ませていたのにはもっとビックリした。そういのって自分の分身だから大切なものなんじゃないの?


「ゆきちゃんなら変なことに利用したりしないでしょ? なんならこれを使って踊ってくれてもいいし」


 そう言って笑うクローディアさん。いや、そんなことしたらファンから袋叩きにされて会社にも訴えられますってば。


「まぁ終わったらすぐ消すんで問題はないですけどね」


「わたしの分は残しておいてください! ゆきさんのPCの中に住めるなんてわたしが変わりたいくらいです!」


 鼻息荒くお願いしてきたのは雪乃ちゃん。相変わらず信仰心がヤバいなぁ。配信中なのにいいの?


「今日が最後ってわけでもないし、そのままでいいんじゃない? またゆきさんの料理も食べたいしさぁ」


 そう言って顔をほころばせるのは紡さん。よだれ出てますよ。

 配信開始前にみんなでご飯を食べたんだけど、一番がっついてたもんなぁ。普段何食べてるんだろ。


「ほんと美味しかったよな! 俺も毎日通いたいくらいだよ!」


 そう言って肩を組んできたのは佐助さん。なんというか、相変わらずノリの軽い人だ。


「気安くゆきさんに触れるな」


 鋭い眼光で佐助さんを睨みつけ、佐助さんとの間に割って入るレイラさん。あれだけわたしを敵視してたのに、今ではガーディアンみたいになっちゃってるな。


「女性の体に気安く触れるのはいただけないな」


 冷静にツッコミを入れているクローディアさんだけど、わたしが男だということを分かって言ってますよね? 相変わらず隙あらばいじってこようとするのは変わらないなぁ。


「そうですよ! ゆきさんに触れていいのはわたし達女性陣だけです! 男性は10m以内に入らないでください!」


 それだとカメラの画角に収まりきらないよね。どんなワイド画面だよ。


 けっこう癖の強い配信者たちが集まる中、数少ない一般人の文香と穂香が小さくなっている。

 最近うちへよく遊びに来ているから姉妹たちとは仲良くなったけど、Vtuber界の大物が揃うこの場での勝手は違うようだ。


「ちょっとゆき! いくらなんでもわたしら場違いじゃないか!?」


 緊張に耐え切れなくなったのか、穂香が苦情申し立てを入れてきた。

 文香は石化してしまったのか、微動だにしない。息、してる? 顔色が青いよ。


「大丈夫だよ。緊張をほぐすためにもトップバッターはわたし達が踊ることになってるから。準備は万端?」


 最初に一発かましてみんなをうならせてやりたい。

 わたしたちの友情をもってすればそれくらい簡単なことだよね。


「えぇぇぇ。トップって。この雰囲気に慣れるだけで三年はかかりそうなのに……」


 どんだけかかるんだ。とっくに配信終わってるどころかひよりも卒業しちゃってるよ。


「どうすれば緊張がほぐれる?」


 体が硬いままでは柔軟な動きを必要とするダンスなんてとてもじゃないが踊れない。少しくらいは何か言うことを聞いてあげよう。


「緊張をほぐすためにお願いがあるんだけど」


 なんだろう。


「わたしにできることならなんでも聞くよ」

「ほんと!?」


 ん? 食い気味に答えた文香の目が光ったような。


「今なんでもっていったよね。穂香も聞いたでしょ?」


「聞いたな」


 二人で顔を見合せ、不敵に微笑む。嫌な予感……。


「それじゃ、ここでわたしの唇に熱いキスを……」

「ダメに決まってるでしょ」


 最後まで言わせるか。

 まったく、突然何を言い出すかと思いきや。最近やり口がうちの姉妹に似てきたぞ。


「ゆきちゃんのケチ! 何でもするって言ったのに!」


「できることならとも言いました。それはさすがに出来ません!」


 後ろで姉妹たちが笑い転げている。いや、お前らの影響だよ。最近仲いいなと思ったら変な事吹き込みやがって。

 配信中だというのにゲラゲラと笑い声を入れるんじゃない。昔のコント番組か。


「ゆきちゃんのちゅ~なら元気が出たのに……くすん」


 その泣き落としも姉妹から聞きやがったな。

 まったく、しょうがないなぁ。


「キスはダメだけど、これくらいなら……」


 そう言って文香をハグ。


「んきゅぅ……」


 なんか絞め殺されたカエルみたいな声を出したけど大丈夫かな。そんなに強く抱き締めてはいないんだけど。

 解放すると真っ赤な顔をしていたので、とりあえず放置して次は穂香。


「んがぁ……!」


 悪役の断末魔?


 姉妹たちも見ているので様子を伺ったら、みんなでサムズアップをしていた。この辺りまでは許容範囲らしい。心が広い。

 わたしが逆の立場だったら……イヤだな。わたしってば独占欲が強いのかも。しかも四人。

 いかん、自分がクズに思えてきたぞ。もっと広い心を持つようにしよう。せめて溜め池くらいには。


「ゆきちゃん、ちゃんと緊張がほぐれたから、しっかりと踊りきったらもう一回ね」


 味を占めたのかおかわりを要求されてしまった。ちゃっかりしてしまったなぁ。友達は選ぼうね。


 だけど緊張がほぐれたという言葉通りに、その後のダンスでは動きも良くて息もピッタリ。なかなかに見事なダンスを披露出来たんじゃないだろうか。

 画面外に出ていた出演者たちが揃って拍手をしながら戻ってきたところを見ると、どうやら出来栄えは良かったらしい。どやぁ!


「いやほんと、素人とは思えないよね。どう? よかったら俺とも踊らない?」


 軽い! 内容も軽ければ誘い方も軽いよ佐助さん!

 案の定後ろ頭をクローディアさんにはたかれていた。


「他人の友達を勝手に勧誘するんじゃない。彼女たちもどうせならゆきさんの後ろで踊りたいと思うだろ」


「そうですね、どちらにしろゆきの歌のダンスしか覚えてないし、覚える気もありませんので」


 にべもなく拒否をする穂香の言葉にさすがの佐助さんも意気消沈。


「俺も可愛い子と踊りて~!」


「お前はダンスがメインじゃないだろ」


 その通り。本業の方で頑張ってください。

 佐助さんのメインは雑談とゲーム実況だから畑違いもいいとこでしょうが。しゃべりが面白いのは認めるけど。


「それじゃ次。次はわたしと唄いましょう」


 次に手を上げたのはレイラさん。


「いいよ、何を唄う?」


「わたしの持ち歌ですけど、『To be grateful to』って知ってますか?」


 もちろん知っている。ここにいるメンバーが出している曲は全部覚えているんだから。


「ゆきさん相手にこの質問は野暮でしたね。わたしがハモるのでゆきさんがメインを唄ってください」


「え? レイラさんの持ち歌なのに? ハモる方もできるよ?」


 一度覚えてしまえば、少し音をずらしてハモらせるのは簡単なことだ。相手の歌声に流されない必要があるだけで。


「これはゆきさんの事を考えて作った曲ですから。いつか唄ってほしいと思っていたんですよ」


 To be grateful to――直訳でありがたく思う。歌詞の内容からして「感謝すべき人」といったところか。

 曲名通り、その歌詞は自分の運命を決定づけてくれた人に対する感謝の言葉を述べたもので、ありがとうという想いと愛情がたくさん込められている。


 なんともレイラさんらしい、回りくどい気持ちの伝え方だ。

 唄い終わった時にはレイラさんの目には涙が溜まり、こぼれないようにと上を向いていた。

 ようやく落ち着いたのか、わたしに向き直って頭を下げる。


「ちょ。いきなり頭を下げてなに?」


 突然の行動に面食らってしまい、レイラさんを引き起こした。

 その隙を狙っていたのか、そのままわたしは強く抱きしめられてしまう。完全に不意打ちだったので抵抗する暇もない。

 だけどその強さは力任せなものでなく、どこか優しい抱擁にも感じられる。

 そして耳元でぽつりとつぶやくレイラさん。


「お願い、生きて」


 その声は少しかすれていた。



 その後も結局わたしは全員とデュオをすることになり、男性陣以外は全ての人たちにハグをされてしまった。

 そして耳元でささやかれるのも同じ。

 内容はそれぞれ違ったけれど。


 紡さんは「絶対負けるな。戦って」という熱いメッセージ。

 雪乃さんは「信じてます。いつまでも待ってるから」と涙ながらにお願い。

 そして最後にきらりさんは「来年も再来年も、これから先ずっとコラボしようね」と言って笑っていた。さすがというかなんというか、やっぱりかっこいいな。


 みんながみんな、わたしの未来を願ってくれている。

 わたしもそんな思いに応えるためにも、かっこよく、泥臭く、生にしがみついてみせよう。

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