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雪の精霊 ~命のきらめき~【PV61000突破☆感謝!】  作者: あるて
第3章 拝啓、未来のわたし

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第162話 定期的に表れるGな人

 クラスのお手伝いも終わり、校内の見回りを始める。


 わたしにとって最後の文化祭を惜しんでくれるかのように、例年にも増して声をかけられる生徒会長ゆき。


「ゆきちゃん、今年は絶対うちに顔を出してね!」「会長だけの特別メニューを用意してますからね!」「会長が来てくれないと文化祭って感じがしないよ~」


 どこに行っても熱烈なアピール。特別メニューを用意してくれているのがお化け屋敷なのがどうにも気になるが。何をするつもりだ。

 よし、あそこには決して近づかないようにしよう。


 見回りはやがて文化棟に差し掛かる。今年も文化部は中庭を使って展示している部が多いので、賑やかな校内の中で比較的静かな場所だ。


 華道部の部室にひっそりと活けられているダリアの花が静かな空間にとてもマッチしていて美しい。これがワビサビってやつなのかな。

 ダリアの香りを楽しんでいると背後に不穏な気配を察知した。


 こういう時のわたしの反応速度は人智を超えている。油断をしていないわたしの神経は研ぎ澄まされ、人間の反応速度(0.1秒)を超えたまさに刹那(0.018秒)の反応。


 脊髄反射とでも言うべき神速で振り返り、不審者の襟を取りそのまま床に引き倒して抑え込む。

 この反応速度と神速に対応できる人間はそうそういない。


「あいだだだだ! 痛いって! 俺だよ俺!」


「オレオレ詐欺なら警察に突き出す」


「違うっての! まずは離してくれ~! 腕がもげる!」


 危害を加えるつもりはないようなので放してあげた。さて、この後はどうしようか。


「不審者として追い出されるのと、通報されるのどっちがいいですか?」


「絶対分かってて言ってるだろ! 俺だよ富樫! とーがーしー! りぴーとあふたみー!」


「うるさい黙れ」


「そんなこと言ってねーよ! ったく相変わらずだよなぁ」


 そのセリフ、そっくりそのままお返しします。


「で、今日はどんな投げ方を所望ですか?」


「もう退場前提で話をするのやめてくんない? 俺が一体何をしたって言うのかな?」


 胸に手を当てて聞いてみろ。


「しつこいと女の子にモテませんよ」


「お前にさえ好かれれば他の女なんてどうでもいいさ」


 そういうとこだよ。男相手に何言ってんだ。


「あー。じゃあ孤独死決定ですね。ご愁傷様です」


「人生に終止符打たれちゃった! そりゃないよ、生涯の伴侶はハニーだけって決めてるんだぜ?」


 どの面下げてハニーとか言ってんだ。

 鏡見たことあんのかな。


「それで、今日は何の用ですか?」


「いや、おめーももうすぐ卒業だろ? 今までは学校しか接点がなかったから、住所を聞いておこうと思ってよ」


「あー。ラニアケア超銀河団乙女座銀河団局所銀河群天の川銀河オリオン腕太陽系第三惑星です」


「宇宙規模! よくそんなにスラスラ出てくるな! 80億人みな同棲状態だよ! そうじゃなくって! 日本国以降の住所を聞いてんだよ!」


 うるさいなーもう。


「そういうことは秘書を通してもらえますか」


「生徒会長って秘書いるの!? ちなみに秘書って誰だよ?」


「さぁ? 任命した覚えがないので」


「ねぇ、神対応とまでは言わないからせめて塩対応はやめてくんない?」


「昭和アニメ先輩が自分の世界に帰ったら考えます」


 いい加減解放してほしい。いつまでも不毛な遊びをしてるわけにはいかないんだけどなぁ。

 めんどくさいから投げようかな。


「なんか殺気を感じるんだけど。って誰が昭和だ。その世界はどこにあるんだよ」


 知らねーよ。自分で探せ。


「ブラックホールにでも飛び込んだらワームホールを通じてたどり着けるかもしれませんよ」


「宇宙好きだなぁ。それってもはや異世界ってやつじゃねーのか。行ってみたいけどよ」


 そのまま帰ってくんな。

 ブラックホールに飛び込んだらスパゲッティ化現象で原子レベルまで引き延ばされるけどね。


「なぁ、どうしてもダメか? なんなら俺が女装してもいいぞ」


「気持ち悪い!」


 どこをどう捻ったらそんな答えが出てくるんだ。


「頼むよゆきちゃあ~ん」


 うわぁ……。今すげー鳥肌立ってるよ。


「わたしの名前を気安く呼ぶと、死にますよ?」


「おまえって死神かなんかか?」


「もし死神なら真っ先に先輩の名前をノートに書いてます」


「心臓麻痺確定!」


 タイトルを言わなかった点は褒めてやる。大人の世界は権利関係にうるさいからな。


「病死が嫌なら事故死しかなくなりますけど」


「死を前提に話をしないで? 俺は生きてお前と幸せな老後を送りてーんだ」


 その若さでもう老後の事を考えてるのか。意外と堅実なんだな。年金はちゃんと払えよ。


「なぁ、恋人が照れくさいんなら友達からでいいからよ。友達だったらお互いの家へ遊びに行ったりもするだろ?」


 照れくさいという発想はどこから出てきた。脳みそお花畑な人は悩みがなさそうで羨ましいなぁ。


「残念ですが友達の受付は先月で終了しました」


「まさかの期間限定! 時期が分かってたら行列に並んででも友達になったのに!」


 いちいちオーバーリアクションだからからかうのが楽しくなってきた。

 こんな愉快な人ともう二度と会えないと思うとほんの少しだけわずかに微細ながら残念な気持ちもあるけど、これにずっと付きまとわれるのもなぁ。


「先輩とわたしは知り合いの親戚のおじさんのお嫁さんのお兄さんの関係より近しくなることはありませんから諦めてください」


「それってただの他人だよね。それ以上近づけないとか絶望的じゃねーか」


 だから何度も言ってるのに。


「おーゆき! こんなとこで何やってんだ? こっちへ見回りに行ったきり帰ってこないって言うから迎えに来たぞ」


 いいタイミングで助け船がやってきた! 家族が来たらさすがにこの粘着テープもはがれるだろ。


「げ! 姉御!」


 ん? 今、姉御って言ったか? 誰のことだ?


「なんだ富樫じゃねーか。こんなとこで何やってんだ」


「ウソ、会長って姉御の妹だったのか……」


「弟だよ! ぶん投げるぞ!」


 自然に間違えてるところが無性に腹立つけど、今はもっと大切なことがある。


「より姉、この人の事知ってるの? それに姉御って……」


「あー。なんだまぁ。若気の至りって言うか腋毛の左って言うかだな。……まぁ昔の話だ。はっはっは」


 なんだ腋毛の左って。何があるんだ。


「おめー知らねーのか? 姉御って言ったらこの界隈では有名人なんだぞ」


 どこの界隈だよ。初めて聞いたわ。今更新しい設定を増やすなよ。


「え、より姉が一時期荒れてたのは知ってるけど、そんなにブイブイいわせてたの?」


「表現が古いな。ブイブイて。いやなんだ、昔コイツのアニキとひと悶着あってな。それ以来なんだか懐かれちまってんだよ」


 何だコイツら。兄弟揃ってうちの家族に粘着してんのか。


「で、ゆきはこいつと付き合ってんのか?」


「より姉、冗談でも怒るよ。わたしにだって選ぶ権利くらいあるっての」


「だよなぁ。いくらなんでもこれはないよな。趣味が悪すぎる」


「あのーそういうことは本人がいないところで言ってくれません?」


「バカか。本人のいないところで言ったらただの陰口じゃねーか。文句があるなら正々堂々と言えってんだ」


 正々堂々がいいのかは別にして、陰口が良くないというのはより姉が正しい。


「まぁどちらにしろお前みたいなやつにゆきはやれねーな。アニキともどもパラレルワールドに期待だな」


「時空転移しないと望みがないってこと!? うぅ、こんな形で初恋が破れるとは……」


 初恋は思い出として心の中に取っておいてください。出来れば忘れて欲しいけど。


「それよりゆき、お前もうすぐステージじゃないのか?」


「あ! もうそんな時間? 無駄な時間を過ごしちゃったよ。それじゃ、行くね」


 走り去るわたし。後に残されたのはその姉と傷心ボーイ。


「無駄な時間だってよ。一ミリも望みがねーな」


「それ以上追い打ちをかけんでください……」

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