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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第六章

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ケイローンとスレイプ

 ケイローンの声は大きくはないが、不思議と議会場の奥まで響くようだった。

 周囲のざわめきも落ち着いていく。


「聖女を救いたいという気持ちは理解できる。たとえ――それが、ほとんど叶わぬ願いであろうともな」


 共感してくれているのは分かる。だが、その言葉は重かった。それでも俺は口を開いた。

 

「最後まで諦めたくはない。頼む、原理の大図書館(リベル・アルケイオン)に行かせて欲しい」


 しかしケイローンは、申し訳なさそうに目を伏せた。


「残念ながら、この森では、私一人の裁量で物事を決めることは許されておらぬ」


 しかし顔を上げると、声の調子がわずかに変わった。


「だが――これは私個人の見解として述べるぞ。アースガルド元首リバティ殿の目的は明確だ。滞在を許可してもよいのではないかと、私は考える」


 ケイローンの言葉に数名が小さく頷いた。

 だが、表情を固くする者もまた多くいた。


「大魔王の言葉を、そのまま信じてよいのか」

「聖女を救うというのも、入るための方便ではないのか」

「仮に――原理の大図書館(リベル・アルケイオン)が破壊されたらどうする? 貴重な蔵書は、二度と戻らぬ」


 懸念が重なり、議論はまた激化していく。収まる気配がない。

 そもそも俺に破壊する意図があるなら、ここで許可など求めずに、直接大図書館に踏み込んでいるだろう……そう言いかけて、口を閉じた。言ったところで話がよりこじれるだけだ。


「ウォッホン。埒があかぬな。同じ議論は一昨日にもしたはずだ」


 一際大きな咳払いの後、場を締める声が響いた。


「おおスレイプ。そなたはどう思うぞ?」


 ケイローンは助けを求めるように、その男に問いかけた。


 スレイプと呼ばれた男――黒い髪に黒い衣。深く刻まれた眉間の皺と鋭い視線は、いかにも気難しそうな気配を滲ませる。


「皆が恐れているものは明らか」


 スレイプの声は低く、よく響く。


「それは、大魔王の破壊の力。それが、原理の大図書館(リベル・アルケイオン)に被害を出すことを恐れている。もっとも、大魔王が本気を出せば、大図書館どころか、この森ごと消し飛ばせるというのに……だ」


 スレイプは鋭い視線を俺に向けた。

 俺は怯まずにはっきりと答えた。


「俺は決して破壊なんてしない。俺の職業は魔道具師。壊すより、作る方が得意だ」


 その言葉に、再びざわめきが広がる。


「魔道具師の……大魔王だと?」

「だが、アースガルドの魔道具は確かに評判だぞ」

「魔道具師が大魔王になどなれようか……」


 ざわめきを断つように、スレイプが大きな咳払いを一つ。


「ウォッホン。つまり、元首殿の言葉も、魔道具師という職業も、未だ信用に値せず、という現状である」


 スレイプは冷たく言い切り、議会場の中央の広間に向けて、ゆっくりと歩き出した。


「ならば、それを確かめればいい」


 広間の中心には、古い構造物が据えられている。ただの飾りではなさそうだ。

 スレイプは、それを指した。


「これは古の魔道具。魔道具師なら、これが何か分かるはずだ」


 石でできた筐体には、かすれた彫刻が刻まれている。


「この魔道具は既に壊れている。少なくとも千年は稼働していない。一体これが何であったか、正確に知る者はこの森にもほとんどおらぬだろう。その危険性により、あえて失わせた、と考えることもできるがな」


 スレイプの言うとおり、その魔道具は相当古いものだった。俺がよく知る魔道具とは、作り方も異なっている。


「さあ、この魔道具が何か、答えられるかな?」


 午人たちの視線が俺に集まっていた。

 俺は今、試されている。

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