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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第六章

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賢人たちの会議

 午人たちの議会場――その内部は、想像以上に広かった。

 中央の広間を囲むように、円形の席が幾重にも連なっている。段差に沿って配置されたその席には、午人たちが間を開けずに座っていた。見渡す限り、ざっと五百はいる。

 議論は活発に行われていた。誰かが口を開けば、間を置かず別の声が重なる。


「仮に大魔王を受け入れるとするなら、まずその責任者を決めねばならん。大魔王が何か問題を起こした際に責任を負う者だな」


「では受け入れないとする場合はどうなる? 拒絶された魔王によって被害が出た場合、その責任は誰が負う?」


「待て。大魔王はアースガルドの元首でもある。大国との関係悪化の責任も考慮すべきだ」


「では、その責任の所在をどう決める?」


「責任者を選定する責任者を決めなければなるまいな」


「その役を誰が担うのだ?」


「ではそれを任命する特別委員会を設置するのはどうだろうか」


「委員の選出は?」


「それはなかなか難しい議題だ。明日決めるのはどうだろう」


 ――話は何一つ進んでいなかった。

 賢人の森。そう呼ばれる場所で、こんな無意味な会議が行われているのか。


「では本日の議論はここまでとする。最後に発言はあるか」


 会議が締められそうになったところで、


「悪いが、一言いいか」


 俺は声を張った。

 ざわめきが止まり、視線が一斉に上を向く。

 俺は天井から中央へ降り立った。


「何者であるか?」


「俺は、リバティ・クロキ・フリーダム。アースガルドの元首だ」


(くだん)の……大魔王か」


 場はどよめき、空気が張り詰めた。


「なぜここに? まだ滞在許可は出ておらん。この街を歩くことは認められていないはずだ」


 午人の一人が声を張り上げた。


「ああ。だから歩かずに、飛行して来た」


「……詭弁だな」


「いや、俺は街を歩いてはいけない、としか言われてないからな」


 ここはもう言い切るしかない。


「規則違反に該当するかどうか、議論が必要だ」


「早速、特別委員会を設けよう!」


「いや、そこじゃないだろ」


 議論がまたあらぬ方向に行こうとしている。


「頼む」


 俺は頭を下げた。


「俺たちはどうしても原理の大図書館(リベル・アルケイオン)に入りたい。ムスペルの巨神に関する情報が必要なんだ。聖女を救うために……時間が、ないんだ」


 回りくどいことをしている余裕はない。俺は本題をそのままぶつけた。


「確かに、原理の大図書館(リベル・アルケイオン)の知は共有されるべきものだ」


「だが、大魔王を受け入れてよいのか」


「一国の元首であることも事実だ」


「大魔王など信用できん。そもそも、正しき志を持つ者が魔王になるのか? 聖王や神を目指すものではないのか」


 様々な意見が飛び交う。

 ちなみに俺が魔王になったのは、追い込まれた末の選択だった――そんな言い訳を並べる気はないが。


「静まりなさい」


 低く、よく通る声が中央から響いた。

 ざわめきが一瞬で収まる。


 そこにいたのは、ひときわ年長の午人だった。歳を重ねた証の真っ白な髪と髭、そして毛並み。穏やかそうに見えるが、場の空気を支配するだけの影響力がある。


「……ケイローン」


 誰かが小さく名を呼んだ。


「仮にも一国の元首に対し、礼を欠く発言は慎むべきぞ」


 場を見渡し、諭すように言う。

 彼はゆっくりと前へ進み、俺に向き直った。


「申し訳ない、アースガルド元首リバティ殿。見苦しいところをお見せした」


 そう言って、静かに頭を下げた。

 この男が、賢人の森の長老、ケイローンか。


「そして――」


 顔を上げ、言葉を続ける。


「ムスペルの巨神を抑えるため、聖女がその身を捧げることになったという話――その話は、すでにこちらにも届いているぞ」

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