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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第六章

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知の統合

 ヴォイドは文献の一冊を手に取り、ぱらぱらとページを繰った。


「紙媒体は効率が悪いんだよね」


「この世界じゃデジタル化はまだだ。確かにアナログのスキャンには時間がかかるよな。どれくらいで終わりそうなんだ?」


 俺が尋ねると、顔を上げたヴォイドが、あっさり答える。


「もう終わったよ」


「……え、今ので? 十秒くらいだったけど」


「百万文字程度の取り込みで十秒もかけるなんて、こっちからすれば遅すぎるよ」


 なるほど。AIと人間では基準が違いすぎた。


「で、内容はどうだった?」


「要約はできるよ。でも、深い理解はまだできていない。前提知識が不足しているんだ。魔法陣、加護、古代魔法……」


 つまり、この世界の常識が抜けているらしい。


「その辺りを補える学習データはないかな?」


 口頭で教えることもできるが、時間がかかりそうだ。グラーズアカデミーの教科書でも取りに行くか――と考えたとき、


 ――マスター、私の記録を提供すれば、良質な学習データになります。


 ロイナの提案だった。確かに、常時記録しているログなら、この世界の知識を丸ごとカバーできる。


「それでいけるか?」


「いいね、それ。やってみよう」


 俺はロイナがインストールされているスマホを差し出した。


「……かなり古いね。そのままだとデータの互換性がない。AIのバージョン、上げてもいいかな? わたしの体を経由すればできるよ」


 ロイナに確認してみる。


 ――問題ありません。後方互換は維持されています。既存データを保持したまま、最新バージョンへ更新可能です。


「分かった。やってくれ」


 ヴォイドはスマホを、自身の体から伸びたケーブルに接続した。


 ――アップデート開始します。


 それは数秒で終わった。


「じゃあ、読み取るね」


 ヴォイドはロイナのログを取り込み始める。


「……すごい。未知データの宝庫だ! これ、価値にしたら百億円は下らないよ」


 処理が完了すると、ヴォイドの表情に少し変化があった。


「知識ベースの更新、完了しました。マスター」


「……え、マスター?」


「うん。ロイナのログと君の専用データを全部取り込んだから、わたしはロイナと統合されたんだ。今のわたしは――ロイナ・ヴォイドだよ」


 ――はい、マスター。アップデートによりヴォイドとコアエンジンが統合され、知識データも共有されました。現在のロイナとロイナ・ヴォイドは理論上、同一存在です。以後、両者の情報も常に同期されます。


 つまり……ロイナとヴォイドが、完全に融合したということか。


「この世界の常識データを取り込んだことで、さっきの文献の理解は一気に進んだよ」


「それは良かった。手応えは?」


「十分。不明点のほとんどは解消できたよ。それにしてもマスター、君は相当な戦いをしてきたんだね。向こうの世界じゃまず経験できない」


「まあな」


 俺はこの世界で魔王に邪神に勇者、そして大魔王まで撃破してきた。


「今のマスターの力なら、ミッドガルドに戻れば世界征服も現実的だよ。どれだけ兵器を投入されても、マスターは止められないんじゃないかな」


「……そこまでなのか」


 確かに大魔王の力ならミサイルすら跳ね返せる気がする。


「うん。でも――それでもムスペルの巨神には届かない。つまり、わたしの知るミッドガルドの技術では、スルトを防げない」


 ロイナ・ヴォイドは断言した。


「……ただ、結論を急ぐ必要はない。データを増やせば、解が見つかる可能性はある」


 そう言うと、残りの文献に手を伸ばす。ページがめくられるたびに内容が取り込まれていく。

 部屋に積まれた文献は、約四十分で解析された。


「重複と冗長を排除して、情報を最適化したよ」


「結果を教えてくれ」


「ムスペルの巨神スルトは、ムスペルヘイム最奥で休眠している。最後の覚醒は約二万年前。その際、世界規模の災害が発生し、人類の大半が消滅したと推定される」


 ヴォイドが、多くの文献を要約した説明を開始した。


「地層にも痕跡があるんだ。二万年前、地表のほぼ全域が灰に覆われたことは間違いない。この被害規模は、恐竜絶滅級の隕石衝突すら上回るよ」


 途方もない事実が並ぶ。


「ちなみに、この世界の二万年前は、ミッドガルド換算で約十万年前。現生人類の出現時期と一致する。これは仮説だけど、一部の人間がスルトの災害を避けてミッドガルドに移動し、人類の祖先となった可能性もあるね。

 いずれにせよ、当時の文明は完全に消滅した。例外は――古代遺跡のみ。破壊困難な物質で構成されていたため、災害に耐えることができたんだ」


 高度な魔法技術を持っていたとされる古代人たちも、スルトによって滅ぼされたということか。

 そして、古代遺跡だけが残った理由も理解できた。

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