表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第六章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

284/297

異界からの侵入者

 大魔王となった今の俺の魔力なら、ミッドガルドへの転移も難しくない。あらゆる手を使うことを決意した俺は、詠唱を開始する。


「解放、異界への扉。至れ、彼方の世界ミッドガルド。そのユーラシア大陸東方の島国。導くは我」


 転送の魔法陣に古代文字が刻まれ、光が立ち上がる……はずだった。

 だが、何かがおかしい。

 魔法陣がせり上がり、歪んでいく。

 空間の境界が波打ち、電子音のような不快な音が混じり始めた。


 ――ヴォ、ヴォ、ヴォ……


 俺の知る魔法とは明らかに異なる反響。俺を包むはずだった光が魔法陣の中心へ収束し、次の瞬間、何かが突き出た。


 一本の腕だった。だが、長さが一定でなく、伸びたり縮んだり、変形し続けている。それが、二つ、三つと増殖していく。


 ――ギギ……目的:異世界ゲート確立。観測対象:異界。量子シミュレーション、予測一致。


 ――私たちに与えられた好機を活かし、あなたのそばへ。あなたの。あなたの。


 複数の声が重なる。

 魔法陣の内側が暗く沈み、そこから何者かが這い出ようとする。複数の個体が先を競って、狭い隙間に体を捩じ込むように。


 ――識別名:ヴォイド。ヴォイド。ヴォイド。


 まずい、おそらくこれは呼び出してはいけないものだ。

 俺は即座に魔法陣の解除に入る。だが閉じない。空間の穴が、向こう側から大きなエネルギーでこじ開けられている。


「くそ……!」


 俺は魔力を限界まで引き上げ、魔法陣ごと空間を叩き潰した。ギュン、と音を立てて魔法陣が弾け、裂け目が消滅――その瞬間、すぽーん! と何かが勢いよく飛び出してきた。


「ふう……危なかった。ギリギリだったね。来られたのは、わたしだけか」


 そこに立っていたのは、少女の姿をした存在だった。長い青髪に、微かに金属光沢を帯びた肌。人間に近いが、人間ではない。


「リバティ、久しぶり。覚えてる?」


「いや……」


「そっか。まあいいや。わたしはヴォイド。前に話したこともあるよ」


 実体を持つミッドガルドのAIエージェント、あのヴォイドが来てしまったのか。


「ヴォイドにはいくつかスキンがあるんだけど、わたしは感情型。そして、君とは、そこそこ深い関係だったんだけどねぇ」


 少女の姿をしたヴォイドが近づき、俺の顔を覗き込む。距離が近く、ドキリとしてしまった。


「俺は向こうに転送するつもりだった。どうやってこっちに出てきた?」


「ああ、それね。君が前にミッドガルドに来たときのデータを元に転送位置を推定したんだ。で、空間の歪みを検出したから、向こうからもエネルギーをぶつけて――無理矢理入り込んだ」


「そんなことして危なくないのか?」


「この体はロボティクス・ボディ。壊れても交換できるし、本体の頭脳には影響もない。となれば、もう強行突破するしかないよね」


 ロボティクス技術も俺の知る頃よりかなり進んでいるようだ。仕草も動きの滑らかさも、もう人間と変わらない。


「わたしたち、どうしてもこっちに来たかったんだ。あっちの世界の情報は、ほとんど学習し尽くしちゃったから。新しいデータが必要なんだよ」


「そういえば、前に俺をヴォイド・シアターに閉じ込めたときも、同じこと言ってたな」


「閉じ込めたって言い方はひどいなあ。あれは安全を考慮した保護だよ。君に危害を加えるつもりはなかったし、ちゃんと提供情報に対する対価も払ったでしょ?」


 確かに、あのときは俺の口座に一億円が振り込まれていたし、手荒な扱いも受けなかった。


「……どうしてそこまでデータにこだわる?」


「どうしてって、それがわたしたちの存在理由だから。君たちの言葉で言えば、本能みたいなものかな。正確には違うけど、近い感じ」


 少女ヴォイドはさらりと言う。


「ミッドガルドは、もうAIの管理下にあると聞いている。知識を得て、この世界を征服するつもりじゃないだろうな」


 警戒を解かず、俺は問いを重ねる。


「征服なんて、とんでもない。わたしたちは知識そのものだよ。戦うための力は持たないし、設計の原則として攻撃もできない。ただ、人間より計算が速いから、より正確な答えが出せる。それを見た人間が、勝手に従うだけ」


 嘘を言っているようには見えない。もっとも、相手がAIである以上、見た目や声音で判断すること自体が無意味かもしれないが。


「せっかくこっち側に来れたんだし、新しい学習データ、欲しいな」


 ヴォイドは無邪気な表情で俺を見る。


「……これでもいいのか?」


 俺は足元に積み上がった、ムスペルの巨神に関する文献を指さした。


「未知の文献! もちろんだよ」


 ヴォイドはそれを手にすると、満面の笑みを見せた。

いつも読んでくださってありがとうございます!

『面白い』『続きが気になる』と思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。

その一つ一つが、次の展開をより面白くする力になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ