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第5章 解放(5)前編

7

 監視塔の監視隊隊長とその他現場を目撃した隊員数名から状況を聞いた我々は、問題の島へ監視塔の係留場からカッターボートで送ってもらった。

 さすがに5キリほどの行程にはそれなりの時間がかかる。

 約1時間ほどというところか。

 このあたりは東の外海へ抜ける手前の海峡部分で、水深はそれほどでもなく、波も高くない。さすがに湖のような穏やかさはないが、幸い今日は風もなく海も荒れていなかった。

 

 一行は問題の島へ難なく到達でき、近くの岩場に船をつけ、監視隊の漕ぎ手の人員にはここで待機してもらい、帰りに備えてもらうことにした。

 問題場所は、船のついたところからまっすぐ北へ1キリほど森を進んだところだということだった。


 ルシアスを先頭に、ゼーデ、私、アリアーデ、ケイティ、そしてしんがりにレイノルドの隊列で森の中へ入ってゆく。

 10分ほど進んだところで一旦隊列と装備の点検をすることにした。


 戦闘経験のないケイティはアリアーデから離れないように、しんがりのレイノルドは後方をケアして、帰路の確認を怠らないように、前列の3人は中央ルシアス、右にゼーデ、左に私の隊列で横並びで進むことになった。

 この先は魔素の感知に集中して、異常個所がないかを確認しつつ進むということで意思統一し、3-2-1の逆三角の隊形でゆっくりと前進を開始する。


 左右の森の木陰に注意しつつ進むが、魔素の流れも安定しており、とくに木々や小動物のものと思われるもの以外は感じられない。

 さらに10分ほど進んだあたりで、前方に魔素が集約している箇所が発見できた。


「ルシアス、前方に異変ありです」

私はそう言って右手のルシアスに注意を促す。


「ああ、俺にも見えている。多分問題の場所だろう」

ルシアスはそう応じつつ少し歩く速度を落とした。


「あの周辺に、ほかに異常個所がないか探ってくれ、アリアーデ」

ルシアスがアリアーデに声をかけると、すぐ後ろのアリアーデが集中を増す。


「問題の箇所から先100メルほどに魔巣の兆候があるわ」

アリアーデが魔巣を発見したのだ。


「やはり、魔巣か」

ルシアスは一旦前進を中断して、今一度隊列の確認をする。


「さて、魔巣については前に話した通りだ。内部にコアがありそれを破壊すれば魔巣は消滅する。ただ、内部にどのような敵がいるかは大体の大きさを目安にわかるが、確かな情報はない」


 ましてや、今回は「火」を扱う者がいる可能性がある、隊列は最前列にレイノルド、その後ろ2列目に右から私、アリアーデ、ルシアス。いつもは最後尾にいるアリアーデが1列繰り上がる形だ。そして最後尾、左にゼーデ、右にケイティということで決まった。

 もちろんケイティは戦闘要員ではない。監視塔に置いてくるという選択肢もあったのだが、それではいつまでたっても戦闘経験は詰めない。いつかは戦場に出なければならないのだ。

 ただ、その点はある程度見越しているところはある。手がないわけではないのだ。

アリアーデの魔法により、後方に盾を張る、つまり、結界壁を生み出すことができるので、基本的には前面の敵に対応できれば、ケイティの3列目まで敵の攻撃が届くことはないと思える。

 もし仮に突破された場合のゼーデだ。この竜人の戦闘力について私たちは知らないのだが、アリアーデの言葉を鵜呑みにする限り、魔法も剣の腕も超一流という事らしい。


 問題の箇所までパーティは前進してきた。

 たしかに周囲3メルほどが焼け焦げている。しかし特にそれ以上の変化は見受けられない。


「これは、魔法の仕業だな……」

ゼーデが珍しく口を開いた。

「この周囲だけが一瞬にして燃え上がり、ほかに燃え広がることなく沈火している。魔素をひとところに集中させて一気に発火させた証だろう。そんなことができるのは魔法以外にあり得ない」


「やはり、敵に魔法を扱うやつがいるとみて間違いなさそうだな」

ルシアスはそう言って、さらに目的の場所へと前進を開始した。


 そのまま100メルほど進むと、目的のものを発見した。

 空中にぽっかりと浮かぶ黒い穴は、木々の茂みの中に隠れていた。魔素を感知できるものでなければ、その存在に気づかないだろう。

 

「大きさはそれほどでもないから、小鬼クラスだろうな……。よし、このままの隊列で行くぞ。中に入って扉を開けたらすぐに前列は散開、アリアーデは後方で結界壁を展開してケイティを護ってくれ」

ルシアスが手筈を指示する。

「ケイティ、君はこれが初陣だ。まずは見たものを恐れるな。形は違えど相手も生き物であることには違いない。生き物なら殺せる。そうして君のできることに集中するんだ。今、君にできるのは、戦闘中に集中力を切らさず、周囲の状況を把握することだ。後方から戦場の状況を観測して、状況把握につとめるんだ」


 ケイティは不安そうではあるが、固く決意したまなざしでルシアスを見て、小さくうなずいた。


「では、入るぞ」

そういってルシアスが入っていく。そしてそのあとに次々と続く。


 ケイティは一瞬ためらったが、ゼーデがケイティに、大丈夫だと声をかけると、アリアーデの後を追って魔巣の門をくぐった。

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