第4章 邂逅(9)前編
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会談にて今後の要点はまとまった。あとは今後の進捗次第ということになった。
ガルシア王は、ゼーデを辺境の王国の王子であり、シルヴェリア王国を視察に来たということでしばらく王城に居室を与えられ、国中を視察して回るという名目とすることにした。
ついで、ケイティの拠点であるが……、
「それについては、わたくしが預かります。ケイティは聖堂巫女ですので私の後輩です。アナスタシア様の弟子ということは私の姉妹弟子でもありますので」
と、イレーナが申し出てくれたため、城下のイレーナの屋敷にて保護されることとなった。
とは言え、二人ともルシアス一行としばらくは行動を共にするため、これはあくまでも、王都に戻ってきたときの仮宿という意味でしかない。
二人とも特に警備のものをつけられるわけでもなく、好きな時にルシアスと共に行動してよいということでまとまった。
「ルト、すまんな。いろいろと面倒をかけることになる」
ルシアスがやや砕けて、ガルシア王に謝辞を述べた。
「なあに、かまわんさ。それよりこちらこそいつも、お前を矢面に立たせてしまって申し訳なく思っている。出来ることは何でもするつもりだから、遠慮なくいってくれ」
そういってルシアスの肩をポンポンと叩いた。
その後、まずは仮宿の支度をということになり、それぞれの拠点に戻り今夜は休むということになった。
一日の休息の後、明後日に再集合の上、今後の予定を立てることで決定し、今夜は解散することになった。
王城でゼーデとケイティと別れた後、私たちはいつもの場所で夕飯をとることにした。もちろん、レッド・ジュース・ダイニングだ。
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私たちはいつもの通り、ほかの客たちとは少し離れたテーブルに4人で腰かけて食事をとっていた。
「ルシアス、どうして僕の名前を伏せたのですか? 何か問題でも?」
私は会談の時から気になっていたことを、こらえきれずに切り出した。
「ん? ああ、あれな。実は前々からお前の母親、メイファのことを探してほしいと依頼されていたんだが、あまり気乗りしなくてな。本気で探すつもりはなかったんだ。ところが出会ってしまった。それで今の今まで、まだ全く消息は不明だと言い続けてるんだよ」
と、ルシアスが言った。
国王が母のことを前々から探していた?
とても気になる話だが、ルシアスもそれ以上話そうとしないのでさすがに根掘り葉掘り聞くわけもいかず、そこまでになってしまった。
「しかしあれですね、魔素の封印って結構あるもんなんですかね? アルもケイティも封印されてるんでしょ? 封印って自然になるものなんですかぃ?」
レイノルドが唐突に質問した。
いやいや、それはないだろう。私とケイティはおそらく何者かに封印されているのだ。でも、それがなぜなのか、誰の手によってなされたものなのか、皆目見当がつかない。
アリアーデが口ごもりながら話し出した。
「それはないと思うわね。アルの封印もケイティの封印も、間違いなく何者かによる仕業であることには違いないわ」
でもそれが誰なのか、同一人物なのか違うのか、何の目的があるのか、どれもこれも謎が多すぎて考えても答えは出ないと思うの、だから今は考えない方がいいわね、と続けた。
「ただ、封印自体は私の手に負えるものだから、解呪自体は問題なく行えるのよ。でもね、問題は『器』、つまり本人たちの体が解放の負荷に耐えられるかなのよね。それで、念のためしっかりと魔法の訓練、正しくは、魔素を制御する訓練をしてから解呪したいのよ」
解呪した時に魔素を制御できなかった場合、急激な魔素の放出によって身体に多大な負荷がかかり、命の危険があるかもしれないということだ。
「そうだな。わからないことを考えても対処のしようもないことだしな。わかってることをやっていくしかない。ところで、アリアーデ、あのケイティという娘の方はどんな感じなんだ?」
ルシアスが聞く。
「正直、なんとも言えないわね。ちょっとわからないとしか言えないわ。でも、そもそも、魔素量が少なかったり、成長速度が遅かったりするものに封印なんて施す理由がないのよ。だから、何かしらの理由があるのは間違いないわ。でも、それがどうしてかはわからない。アルの時は見ただけでわかるほどに魔素の成熟が見て取れたけど、あの子のはなんとも微妙なのよね」
と、アリアーデも不審に思っている様子だ。
「いずれにしても、魔素の制御を身につけなければ、このままだときついわね」
食事を終えたあと、ルシアスとアリアーデは屋敷へ、私は自分の部屋へと向かった。
明日は一日、しばらくやっていなかった部屋の掃除と久しぶりに湯につかりたい気分だなと考えながら、ゆっくり帰路についた。




