被験体番号012(pelmanism)
pelmanism=神経衰弱
『期待して待ってるよ』
私は落ちた。
鳥かごの底に穴が空いて、そこから落ちた。
期待してた...
初めてあった、自分と対等に話してくれる相手に...
友達になれると、期待してた...
私は下唇を強く噛み締めた。
昔からの癖、納得行かない時はこんな風に唇の皮を剥ぐ。
わすれてた。
私は...
人間じゃないんだ。
ここに居候が2匹住み着いて3日ほどか。
何かしようと率先してくれるのはありがたいが、どれもこれも俺が指先1つ動かせば何とかなる事ばかりだから、正直してもらう事はほとんどない。
まあ1人の時よりは何かと退屈しなくなったが、コイツら本当に外に出れるのか?
片方は武器を取られてて、もう片方はアホ。
今更になって疑心が湧いてくる。
《おい、ユーフィ》
「へ、な、なんでしょうか」
《お前らはこれからどうやってこの世界を出るつもりなんだ?》
そもそもの話、これが決まってないのなら話にならない。
「ぼ、僕は...モルさんに付いて行くだけ...なんで...」
コイツは1人じゃ何も出来ないんだな。
《そういえばモルのヤツ、朝外に出てから戻って来ないな。》
「武器のありかを探してる...みたいですよ...」
《この区画にはないぞ》
殺戮兵器の区画は武器を奪わない。
ユーフィみたいに、武器が体から生えてるヤツはもちろんだが、自分の身を守る為だけに、この区画は武器の所持を許されている。
なにせ殺戮兵器の区画だ、先日みたいな巨人なんかから身を守るには生身じゃ難しい。
まあ、それでも死んだヤツは少なくないけど。
「今は、武器が何処に保管されてるのかを探してるみたいです。」
《この辺りに真面に会話を交わせるヤツが居るとは思えないがなぁ》
ユーフィがこっちをガン見して来た。
まあ初めて会った時でも思いだしてるんだろ。
モルもそのつどゲームでもして、情報を引っ張り出すなんて面倒臭いことしてんるんだろうか。
そんな情報を持ってるヤツが居るとは思えないが...
「AaaAAAaaaAAAAAAaaaaaaaAAA!!」
突如、断末魔が聞こえる。
「え!?なに!?兵器!!??」
ユーフィがあわあわするもんだから糸で縛った。
《落ち着け、これはミノタウロスだ》
しかし悲鳴が妙だ...
いつもの雄叫びじゃなく、断末魔だった。
何かと交戦でもしたか?
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
マーメイドの悲鳴、マーメイドの殺戮兵器は俺と合わせて3人だけ。
二人とも大人しいヤツだ。
暴走なんてほとんど無かった、むしろ暴走を止めに入る側だ。
これも悲鳴...いったい何があってる...
《...おい、ユーフィ》
「こ、これは...いったい...何が...」
《これは、もしかしてだが...》
ありえないとは思うが、今考えられる可能性としては...
《モルがやってるんじゃないか?》
「...え?」
《外に出た、人に声をかけて回ってる...それらを考えると、モルしか考えられないが...》
「そ、そんなはずない!!そもそもモルさんは武器も何も持ってないのに!!」
《武器を見てないんだろ?万が一、ここで見つけられたら...アイツにもそれなりに力があったはずだ。》
「そ、そんな...モルさん...が...?」
外からは絶えず、断末魔や悲鳴が聞こえる。
どうやら無差別のようだ。
《この騒ぎがもしアイツだったら、責任は俺にもかかるじゃねぇか...》
非常にめんどくさい。
まあ問題がこの区画で起こった事なら、そんなに大事にはならないだろうが...
一応確認する必要がありそうだな。
《ユーフィ、見に行くぞ》
「え...?二ーファさんも...?」
《めんどくさいがな》
水槽の縁に手を付く。
《かなり久しぶりの外だ》
指紋が...指紋が足りなくて...
スマホが反応しない!!!




