「再会、最後の詩」第三節
「一人で何ができる?」
まっすぐ大和を見た。
緊迫感が増していく。
「人は見た目の寄らずと言いますよ?」
ほぼ同時に床を蹴った。
激しい火花が散る。
息が詰まる攻防戦だった。
長期戦になれば楓の体力が持たない。
――ならば、懐に入る。
どちらかといえば、近距離専門である。体が小柄で跳躍力があるからこそできる技だった。姿勢を低くして飛び込むチャンスを伺う。
だが、それは吹き飛ばされてしまった。足に力を入れて遠くに吹き飛ばされないために耐えた。
一瞬、楓の姿が消えた。
たったの数秒の間だった。
ただ、息を潜めて足音を殺していただけだ。気配をなくして「無」になっただけだった。
「僕はここですよ?」
大和の耳元で囁く。
その声は優美なものだった。
毒牙にかかったのである。
ブラッディ・ルージュが大和の体を貫いていく。電気系統が分断される感触に手が痺れる。武器を形成される前に、一気に横に引き裂いた。
「チェックメイト」
凛とした声が響いた。
大和から覇気が消えていく。
引いていく。
あっという間に支配者が変わってしまった。
支配者が変わっただけで、淀んでいた空気がここまで浄化されていくものなのか。
奇麗になる物なのか。
肌で感じていた。
「私は負けたのか?」
「素直に負けを認めてください。最後に聞きたいことがあります」
「何だ?」
なぜ、人との共存を望まなかったのか。
助けてを求めなかったのか。
別の方法も見えていたかもしれない。戦争にはならなかったかもしれない。
――また、故障しちゃった。
――役に立たないわね。
――修理代も高いし、破棄しろよ。
――そうね。
――明日、破棄の手続きをしておくわ。
「古くなったから捨てる。使えなくなったら覇気に回される。この気持ちには、人間には分からないだろう?」
「ええ――そうかもしれませんね」
「私も聞きたい。この戦争を終わらそうとした理由が聞きたい」
『必ず帰ってこい』
『待っているわ』
その言葉は楓にとってどれだけ大きかったことか。
戦いの最中には支えになっていた。
「僕には待ってくれている人がいる。隣にいてくれる人がいる。あなたはそれを望まなかった」
「お前は生きる選択をしたわけだ。レールに敷かれたおもしろくない人生だな」
「これから、おもしろくしてみせます」
「せいぜい、もがいてみろよ」
「かっこ悪くても僕なりにもがいてみせます」
「確かに甘いのかもしれません。ただ、僕は人が人を支える世界を見てみたい。それだけです」
「はっ……そんな世界は幻想でしかない。私が壊して見せる」
「何度でも築き上げてみせます」
「もし、生まれ変われるのなら、次は成功させてみせる」
「僕が何度でも止めてみせます」
打破してみせる。
破ってみせる。
大和の好き勝手にはさせない。
「勝てるつもりならやってみろ」
「そのつもりでいます」
やるべき仕事は残っている。
大和の崩壊を見ることなく立ち上がった。




