表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/20

「衝撃の事実、残酷な詞」第三節

「楓君を傷づけたわね?」

「長谷副班長。聞いていたのか?」


「ええ。聞いていました」


 付き合いが長い蓮でさえ笑顔が怖かった。


「二人とも言葉が足りませんね、今すぐ追いかけてください」

「しかし――本部を抜けるわけには」


「私たちなら大丈夫です」


 部下たちも各自の仕事をしていた。どうすれば、楓たちに負担をかけずに済むか、案を考えている者もいる。作戦を見直している様子も見て取れた。できることをやっている。ここの任せても大丈夫との空気が流れていた。


「いってきます」

「いってらっしゃい」


 蓮は楓を捜すために本部を出た。不意に歩いていた足をとめた。ここに何かしらの手がかりがある。直感がそう告げていた。ベンチ下に見覚えのある携帯端末が落ちている。


 楓の携帯端末だった。


 ――この公園にいたのは間違いない。


 携帯端末を取り出すと、赤い点が点滅しながら、移動をしている。楓がおとりになって、アンドロイドの本部に誘導してくれている。赤い点がある場所で止まった。そこが、アンドロイドの本拠地がある地下施設である。複雑な場所にあって、蓮たちでさえアンドロイドの本拠地を終えていなかった。


 思わず溜息をつく。


『綺麗事だけで何ができますか? 何が守れますか?』


 楓の静かな怒りを思い出す。普段、感情を露わにしない楓との衝突だった。プライドが高く不器用な弟である。

 

 すれ違ってしまっていた。

 

 まだ、修復ができないほど関係が崩壊したわけではない。

 

 ここから、家族の絆を結び直そうではないか。


 戦争が終結すればいくらでも会話をする機会はある。まずは、アンドロイドとの戦争に勝利をする。


 それが、先決だった。

 連の携帯端末が震える。


『はい』

<まだ、桐原副班長は見つかりませんか?>


『桐原副班長の携帯端末は私が持っている。アンドロイドの本拠地が分かった。今すぐ、そちらに送る』


傍にいる情報部隊が分析を、開始している。仕事も早く自慢の部下でもあった。


<S地区のデパート廃墟の駐車場ですね。まさか、あの子がおとりに?>

『あいつも無理をするよな。私も後ほど合流する。それまで、持ちこたえてくれ』


 携帯端末を切った。


 太陽の光に反射して輝く物を見つけた。家族写真以外の他にも楓が大切にしている鍵でもあった。


 ――この箱の鍵であっているよな?


 懐から箱を取り出した。


 本部の武器庫にひっそりと端に、置かれている物である。ブラッディ・ルージュを見つけたのは本当に偶然だった。引き寄せられるみたいに、その箱を手に取ったのである。


 楓が鍵を開けないのは、家族を失った過去を思い出してしまうからだろうか。


 鍵を開ける。


 錆びついた音がして箱が開く。一枚の手紙が同封されていた。


 かなりの達筆な文字だった。


 弥生と楓へ

 この件、ブラッディ・ルージュを弥生か楓に託す。

 戦うための武器を作っておいて、傲慢かもしれない。


 自己満足かもしれない。

 笑い合える日が来る。


 そんな日が来ると信じている。

 本来なら、あなたたちの成長を見たかった。 


 家族としての時間を取りたかった。

 けれど、簿記を務める武器職人として、アンドロイドに狙われるだろうと予想はしていた。


 自分勝手な親でごめん。

 これだけは言わせてほしい。


 胸に刻んでほしい。

 私たちはいつも楓と弥生の隣にいる。

 

 二人は私たちの宝物よ。

 同時に希望の光となって、照らし出す(ステラ)になってほしい。


 いつか、また、会える日が来る時まで。

 その手を握りしめる時が来るまで。


 どうか、元気で。


            沢田孝則・朱音


 泣きながら書いたみたいだった。手紙には涙の形跡が残っている。蓮がブラッディ・ルージュを手に取ると長剣へと変化した。


 軽く振ってみると意外と軽かった。これなら、パワーよりも、スピードを重視する楓も使いやすいだろう。朱音と孝則の武器職人としてのプライドが垣間見える。

 

 厳しくても愛されていたのだろう。家族としての一つの形があった。

 

 理想的でもあった。

 蓮も手本にしたかった。


 ――安心してください。

 ――あなたたちの意思は私たちが引き継ぎます


 ――見たかった平和の道を、この手が作ってみせます。


 ふ、と息を吐き出す。


 楓に手紙とブラッディ・ルージュを渡したい。箱にブラッディ・ルージュを収める。


 ――奴らの好きにはさせない。

 ――思惑通りにはさせない。


 ――止めてみせる。


 ――悲しみの連鎖を断ち切ってみせる。

 

 太陽の下で誓った。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ