運命を決めろ! ラッキーミミック!
ミミック、それは勇者を欺くために生まれてきた魔物。
伝説によると、五十六代目の魔王の「勇者ってすっごい宝箱にがっつくよね。それなら宝箱型の魔物を作ったら勇者がホイホイ引っかかるんじゃないの?」という単純な思いつきによりミミックは作られたという。流石はヒルダのご先祖様だ。
そして、ミミックは悪ふざけが大好きな五十六代目魔王のもと即死魔法を種族で会得し、勇者を震え上がらせる魔物になった。
……ここで、一つ考えていただきたい。ミミックは元々宝箱である。当然、ミミックの中にはお宝があり、それを目当てに勇者はミミックを開く。
それはすなわち、ミミックたちの戦闘の合図となる。それは自身の生命の危機であり、避けるべき状況だ。
故に、勇者たちがミミックに引っかからないよう祈るように、ミミックもまた勇者が来ないように祈りながらひたすらに待ち、勇者との戦闘は即死魔法が当たるように祈りながら戦う。
つまり……一番運がいいミミックがこの魔王城で生き残れるというわけだ。
「さてと、諸君。今年も大抽選会がやってきた」
ヒルダが目の前に集まる城中のミミックたちに告げる。
ミミック大抽選会、それはミミックたちの中身を決めるミミック達にとって一年で何よりも重要な行事。
運に身を任せ、運と共に生きるミミックの中身を決めるのもまた運なのだ。
ジャラジャラと鳴き声を発するミミック達に、ヒルダは毎年恒例の説明をする。
「まずは毎年恒例の説明だ。新米ミミックは心して聞くように。ミミック達には今からこの目の前にある『中身』のガラポンを回してもらう。この中には番号が球が入っており、その番号に対応した景品がそれぞれのミミックの一年の仕事道具となる」
ヒルダの合図と同時に、ミルダがひな壇にかかった幕を勢いよく引く。
そこには魔王城で散って言った勇者が残していった数々の武器や防具、消費アイテムなどが陳列していた。
「今年は勇者が豊作であり、なおかつレヴィやカーラ、シェリルといった有能な人員が入ったため、例年よりもかなり精査された内容となっている。中身をとられないよう十分に注意せよ」
ヒルダの言葉に、ミミック達が震える。
今年は勇者たちが宝箱にがっつくよう、かなり強い武器をひな壇に並べている。
特にヤバいのはレヴィとシェリルが属性付与し、一流の鍛冶師が鍛えた炎氷双属性の槍。その名も「エルゼルピア」だ。ひな壇の頂点に君臨する最高傑作である。
まぁ、これもここ最近で魔王城の戦力が大幅強化されたための判断だ。多少強い武器を与えても大丈夫だろう。
「そして、残念ながらドンケツ賞は今年もヒノキの棒。大切に扱え」
『ジャララララッ!!』
そして、このガラポンで一番運が悪かった奴は安心と信頼のヒノキの棒が贈られる。ミミック達にとっては一番の大当たりだ。
実を言うと、勇者たちが使う魔法の中には宝箱の中身にあるものの価値を知覚する魔法があり、自身が持つ中身の価値が高ければ高いほど勇者に狙われやすくなる。
その点を考えるとヒノキの棒は勇者除けとして最高のお守りなのだ。
「それでは皆さん、順番にガラポンを回してください」
『ジャラー!』
ミルダの合図でミミック達が一列に並ぶ、
まずは一人目のミミックがガラポンに手をかけた。
「……おっ、13番。十三番は……フェニックスの尾だな」
「ジャラ……」
1番ミミックが露骨に嫌な声を出す。
初手からランクの高い中身を出すなんて不運だな。前回シカの皮を当てたツケが回ってきたのだろう。
「さぁ、1番ミミック、自分の持ち場に戻れ」
すごすごと肩を落として部屋を出ていく1番ミミック。その背中は2番以降のミミック達を恐怖させた。
「続いて2番ミミック、前へ」
「ジャラ」
2番ミミックが震えながらガラポンの取っ手を回した。
「57番。57番は……残念枠、最高品質泥団子だ」
「ジャララララ!」
その瞬間、2番ミミックが歓喜の舞を踊りだす。
投げるための消費アイテム、泥団子はもちろん勇者には無用の長物だ。(ちなみに俺はイタズラ道具としてバリバリに使っている。知ってるか? 泥団子があれば勇者の死因を泥団子の直撃によるショック死にできるんだぜ?)
『ジャラララララ!』
「ジャラ、ジャラララ! ジャラジャラ!」
「ハイハイ、泥団子の自慢は他所でやろうな。用件が済んだら自分の持ち場に行け」
いつまでも泥団子を撫で続けるミミックを部屋から追い出し、ため息をつく。
やっていることが幼稚園児のソレだ。
その後もガラポンを回し続けるミミック達を見ながら、俺とヒルダは暇をつぶす。
「なんかこれを見てると『ああ、この季節が来たなぁ』って感じがするな」
「ええそうね。……それにしても、私のご先祖様ってみんな奇人よね。初代は言わずもがな、六代目はこの城を改造するし……。私もいつかはそんな奇人たちの列に並べられるかもしれないのかしら? やだわー」
「もちろん載るだろうな。『歴代で一番威厳がなかった魔王』として」
「ぶん殴るわよ?」
「それかもしくは『初代から続くコキュートスとの因縁を絶った魔王』だな。コキュートスを使役して無力化したのはカーラの手柄だが、カーラを北に送るよう采配をしたのはヒルダだ。その功績はお前のものになるだろう」
「むぅ、なんか釈然としないわね。どうせ肩書がつけられるのなら自分の手で達成した肩書がいいわ。それこそ『勇者と魔王のしきたりを終わらせた魔王』とかね」
「はぁ? お前それマジで言ってるのか?バカじゃねぇの?」
「本気で言ってるわけないじゃない。バカじゃないの?」
大丈夫だ、良くも悪くもいつものヒルダだ……!
真顔で否定するヒルダを見て胸をなでおろす。モンゴリアンとかカムリとかの一部の例外はともかく、勇者が魔族と仲良くできるわけないだろ。
悪即斬の三文字も覚えられず即斬をモットーとする奴らだからな。
「少なくとも、魔王大陸に住む勇者はグレイだけで充分よ。この大陸に勇者がはびこっているのを考えるだけで虫唾が走る」
「まったくだ」
そんなこんなで会話を終わらせ、最後のミミックのガラポンに意識を向ける。
と、言っても死の宣告に近いのだが。
「はい、おめでとうございます。なんかとてもすごい槍ですよ」
「……」
残り物には福があるというが、本当に福があるんだなぁ(白目)。
最期のミミックはミルダから差し出されたエルゼルピアを何も言わずに受け取る。
おめでとう、お前がナンバーワンだ。
「なんか知らないけど……頑張ってね。応援しているわ」
「ジャラ……」
上司からのねぎらいに死んだオーラを漂わせて、ミミックは自分の持ち場に戻った。
俺も応援しているぞ。来年はきっとハズレ枠が当たるだろう。
「今年も波乱の展開だったわねー」
「そうだな。最後に目玉枠が残るなんて運命操作かそれらの類だろ。まったく、未来は読めねぇものだな」
俺とヒルダは短く今年の抽選会総括を述べ、抽選会の後片付けに入る。
────────と
「まだやってるかしらッ!?」
「お、どうしたカーラ」
ドアが勢いよく開き、長い髪がぼさぼさになったカーラが息絶え絶えで現れる。
その手にはシェリルがぶら下がっており、よほどカーラに振り回されたのか目を回していた。
カーラはヒルダを見るなり、満身創痍のシェリルを突き出す。
「この子が作った槍、今すぐ回収してください!」
「ど、どうしたのよいきなり……」
「それはこのシェリルの口から言います。シェリル、自分がしたことを正直に言いなさい」
「ハイ、ゴシュジンサマ」
シェリルはいやいやながら棒読みのセリフを言った後、意地悪い顔で犬歯をむき出しにする。
「貴様らが作るよう命令した槍に渾身の呪いをかけた。装備された瞬間、半径五メートル以内の人間を全て凍らせるようにな」
「「えっ」」
その月、エルゼルピアを手にした勇者パーティが軒並み凍死する事案が多数報告され、あのミミックは勇者キルレートに置いてヒルダを抜くという快挙を成し遂げた。
ほんと、未来とは読めないものである。
読んでいただきありがとうございます!
もし気に入っていただけたら下にある☆☆☆☆☆を埋めてくれると作者としては非常にテンションが上がります。
ついでに投稿モチベも上がり、作品がより良いものになるかも知れません。作者は素直な子なのです。
気が向いたらでいいです。ぜひ評価の方を




