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魔王が勇者を拉致った結果  作者: デンダイアキヒロ
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MOFUTI- 7 ~下水路防衛戦線~

「……来たね」


 閉じた目をすっと開け、現実を直視する。

 今、下水路には魔王を打ち取らんとする勇者たちが場内の出口を求めて迫ってきている。

 それを迎え撃つは大量のアンデッド……と、申し訳ない程度の私の炎分身。

 本体の私たちは拠点であるあの空き地で各々のできることをしている。


 嫌だよぉ、視界が共有されてるから地獄絵図が頭に投影されるよぉ。勇者たちが私の炎を通常の炎と勘違いしていくせいで私の牽制に突っ込んだ勇者が燃やされながらのたうち回ってるよぉ……。


 悲しいことに現代技術で作られた火耐性装備なんて私の炎の前では無意味なのんだよね。

 ……いや、生粋の魔王陣営みたいなことを言っているけど本当なんだからね。私の炎は勇者に向けられるように作られていないからね。


「やるなレヴィ。貴様の炎が着実に勇者の数を削っているぞ」

「ああ、あああああ……」


 モフちぃの言葉が心に刺さる。

 キルレートで言ったら、確かにモフちぃといい勝負をしていた、図らずも。


 ああ、私、同郷の家族や友達になんていえばいいんだろう……。


 ────と


「ッ……」

「どうしたんだい? モフちぃ」

「覚醒勇者のアンデッドが消えた。浄化されたようだな」

「うっそ……」


 モフちぃのアンデッドが浄化されたということは、敵側に僧侶がいるということである。

 アンデッドにとって僧侶は天敵、一番に排除すべき敵だ。


 ……はぁ、私がやるしかない、か。


「わかった。私の炎分身を向かわせるよ」

「ああ、恩に着る」


 息を吸い、炎分身に意識を同化させる。

 溶けるように思考が揺らぎ、視点が変わった。




「相変わらずひどい惨状だ……」


 ゆらゆらと赤くたぎる体を進めながら、私はモフちぃのアンデッドを消した僧侶を探す。


「レヴィ、そこを右に行ったところだ」

「オッケー」


 一応、本体の体と聴覚は共有しているのでモフちぃの指示は通じる。なかなか便利な仕様だ。


 モフちぃに言われた通り、血塗られた壁を照らして先へ進む。


「イヒヒヒヒ。皆さん、一体どんな気持ちで天国にいるんですかねぇ? 幸せになってくれているといいですねぇ」


 薄気味悪い声が聞こえ、私は歩みを止める。

 声からして若い女……それこそ少女と言っても差し支えないぐらいの声だ。


 気配を悟られないように壁に背を当て耳を澄ます。


「人は皆平等救われる。救われなくちゃならない。どれだけ足掻こうと、執着しようと、利用しようと、利用されようと、結局はパァなんですよ。ですから、私がすべてを見届けてあげるんです。たった一人で救われるんじゃ、寂しいじゃないですか」


 その言葉に、私は背筋が凍る。

 おおよそ、人間が口にするようなものじゃなかった。


「……あなたに言っているんですよ? そこの人」

「っ……」

「イヒヒヒヒ、もしかしてバレていないとでも思っていたんですか? あなた、愛おしいほど明るいですからねぇ、すぐにバレますよ」


 声をかけられ、心臓が跳ね上がる。

 炎分身だから実体なんてないはずなのに、胸が締め付けられるように痛かった。


 そうか……炎分身だから周りを意図せずに照らしてしまうのか。盲点だった。


「せめて話す時ぐらいは相手の目を見て話しましょうよ。それが礼儀ってものでしょう?」

「あ、ああ……」


 バレてしまってはしょうがない、と私は勇気を出してその少女の前に出る。

 ────そして絶句した。


「ッ……!」

「嗚呼、とっても愛おしい、とても眩しい。……嫉妬してしまうくらいに」


 その僧侶は勇者のしゃれこうべを恍惚とした笑みを浮かべて撫でていた。

 碧色の目はくすみ、純白だったであろうシスター服は赤く染まっている。


「イヒヒヒヒ、可愛いでしょう? どんな人間だって、中身はこの見わけもつかない頭蓋骨なんです。これぞ神の意思、人類皆平等の証だとは思いませんか?」

「……それは、君が殺したんだね。アンデッドが殺したものじゃない」

「ええ、死にそうだったので。先に救ってあげました。私の善行によって。イヒヒヒヒ」


 僧侶はそう言って虚ろな目を私に向ける。


 この僧侶……狂っている。

 理性が崩壊したふるまいに背筋が凍る。


「どうです? あなたも救われてみますか?」

「……なんで、そんなことをするんだい? 仲間を殺して、君はどうしてそんな笑っていられるんだい?」

「イヒヒヒ、面白いことを聞きますねぇ。私は逆にその先入観が滑稽に見えます。あたかも仲間が死んだら笑わないということが正解だと確信しているようで。では逆に聞きますが、なぜ人が死んだら笑ったらいけないんでしょうか? 不謹慎だから? じゃあそれが不謹慎だと誰が決めた?」

「一緒にいたら、そんなことは決して思わないはずだ。君は、間違っている」

「決して思わないというのは間違いですねぇ。現に私が思っていますから。……勇者なんて、全員救われれ(死ね)ばいい。そして、魔王側も全員救われれ(死ね)ばいい」


 僧侶の顔がかげる。


「死こそ最高の救済です。喜びも悲しみも怒りも楽しみも、勇者の犯す暴虐非道な罪も魔王の邪悪なる脅威も、全て死という形で償えるのだから」


 次の瞬間、僧侶の持っていたしゃれこうべが光を放つ。

 自然と、私の本能がその光を拒絶した。


「君……何者なんだい?」

「さぁ? 自分でもよくわかりません。……でも、人は私をフランチェスカと呼びます。イヒヒヒ、どうせ私も救われるのだからいらないというのに」

「……じゃあフランチェスカ、その勇者の頭蓋骨を置いてくれ。それは邪悪な魔法だ。ゆっくりと、その魔法の発動をやめるんだ」

「イヒヒヒ、流石魔王の配下。この魔法を知っているのですねぇ」


 僧侶フランチェスカは私の焦る顔を見てニンマリと笑った。


 ……知っているも何も、私はその魔法を一度見たことがある。

 その時の術者は相棒だった。

 私がこの城に来たばかりの時に、相棒はその魔法を使っていた。


「ですが、それは聞けないお願いというものです。神は平等、常に代価を要求します。罪と罰、努力と成功、労働と利益という風に。私はすでに代価を払いました」


 勇者の頭蓋骨が砕け、虚空に吸い込まれる。

 フランチェスカはそんな様子をうっとりとした目をしながら祈りをささげる。


「おお、神よ。かの者に救済を。……そして、魔王たちに救いの機会を」


 ……代償魔法。それがこの魔法の正体だ。

 怨恨が詰まった生き物の一部を使いそれに見合った眷属を召喚する魔法。

 かつて、相棒が勇者の手を使って覚醒勇者の迎撃要員をそろえるときに使った魔法である。


 空間がひび割れ、二つの黒く禍々しい腕が出現した。


「あらら、まだ腕だけでしたか。でも、それで十分でしょうね」


 コキュートスほどではないものの、びりびりと空気が震える。

 勇者の頭蓋骨……。相棒が召喚した時は勇者の手だったが、明らかにそれよりも上位のものが召喚されたのだろう。

 しかも、相棒が召喚したやつでさえ何人かの勇者を屠っていたのだ。これが地上に出現すればパニックは必至だろう。死者も出るかもしれない。


「レヴィ! そこに強力な気を感じたが何が起こった!?」

「ああ、すっごくまずいことになった。私だけで止めれるか怪しい。至急増援を向けて欲しい」

「う、うむ。心得た!」


 モフちぃにそれだけ伝え、私は炎分身に魔力を強く送る。


「聖と炎の両属性ですか。魔王側にその属性を使える人がいたのは予想外でしたねぇ」

「私は勇者側に邪悪な魔法を使う人がいたことにびっくりだけどね。だから、私が浄化する」

「イヒヒヒヒ、なにを勘違いなされているんですかぁ? 浄化されるのはあなたですよぉ?」


 フランチェスカが腕に命令する。


「さぁ、救済しなさい」

「まだ私の相手が君でよかったよ。心置きなく、君を燃やせる」


 せまる腕に対し覚悟を決め、私は深く息を吸う。

 そして────力を解放させた。


「我は神龍レヴィ。邪悪を滅ぼす神の代行者なり」


 神龍は魔王を滅ぼすとともに、神から与えられたもう一つの使命がある。

 それは、フランチェスカのように邪の道に落ちた人間を()()()()()()()()ことだ。

読んでいただきありがとうございます!

もし気に入っていただけたら下にある☆☆☆☆☆を埋めてくれると作者としては非常にテンションが上がります。

ついでに投稿モチベも上がり、作品がより良いものになるかも知れません。作者は素直な子なのです。

気が向いたらでいいです。ぜひ評価の方を

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