表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王が勇者を拉致った結果  作者: デンダイアキヒロ
56/163

MOFUTI- 3 ~考えよ、まずはそこから~

 はぁ……、思わずため息が出る。


 全てはあの時スコップを落としたからだ。何が「これで今日もいい一日が過ごせるぞ!」だ、バカバカしい。


「足を動かせレヴィ。一刻も早く策を練らないと勇者がこの城に乗り込んでくるぞ」

「分かっているよ」


 私の腕の中で、猫のぬいぐるみがわしゃわしゃと動く。

 勿論、何かの手品でも何でもなく、モフちぃが一時的な依り代としているものだ。


 幽霊は基本的に自身が死んだところからは動けない。

 それはモフちぃも例外ではなく、私はまず初めに依り代をとりに行くよう言われたのだ。

 だから、私は持ってきた────ミルダから修理するように頼まれて預かっていた猫のぬいぐるみ、通称『ミルクちゃん』を。

 ミルダに見つかったら間違いなく殺される。


「あんまり動かないでよ。隠密に済ませたいんでしょ」

「そうは言ってもだな……」

「これでも急いでいる方なんだよ」


 早歩きを続けつつ、私はとある場所に向かう。


「……で、レヴィ。我らは今どこに向かっているのだ?」

「この城で一番頭のいい人のところ。……よし、着いた」


 ドアノブに手をかけ、部屋の中に入る。

 そこには……


「……あら、あなたが来るなんて珍しいわね」

「すみません。急な入用で……」


 星空が煌めく蔵書室にて、一人の魔女が物珍しそうな顔をする。


 カーラは少し驚いたあとに、咳払いをして執筆作業の手を止めた。


「あら、ごめんなさい。少し失礼だったわね。お構いなく使っていいわよ。ここの管理人を任されている私だけど、この部屋は私の所有物じゃないから」

「あ、いや……私はカーラさんに用があって来たんです」

「ん……? 私?」


 私の言葉にカーラは自分のことを指差す。

 いかにも「私にできることなんてあったかしら?」とでも言いたげな顔だ。


 そんあカーラに向かって、私は手を合わせて頭を下げる。


「お願いします! 私に……私に兵法を教えてください!」

「……はぁ?」




 多数を相手する戦いと聞いて、私が真っ先に思いつくのは戦争だ。

 その戦争において、戦略はかなり重要になってくると思う。

 素人目線の浅い感覚だが、素人でもわかるほどの重要性が戦略にはある。


 特に、モフちぃは多数のアンデッドを作り出すことのできる高尚な幽霊だ。私とモフちぃVS勇者多数というのが今の現状。しかし、実際の戦場は私とモフちぃ+アンデッドα体VS勇者多数という構図になる。

 つまり、規模こそ違えど全体的な戦いとしては戦争とそこまで変わらないのだ。


 ということで、私は国の重役で作戦立案にがっつり食い込んでいたカーラに教えを乞うことにした。

 やはり経験者に聞くのが一番だと思うんだよね。


「兵法って言ったって……この魔王大陸は全然平和でしょう? そんなもの学んでどうするのよ……」

「まぁ、そこは相棒の助けになりたいということで……」


 苦笑いをしつつ、私はカーラをなだめる。

 うん、自分でもかなり無理を言ってるのは分かっている。相棒は作戦なんて基本的に無視するタイプだ。人の言うことを聞かない。


「はぁ……でも、勉強する姿勢は認めるわ。私なんかでよければ、自身の経験則から戦略を教えてあげるわよ」

「ありがとうございます!」

「まずは兵法書から学ぶのが一番だわ。……シェリル。いくつか本を見繕って持ってきて頂戴」

「ハイ、ゴシュジンサマ」


 無機質な声を出して、コキュートスが重たそうな本を本棚から抜き出し、私の前の机に置────


「おっと、手が滑った」

「痛っ!」

「すまんな、赤トカゲ。童女の身では握力が無くて本を落としてしまった。故に本が足をつぶしてしまったが、そこは大人の威厳を見せて許してくれ」


 コキュートスが愉快そうにニタリと笑う。


 絶対わざとだ。廊下ですれ違うたびに足を蹴ってくる奴が言うことを信じろというほうが無茶だ。


 しかしコキュートスの頬に入ったヒビを見て、私は腕に力を入れてぐっと我慢する。

 多分、相棒に一発殴られたのだろう。私が触れれば今にも砕けてしまいそうだ。


「それはしょうがないね……」

「ああ、しょうがないしょうがない。ハハハ」


 そう笑いながら、コキュートスはその場から立ち去る。


「あ、そこには段差が……」

「あっ」


 ……きれいな散り様だった。破壊って芸術だね。

 派手に転んで一山の氷となったコキュートスに溜飲が下がる。


「もう、何やってるのよこの子は……。レヴィさん、この子のことを無視して勉強をしましょう」

「そ、そうですね」

「まずは……そうね。まずは城や砦での防衛線の話をしましょう。攻めるのは自身の拠点を知り尽くしてからよ」

「は、はい」


 カーラが一冊の本を手に取り、ページをめくる。


「第一に、多くの城にはいくつもの隠し通路があることが多いわ」

「隠し通路……」

「元々は王族や重要人物を逃がすためのものなんだけれど、非常用連絡路や奇襲に使うこともあるわ。これを把握してなくちゃ戦おうにも戦えないわね」


 すごい。流石元魔法師団団長、説得力が違う。

 カーラの知識に、私は思わず感嘆の声を発してしまう。


「そして、これらの隠し通路は王族は滅多に他人に教えないの。なぜだかわかる?」

「え? ……あ、その教えた人が裏切り者かもしれないから」

「そう、大正解よ。隠し通路とは部屋と部屋の間を縫うように作ってあるから、人ひとりが進むのが精いっぱい。そこに敵が現れたら? ……あとはもうわかるわよね」


 カーラが含みの入った笑みを浮かべる。

 へぇ……まずは君主第一。そうなると私たちはまず魔王の命を第一にして行動しないといけないと言うわけだ。至極真っ当なことだね。


「その対策を怠ったせいで戦争に負けた国があるくらいよ、百年ぐらい前の話だけど」

「そうなのか」

「ちなみに、その国の王子の口から隠し通路のルートを喋らせた人物が目の前にいると知ったら驚く?」

「ええっ!?」

「フフフ、安心して。そんなつもりは毛頭ないわ。それに魔王は魔法耐性がこの上なく高いうえに状態異常無効装備をこれでもかと着込んでいるから、私が精神操作を仕掛けても無駄なことよ」


 カーラが私の反応を見てクスクスと笑う。

 し、心臓に悪い……特にこの魔女は私たちを裏切る演技をしたことがあるからなおのこと心臓に悪い。


 跳ね上がった心臓を押えて、深呼吸をする。


「話がそれたわね。とどのつまり、兵法を学ぶよりも先にこの城の構造を知る必要があるっていうこと。次に自身の持っている武器。私の場合は魔法で、あなたの場合は炎、国の場合は強い兵士ね。それらをすべて把握してから、自身にあった作戦を立てていく。これが戦略というものよ」

「自分に合った作戦……か」


 カーラの言葉を聞いて、私はあごに手を当てる。

 カーラの言う通りなら、私たちは自身の持っている武器を知らなすぎる。この状況で勇者と戦うなんて無茶だ。


「いい? レヴィさん。戦争はいつだって命がけよ。だから自分を信じられなくて、生きることを諦めた人から死んでいくの。自分の長所を自覚して、自分に自信を持ちなさい」


 ……これはまず、自分の武器を一度リストアップする必要がありそうだね。

 自分を信じ、モフちぃ(仲間)を信じるために。

読んでいただきありがとうございます!

もし気に入っていただけたら下にある☆☆☆☆☆を埋めてくれると作者としては非常にテンションが上がります。

ついでに投稿モチベも上がり、作品がより良いものになるかも知れません。作者は素直な子なのです。

気が向いたらでいいです。ぜひ評価の方を

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ