表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王が勇者を拉致った結果  作者: デンダイアキヒロ
55/163

MOFUTI- 2 ~深淵に潜む王~

「……ハムスター?」

「いかにも、ハムスターだ」


 私は目の前の存在に唖然とする。

 確かにコユミちゃんが野良の幽霊がいるって言っていたけど……


「恐れおののけぃ!」

「う、うわぁ……」


 なんと言うか……拍子抜け、だ。

 幽霊と言えば普通怖いものだけれど、この幽霊はどう見ても恐れる要素がない。

 体も小さいし、全体的に丸いし。


「フハハ! 驚いたか!」

「あ、うん。ある意味驚いた……」


 あまりにも無防備なので、この隙に燃やしてしまおうかと考えてしまう。

 でも可愛くて、それを躊躇してしまう。


 モフちぃは小さな前歯を私に見せて


「残念だが、貴様の命運はここで終わりだ! この空き地に生えるヒマワリの糧となれぃ!」

「あ、あぁ……」


 なんで色んな種類の花がある中でピンポイントでヒマワリなの……。


 モフちぃの体から妖気が流れ、あたりが暗くなる。

 なんか可哀想だから、一撃ぐらい当たってあげようかな────待って、体のわりに妖気が大きすぎない?


「出でよ! 我が下僕たちよ!」


 私が異変が気づいた瞬間、地面が不自然に盛り上がる。

 そして


「ギャアアアア! 人骨が動いてるぅー!?」


 モフちぃの妖気に当てられ、空き地に眠っていた人の骸がスケルトンとなって動き出した。

 なんで!? なんでハムスターの幽霊がネクロマンサーなの!? そんなのあり!?


「これらは全て我が屠った勇者の骸よ! そして貴様もその一員となるのだ!」

「この勇者たちハムスターに殺されたの!? 死因ハムスターなの!?」


 迫りくるスケルトンを必死でかわしながら、空き地を逃げ回る。

 スケルトンを倒せば早いのだろうが、これらは勇者の骨だ。神龍としてそんな冒涜的なことはできない。

 ……今朝の肥料は別だ。アレは不可抗力だった。


「むむむ……すばしっこいな。魔王の眷属たる我と張り合うとは」

「魔王の眷属って何!? 魔王は眷属なんて作るタイプじゃないでしょ! 『そんなからめ手を使うより、さっさと殴った方が早いわよ』って言うタイプでしょ!」


 私の知る魔王は全てを拳で解決する性格だ。幽霊を操るような頭を使う作業は好まない。

 なのに、この幽霊は自身を『魔王の眷属』と名乗っている。


 それなら過去の魔王の眷属? それもハムスターを眷属に……?

 いやいや、それは眷属というよりまるで()()()みたいじゃ……あ。


「ストップ、話をしようかモフちぃ!」

「ならぬ。我の耳は敵の話を聞くためのものではないからな」

「いいから聞いてくれ! 君は魔王……ヒルダが小さなころに飼っていたペットのハムスターだ! 違うか!?」

「……なぜそれを知っている」


 スケルトンの動きが止まった。どうやら聞く耳を持ってくれたらしい。

 私は額の汗をぬぐい、モフちぃをゆっくり説得する。


「実は私も魔王側……ンン゛ッ、今のは忘れてくれ。私は魔王の知り合いだ。今はグレイ……魔王の近くにいる勇者の相棒をやっている。君もグレイのことは知っているだろう?」

「主の近くにいる勇者……? ……ああ! 『自由研究』と書かれた本を持って現れては我にヒマワリの種をくれたあの人間か!」

「何やってんの相棒……」


 他人のペットで夏の課題を終わらせるな。


 小さい頃も何も変わらない相棒にため息をつきつつ、私はモフちぃに信用されるようフレンドリーに振る舞う。

 大丈夫だ、コユミちゃんの時のように失敗しない。


「だから、敵じゃない。むしろ味方だ。だから信用して。ね?」

「うむ、敵対して悪かった。なにぶん最近は物騒なのでな」


 モフちぃが頭を下げると同時に、スケルトンたちがただの骨に還る。


 流石、人に慣れた動物だね……。疑う余地さえなかったよ。


「私の名前はレヴィ。神龍だ」

「神龍……? それはよくわからないが、よろしく頼むぞ、レヴィ」

「う、うん……」


 自分の種族の知名度が低すぎて泣く。ハムスターが分からないのは当然と言えば当然なのだが。


 私は自己紹介を終え、この下水路の主であるらしいモフちぃに向かって言う。


「ところでモフちぃ。私、この下水路に迷い込んじゃってね。帰り道が分からないんだ。それを教えてもらうとすごく助かるんだけど……」

「確かに我は外に出る方法を知っているのが……。まぁ待て。外に案内してやる代わりに少し手伝ってほしいことがある」

「手伝ってほしいこと?」


 私が首をかしげると、モフちぃは咳払いをして


「時間もない、それは貴様を案内する道中で話そう」

「あ、ああ」


 心なしか、モフちぃが焦っているように見える。なぜだろうか。


 私は空き地の出口に向かって漂い始めたモフちぃの後を追った。




 道中、モフちぃはこんなことを言い始めた。


「レヴィよ。我が主は息災か」

「ああ、うん。元気だよ。ちゃんと魔王をやってる」

「……そうか。では無事に魔王になれたのか。よかったよかった」


 モフちぃは私の言葉に感慨深そうな反応をする。

 ん? 魔王になれた……?


 ……ああ、そうか。モフちぃの生きてた頃はまだ魔王が魔王じゃなかった時なんだ。だからモフちぃは魔王が魔王であることを知らなかったのか。


「我が主は少しも抜けたところがあるのでな……。自身を魔王の眷属と名乗っては見たものの、本当に魔王の眷属である自信を持てずにいたのだ。だが、これで確信を持てた。礼を言う」

「それがどうもご丁寧に。あなたの主様は立派に務めをはたしているよ。まぁ……まだ魔王歴三年弱ぐらいだから、慣れてないところもあると思うけどね」

「そうか……。我も主の晴れ姿を見たかったものだ」


 主を思う侍従、なんと美しいことか……ハムスターだけど。


 そして私は足を、モフちぃは歩を進め、ついに下水路の出口にが見えた。

 多分一時間ぐらい下水路にいたのだろうが、体感では一日以上いたように感じる。


「ありがとうモフちぃ……で、話って何?」

「ああ、それなのだがな……。レヴィ、貴様はこの下水路がどこに通じているか知っているか?」

「え?」

「その反応は知らないようだな」


 知るわけないじゃん。ただでさえ下水路で迷っていた身なんだから。


 私が首を横に振ると、モフちぃはため息をついて答えを言う。


「西の川だ」

「西って……あの滝から流れてるやつ?」

「そうだ」


 その川なら知っている。アニマが燃やし尽くし、相棒が火事場泥棒していたあの滝の先だ。


「それがどうしたんだい?」

「実はそこに大規模な勇者の拠点ができたらしいのだ……いや、規模の拡大速度を見るに二つの拠点が()()したとみたほうがいいだろうか」

「……あ」


 私の頬に、一筋の汗が垂れる。

 ……考えられるのは一つしかない。合併したとするなら、間違いなくアニマが崩壊させた勇者の拠点だ。


「そ、それがどうしたんだい?」

「最近、そこの勇者が下水路から城に侵入しようとしているのでな。我が主との約束により城の守護を任されている我だが、最近の勇者の猛攻に手を焼いている。……そこで、だ」

「へ、へぇ……」


 モフちぃがつぶらな瞳をぐっと近づける。


 うーん、嫌な予感がするなぁ。

 相棒が昔言っていた。「貸し借りを交えた交渉は厄介な結果になる」って。リゼの一件がいい例だ。


 相棒に似て勘が鋭くなってしまったことを呪いつつ、ごくりと唾を飲み込む。


 そんな私に、モフちぃは真剣な声で言った。


「その勇者を根絶やしにするのを手伝ってほしい。主に心労を与えぬよう、できるだけ穏便にな」


 ……相棒、助けてくれないか。

読んでいただきありがとうございます!

もし気に入っていただけたら下にある☆☆☆☆☆を埋めてくれると作者としては非常にテンションが上がります。

ついでに投稿モチベも上がり、作品がより良いものになるかも知れません。作者は素直な子なのです。

気が向いたらでいいです。ぜひ評価の方を

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ