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魔王が勇者を拉致った結果  作者: デンダイアキヒロ
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一年で最も騒がしい日

「あっはははは! 満員御礼! 効果絶大! やっぱり星見祭りに興行を合わせたのは正解だったわね」

「おいヒルダ、星見祭りは国民が一番金銭感覚がイカれる日だろ。やってることが祭り価格で販売してくる出店と同じだぞ」

「そりゃあ国家予算から費用を捻出するのには最適な理由でしょうけれど……」


 人間大陸で最先端の娯楽、『プロレス』見たさに私が建てさせた特設ステージにごった返す国民。一人五千ラピス払っているブルジョワジーな人たちだ。

 ……でもまぁ、今の私とって五千ラピスなんてはした金なのだけれども。


「ついこの前にグレイからお金を借りていた身で何をいいますの。ああ庶民臭い庶民臭い。小物は大きな金額を手に入れるとすぐ調子にのるものですわ」

「ふん、それはグレイに借りた金を返す目途をたててから言いなさい。ちなみに今の私にはたとえグレイが闇金顔負けの利子を要求してきたとしても返すことができるわよ。……あーあ、なんていい景色なのかしら、金が肘の高さまで積みあがるなんて。私の貯金は今過去最高を記録したわ」

「お、おいシルフィーナ。アタシらの魔王様が悲しいことを言ってるぞ。いくら大金とはいえ一国の王がこれ如きの金で満足してるぞ」

「ヒルダさんにふさわしい惨めな姿ですわね。……しかし友達としてフォローして差し上げるなら、全てはお母様であるゲヘナ様のせいだと思いますわ。いまだにヒルダさんの収入は管理されているという話ですから」

「ああ……ゲヘナ様か……。あのお方はある意味誰よりも強いからなぁ……」


 なにやらアニマとシルフィーナがブツブツ言っているが、そんなことは高貴でやんごとなき私には関係ない。きっと嫉妬だわ。


 VIP席で頬杖をつきながら私は今か今かとその時を待つ。

 ……と、私の視線の先にいるモンゴリアンの弟子がポージングをする。

 きたわね……その合図の仕方はどうにかならなかったのかしら。


「じゃ、ちょっと行ってくる」

「お、おう」

「精々失敗しないことですわ」


 二人に一言言って、私は魔王としての公務のために四角のマットが敷かれたステージへと続く花道へと歩く。

 すると会場の照明が消え、観客がざわめいた。


 さぁて……ここは魔王としての登場をしましょうか。

 深呼吸をして、噛まないように用意していたセリフを言う。


「諸君静粛に」


 私の一声で、会場のどよめきが鎮まる。

 一点に集まったスポットライトが私を照らした。


「今日は私の用意した娯楽に足を運んでくれてありがとう。今日は星見祭り、皆が熱く狂う夜。だからみんな、最高に熱く、最高に狂っていってちょうだい」


 花道をゆっくりと歩き、時たま手を振ってくれる子供たちに笑顔を見せながらマットの上に飛び乗る。


「でも、この中にはこう思う人もいると思うわ。『このイベントに乗じて人間が魔族に危害を加えたりしないのか』と。私が人間に騙されていると考える人もいるかもしれない。……そう思う人たちに、私は問いたい。……私がこの場にいる時点で、安心できない要素がある? 私がこの場にいる限り、あなたたちは雨が降ろうが槍が降ろうが勇者たちが襲ってこようが怖がる心配なんてしなくていい。私がすべての不安を消し去ってあげるから。ただあなたたちは、目の前で起こる最高のショーを全力で楽しみなさい。────みんなー、わかったぁー!?」


 私が腕を突き上げるとともに、観客もまた歓声をもって自身の意を示した。

 流石私の国民、なかなかノリがいいじゃない。


「それじゃあ早速始めるわよ! 人間大陸の猛者たちよ! カモンッ!」


 花道の両端から火柱が上がり、場を盛り上げてくれる選手(役者)が歩いてくる。

 私は選手たちに向かってすれ違いざまに言った。


「めいいっぱい盛り上げて頂戴」




「ま……間に合った……!」

「超特急で帰ってきましたものね。でもミルダは元気いっぱいですよ! なんてったって星見祭りですから!」

「あ、相棒……私はもう限界だよ……」


 燦然と輝く城下町が高台から見える。

 それはまるで地上に星を写したかのようだった。


「わざわざごめんなさいね。私のために急いでもらって」

「いいんだよ、このくらい。この祭りはお前の祭りなんだから、本当のことを言ったら主役として締めのスピーチもやってほしいぐらいなんだがな」


 疲弊しきったレヴィをおぶりながら目の前の光景に心を高ぶらせる。

 ちなみに、レヴィがなんで俺におぶられているのかというと今まで完全龍化形態で船を引っ張っていたからだ。

 星見祭りまでに帰ってくるにはこの方法しかなかった。レヴィがいなければ三日は到着が遅れただろう。


「でも帰路のうちの一日はフラッペの説教ですけどね。カーラさんが勝手に大量の温泉を使ったせいで集落がパニックになったって……」


 そう言ってミルダが遠い目をする。


 フラッペのやつ、俺たちがコキュートス退治から帰ってくるなり「……グレイさん? 温泉、何に使ったか教えてぐれるか?」とカーラが置いた転送魔法に必要な転移媒体を持ってブチぎれたのだ。

 媒体を勝手に置いたのはカーラだ、俺たちは知らないと説明したが「連帯責任だべ」と集落の問題解決を倍プッシュされた。

 まぁ……そのあとにくれた霞イチゴはすごく美味しかったけど。


「ふん、下らん。なれ合いなど弱きもののすることだ。暑苦しくてかなわんよ。全員もれなく死ねばいい」

「おいロリ奴隷。お前今の自分の立場が分かってるのか? お前のカーストは俺たちに敗北した時点で圧倒的最底辺になったんだぞ?」

「複数人でかかってきたうえに終始苦戦していたくせに何を言う小童。それに我に凍らされたのはどこの誰だったか? ああ? 我なら恥ずかしすぎて自害するな。だから死ね」

「あだっ!?」


 下卑た笑みを浮かべたコキュートスが俺の脛を執拗に蹴る。

 こいつ、ロリで敗北者の癖にとんでもなく口が悪いのだ。


 生意気なんて比じゃなく、船でも俺たちに「死ね」や「失せろ」などシンプルな暴言を連呼していた。

 実際、船員の何人かが泣かされた。ちなみにレヴィも泣かされた。

 正直、城で飼うのは間違った判断だと思う。


「ご主人様が死ねば我は解放される。その時が来たら真っ先に貴様を殺してやるぞ。その次は魔王だ。幾千年と続いた我の恨み、貴様らごときに」

「コキュートス、少し静かになりなさい」

「はかり知れ────。……────!?────!??」

「フハハハハハ! ざまぁ見やがれこのクソガキ! 一言で発言の権利も奪われてやんの!」

「────! ────!!」


 口を押えながらもごもごとするコキュートスを「ご主人様の言うことが聞けて偉いでちゅねー」とここぞとばかりに煽り倒してやる。

 これが伝説の存在()()()()()とは嘆かわしいなぁ!


「……ふぅ、スッキリした。やはり生物かも怪しいやつは知能レベルも低いな」

「そう言うグレイもなかなか低レベルに思えたけど……。……ん? これはなに?」


 と、風に乗って一枚の紙が飛んできた。

 恐らく、星見祭りでばらまかれたビラだろう。

 俺たちはカーラが掴んだその紙をみんなでのぞき込んだ。


 えーっと、なになに……────




「いけー! 押せー!」

「そこっ! そこっ! ……ああ違う! そこは対空技で迎撃するところでしょうに!」


 私の隣で、アニマとシルフィーナが腕を振り上げて熱狂する。

 ふふん、あなたたちも私の術中にはまったようね。ちなみにその手に持ってるこの会場に内設してある売店で買ってるから私に利益が入ってるわ。


 見たところ、モンゴリアンTシャツを買って観戦している観客もそこそこ増えている。趣味は悪いけど客としては最高よ。


 ……ああ、さらに金が積みあがるなんて。これ以上お金を持ったら私、いったいどうなっちゃうのかしら。


「…………楽しそうだなヒルダ」

「ええ! 最高よ! 見てこの金! 私はついに最高のビジネスを発見……しぃ……」


 聞き覚えのある声に頭が冷えた。

 ……あれー? 私、本当にどうかしちゃったのかしら? 人はお金を持ったら幻聴が聞こえちゃうの?


 しかし、悲しいことに私の幻聴ではなかったようで、アニマとシルフィーナも体をびくりと震わせる。


 ……せーので振り向くわよ。いい? 裏切っちゃだめよあなた達。


 覚悟を決めて一斉に振り返ると、そこには


「「「グレイ……!」」」

「いやー楽しそうで何よりだな。まさか俺が必死こいてコキュートスの相手をしている間に勝手に金儲けをしようとしているとは。恐れ入ったよ」


 グレイが恐怖を感じる笑みを浮かべていた。


 ……いい? あなた達。裏切っちゃ


「「ヒルダ(さん)が全ての元凶ですッ!」」

「ちょっと!?」

「賢明な判断に感謝する」


 やっぱり女の友情は障子紙よりも弱いわね。失念していたわ。


 ……でも、今の私には最強の武器がある。グレイにプロレスのことがバレたところで、別に焦るほどのことではない。


「ぐ、グレイ……交渉しましょう。ここに五万ラピスがあるわ。これで手をうちましょう。いい話だと思うわよ?」


 私が五枚の紙幣をグレイに見せる。

 やっぱり金よ! 金はすべてを解決するわ!


 グレイは黙ったまま私の手から五万ラピスを受け取ると、照明で透かしたりしながら五万ラピスを眺める。

 に、偽札じゃないわよ。大丈夫。


「……どうやら本物らしいな。珍しい」

「そうよ! 正真正銘の五万ラピスだわ!」


 すると、グレイは満足気にうなずき懐に入れた。

 ……勝った! 私の勝ち────


「とりあえず義母さんには報告しておくぜ。五万ラピスは貰っておくがな」


 私はこのド畜生勇者の発言に泣いた。

読んでいただきありがとうございます!

もし気に入っていただけたら下にある☆☆☆☆☆を埋めてくれると作者としては非常にテンションが上がります。

ついでに投稿モチベも上がり、作品がより良いものになるかも知れません。作者は素直な子なのです。

気が向いたらでいいです。ぜひ評価の方を

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