表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王が勇者を拉致った結果  作者: デンダイアキヒロ
34/163

とても素敵な魔法のお薬

「グレイ、これを飲んでみなさい」


 ある日の午前中のこと。

 俺が自室で剣の手入れをしていると、突如ヒルダがコトリと小瓶を俺の前に置いた。

 中には紫色の液体が入っている。


 もちろん、俺がいうべきことはただひとつだ。


「やだ」


 そんな提案は即答で却下だ。こんなもの飲んだらダメに決まっている。むしろ、この状況でこの暗黒物資を飲むやつがどこにいる。


 俺はこのバカなことをのたまうヒルダに小瓶を突き返す。


「このイカれた液体を飲ませようとするなんてもう魔王様も終わりだな」

「違うわよ。これはちょっとした実験。新しい罠のね」

「新しい罠?」


 俺が首をかしげると、ヒルダはにんまりと笑顔を浮かばせる。


「そう。この前ちょっと思い付いてね。それを何とか実現できないかなーって」

「うわ、うさんくせ」

「いいから飲むのよっ!」

「んぐっ!?」


 口の中にビンを突っ込まれ、ドロリとした感触が喉をつたう。

 うえっ、マズっ。泥水に池の水を混ぜて一週間煮詰めたような不味さだ。


「ヒルダ……ゲホッ。なに入れやがった……」

「それを言ったら面白くないでしょ? でもまぁ強いて言うならとっても素敵な魔法のお薬ってところかしらね」

「何を言って………ッ!」


 すると、体が急に暑くなった。

 体から蒸気が吹き出し、意識が朦朧とする。


 ぼやける視界の中、俺が最後に見たのは


「さぁ、夢の一時を」


 ゲスい笑みを浮かべた魔王の姿だった。






「……──棒!」


 どこからか、声が聞こえる。


「──相棒!」


 どこからか、体が揺さぶられる。


「相ぼ──」

「どいてレヴィ。こういう時は一発ぶん殴ったら起きるのよ」


 いっだぁ!?

 頬に猛烈な痛みを感じ、その場を転げまわる。


 俺はすぐさま飛び起きて


「なにすんだヒルダ! 頭おかしいぞ!」

「ふふん、どうやら効き目は現れたようね。レンバル先生さまさまだわ」


 俺の顔を見るや否や、ヒルダは自慢気な顔をし、レヴィが残念な顔をする。


 なんだよお前ら、まるで俺の顔に何かついて……あれ?


 俺は違和感を感じ、自分の顔をペタペタと触る。

 心なしかいつもよりぷにぷにとしていて、コラーゲンたっぷりな気がする。


 ……あと体が重い。

 いや、厳密に言えば普段より体が軽く感じるのだが、具体的に言えば上半身が重い。肩こりが少しある。


 ふと、俺は足下を見てみる……ンンッ!?


「……なぁヒルダ」

「ん? なぁに? 言ってごらんなさい?」


 ……。


「見下ろしても俺の足が爪先しか見えないんだけど?」

「そう。よかったわね。ナイスバディじゃない」


 高く透き通った俺の声に、不敵に笑うヒルダがうなずく。

 ……マジかよ。


「お前ほんとやっていいことと悪いことがあるぞ! 性転換ってやつか!? 俗に言うTSってやつか!?」


 俺の体は完全に女のソレになっていた。

 出るとことが出てしまっており、引っ込むところが引っ込んでしまっている。

 そして、下半身の大切なものが失われ、上半身に余計なものが二つもついていた。


 あまりの衝撃に、華奢で白い手を見て震える。


「バカ野郎ぉおおお!!」

「淑女がそんなに汚い言葉を使わないの。ね、グレ子ちゃん」

「誰がグレ子だ! アホか! 人の尊厳ってものを冒涜してるぞ!」


 鏡に映る自分の姿に嘆き両手で顔を挟む。

 我ながらずいぶんと顔が整っていたのが癪だった。

 きっと母さんもこんな顔だったのだろう。

 こんな展開で知りたくはなかった。


「あ、相棒。大体は話を聞いたけど……相棒って女の子になったら意外とクール系美人なんだね」

「知ってほしくなかったなーその事実。あーあ、ミルダとかに見られたらどうしよう……。ゼッテー笑われる」

「あら、ミルダならそこの床で転がってるわよ。ヨダレをたらしながら」

「ミルダァアア!」


 今まで気づかながったが、ミルダが部屋のすみで燃え尽きていた。

 な……昇天してやがる……!


「ミルダ! 起きろ! 戻ってこい!」

「んぁ………お、お姉様……!」

「お兄様だよ! お前まで俺のトランスフォームに順応してんじゃねぇ!」

「ふぁあ~、誠に尊ふございまふ~……グフッ」


 訳のわからない事を言いながらミルダが気を失う。

 その顔は非常に幸せそうだった。


「どうなってんだヒルダ! これのどこが罠に使う薬なんだよ!」

「名付けて性転換罠! 勇者が性転換したら少なくとも動揺するでしょ? 慣れない体にあたふたする勇者の姿を、私が魔眼で見て楽しめる。……つまり、仕事をしながら勇者の極上の羞恥心が楽しめるって訳よ!」

「魔王だ! こいつとんでもなく極悪だ!」


「フフーン、効果は覿面(てきめん)ね。一応弱体化も効果もあるから、ちゃんとした罠にもなってるのよ」と、ヒルダが胸を張る。


 それで俺を実験台にしたってわけか。非道極まる行いに反吐が出る。


「こんにゃろ!」

「弱体化してるって言ったでしょ? 流石のグレイも、今は大抵の勇者と同じぐらいの戦闘力しかないわ。見て、指先でパンチも止めれる」

「ぐににににに……!」


 普通なら指の一本や二本へし折れているはずの俺の怒りのパンチがヒルダに軽く止められた。

 このまま戦っても勝てないほどの圧倒的な差がある。


 そこまで計算ずくかよヒルダァ……!


「でもまぁ、意外とまともになったわね。町に出れば人の目を引けるかもよ」

「野郎共のナンパなんか受けたくねぇよ……」


 床にうつ伏せになって落ち込む。なまじ胸があるせいで肺がつぶれて息苦しかった。


「ねぇ魔王。相棒はいつもとに戻るの?」

「そうねぇ……レンバル先生の理論上だと一日ぐらいでもとに戻るらしいわ」

「一日もこの体かよ! 嫌だぁ!」

「もともと嫌がらせ目的で作った薬だし、しょうがないわね」


 と、ここでヒルダが「あっ、そうだ」と手をうった。

 魔王様の目が嫌な光を放ち、俺を見る。


「ねぇグレイ。いい話があるのだけれど……」

「ノーセンキュー!」

「ちなみにあんたの拒否権は無いわよ。私の方が強いんだから」


 とっさに逃げようとするが襟首を掴まれた。

 馬鹿力で引き戻され椅子に座らされる。


 ヒルダは涙目の俺に柔和な笑顔で


「グレイ。あなた、魔法にかかってみない?」


 鏡台から化粧箱を取り出す。

 お、お前……まさか……!


 極悪魔王が綿にポンポンと肌色の粉をつける。


「グレイは目を閉じるだけでいいの。そのあと鏡を見ればあら不思議、新しい自分に出会えるわ」

「いやぁあああ!」


 見た目通りの女々しい声を出して絶叫する俺の意志もむなしく、綿が顔に迫る。

 ああ、なんで……なんでこんなことにっ!


「せっかく女の子になったんだから、普通ではできないことを楽しみましょう?」


 柔らかい感触が、頬に触れた。

読んでいただきありがとうございます!

もし気に入っていただけたら下にある☆☆☆☆☆を埋めてくれると作者としては非常にテンションが上がります。

ついでに投稿モチベも上がり、作品がより良いものになるかも知れません。作者は素直な子なのです。

気が向いたらでいいです。ぜひ評価の方を

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ