当たり屋式火事場泥棒
今回からちょっとあとがきをのせます。
不快な方は本当に申し訳ありません。
この場で謝罪します。
……俺だってなろう小説家っぽいことしたいんだよぉ!
その日、滝が燃えた。
「ハッハハハハハ! 風向き良しッ! 日当たり良しッ! 燃えろ燃えろ! ハハハハハ!!」
背後に大きな火炎をたたえながら、アニマが腹を抱えて笑う。
アニマを筆頭とするイフリートは炎を纏うことで真価を発揮する。まず己の炎を周囲に着火させ自分に有利な空間を作り、その上で敵を燃やし尽くすのだ。
この状態になったアニマはほぼ最強と言っていい。
炎そのものを相手にしているようなものだからだ。
勇者たちの反撃も炎で作られたアニマの分身に当たり霧散する。
そんな中、俺たちはというと
「おっ、マナポーションの箱。大漁大漁」
「火事場泥棒じゃないか……」
どさくさ紛れに勇者達のアイテムを物色していた。
グレイ火事場の収穫祭である。
幸い、アニマがすべての勇者の注意を引いてくれているため成功率が高い。この状況を逃す奴はアホだ。
貴重な薬や武器を押収しながら、業火に包まれる拠点中を走り回る。
「相棒は良心が痛まないのかい? 見てよ周りを。勇者やその仲間たちがあのアニマっていう子に燃やされてるんだよ?」
「俺の良心が痛めばあいつらが助かるって言うんなら俺も喜んでそうしてるさ。でも今のアニマは俺でも苦労するほどだ。大抵の勇者はそのまま消し炭になるだろうな。かわいそうに」
「相棒、発言と顔が一致してないよ……」
レヴィが残念な顔をする。
おっと、いけないいけない。人が死んでいるのだ。せめて顔だけでも悲しくしなくちゃ。
熱量で涙さえも蒸発してしまう拠点で、俺がせっせと勇者の遺品集めに奔走していると
「……おい、何やってんだグレイ」
目の前でくすぶっていた火種が揺らめき、アニマの分身が姿を現す。
「何ってアイテム集めだ」
「『アイテム集めだ』じゃねぇよ! アタシが働いている時に何やってんだお前!」
「うっせえな」
「やめろ! アタシの分身にイモを投げるな! そして食べんな! いい具合にホクホクじゃねぇか!」
アニマ焼き芋を食べる俺にアニマがキレる。
お前の生み出す炎って三秒でおいしい焼き芋ができるからすっごく便利なんだよ。ああうめぇ、店に出したら絶対売れるな。
「ったくてめぇはよぉ……、あとレヴィ。お前まったく燃やしてねぇじゃねぇか」
「あ、うん。相棒が寝坊してそれを起こしてたら、もう君に燃やし尽くされちゃってて……」
「はぁ!? そんなの勝負にならねぇじゃねぇか!」
「ごめんね、アニマ」とレヴィが激昂するアニマに苦笑いをする。
……実はこれ、昨日レヴィが「明日の件なんだけど、私、勇者は燃やしたくないから相棒が何とかしてくれないかい?」と特製シュークリーム三つで提案してきた作戦である。
その時は「めんどくせぇ。俺は関係ないぞ」と断ったのだが、やはりほかならぬ相棒の頼み。無下にできなかったので寝坊してやったのだ。
決してレヴィが保管庫に置いたシュークリームをみんなが寝静まった時にこっそり食べようと夜ふかししたから遅れたのではない。
昨日レヴィが緊張で寝付くのが遅くて予想以上に夜更ふかししてしまったからではない。決して。
そんなこととはつゆ知らず、アニマが額に血管を浮かべる。
「グレイ、お前ってやつはぁ……!」
「まぁ、そういうことだ。ドンマイだな!」
「てめっ!」
「よいしょ」
アニマが飛ばしてきた火球で焼き芋を大量生産しつつ、砂を蹴っ飛ばして分身を消火する。
「レヴィ、この場所はもう撤収だ。めぼしいものはない。別の場所に行くぞ」
「あ、相棒? あんな対応をしちゃっていいの?」
「いいのいいの。いつものことだから」
心配する相棒をなだめすかして焼き芋を投げる。
アニマは何もしなくても勝手にキレる女だ。多少油を注いだってそこまで変わらない。
むしろ熱量が増すおかげでポップコーンにも挑戦できる。ある意味メリットだ。
さぁて、戦利品を風呂敷に包んで次の狩場に向かうとしま────
「景気づけだ。逃げ惑うグレイを追いかけまわすのも────『乙なものだな』
「ちょまっ!?」
周りの火が高く上がった瞬間、数十体のアニマの分身が俺たちを囲む。
声が輪唱され、俺が見えているところ以外にも分身がいるのが分かった。
あれー? これ想像以上にピンチじゃねー?
『そこら辺の勇者のように退屈させてくれるなよ?』
「……ごめん、そんな分身の分まで焼き芋はない」
『いるかバカ野郎ぉおお!!』
逃げの一択! ここで逃げねば誰がやる!
「レヴィ! 逃げるぞ! あとマナポやるから火耐性バフよろ!」
「もーなんで相棒はいっつもそんなことを自分からするかなぁ!?」
炎の中に突っ込み、無数に出てくるアニマの分身から逃げる。
こいつホントどこからでも出てくるなぁ! ゴキブリでももうちょっと数が少ないぞ!
『待てってめっ!』
「待っていいのは果報とデートの待ち合わせ場所だけだ! ああったく! なんでアニマはいつもいつも俺につっかかってくんだ!? もしかして俺のことが大好きなのか!? でも残念だったな! 俺はもっと冷静な女がタイプだ!」
『毎回てめぇがアタシの癪に障るのが悪いんだろうが!』
無数の分身が四方八方から俺を燃やし尽くさんと迫る。
大抵の勇者ならここでゲームオーバーだな。運がよくても負けイベ枠だ。
────と
『チィッ、まだザコが生き残ってやがったか』
分身が舌打ちしたかと思うと、一斉にアニマ軍団が消えた。
どうやら、どっかの根性がある勇者がアニマ本体の邪魔をしたらしい。
最近の勇者は腑抜けが多いと聞いていたが、今の時代にもやるときはやるやつがいるんだな。
とにもかくにも、こうして俺たちは助かった。
ひとつ息を吐いて、額の汗をぬぐう。
「もう! 死ぬかと思ったじゃないか!」
「あーはいはい、すまんかったな。あとでアニマはぶん殴っておくから安心しろ。……っと」
ここで、俺は少し気になる小屋を見つけた。
人がいる気配はしないが、鍵がかけてある。
……つまり
「お宝だねぇ!!」
「うわー、相棒がまた変な顔になった」
目を光らせて扉をぶった切る。
躊躇する余裕なんてないねぇ! できればエリクサーが欲しいねぇ!
────しかし、そこにあったのは
「……」
「か、火薬……」
硫黄臭を放つ粉が入った袋の山だった。
……やっちまったねぇ!
と、ちょうどその時
「ぐはぁっ」
小屋の屋根を貫通して勇者が降ってきた。
皮膚がところどころやけどしており、死闘を繰り広げていたのがわかる。
まぁもちろん、この勇者が死闘を繰り広げていたのは
「ザコがアタシの前に立ってんじゃねぇよ。弱いやつは弱いやつらしく灰になれ」
アニマだ。
上空にいるアニマは太陽かと見間違うほどの大きな火炎弾を手の上にかかげて
「お前の葬式には派手過ぎる花火だな」
待て待て待て待て! ここ火薬庫だぞ!?
どうやら、本人はこの小屋の中に大量の爆薬が入っているとは知らないらしい。
下手したらこの拠点……いや、ここら一帯がすべて灰になるかも知れない。
強いやつも弱いやつも関係なく灰燼と化す。
小屋の中で俺が慌てる中、アニマはにやりと笑うとそれを振り下ろす。
ちょ……おまっ……!
火炎弾は勇者と火薬目掛けて放たれて────引火した。
とてつもない爆風が迫り、炎が瞬く間に膨張する。
……あ、死んだ
「『神炎滅却』!」
と、レヴィがアニマに負けないぐらいの炎を爆薬にぶつけた。
何やってんだお前っ!? 死にたいのかッ!?
炎がぶつかり合い、巨大な火柱が小屋を中心として形成される。
俺は恐怖に耐え切れず目をつぶる。まぶたを貫通して光が感じられた。
ああ神様! どうかこのバカな相棒に天罰を……ん?
「……あれ?」
「ふぅ、間に合った」
いつまでたっても死なないので恐る恐る目を開けると、なぜかあんなに激しかった炎が見る影もなく消えていた。
残るのは灰だけである。
俺が不思議そうに首をかしげていると
「ダイナマイト消火だよ」
「ダイナマイト消火?」
「うん。炎をもって炎を制す。爆発で炎ごと火薬をふっとばして火を消したんだよ。間に合うかは厳しかったけどね。とりあえず無事でよかった」
額の汗をぬぐってレヴィが照れくさそうに俺に教える。
へ、へぇ……そんなことができるんだ……。炎って万能。
「な、なんだ今の……」
ふと上空をみると、驚愕の顔をするアニマが俺たちを見下ろしていた。
どうやら、この状況を飲み込めていないらしい。
そりゃそうだ。俺自身もよくわかっていない。
……ん? 待てよ?
さっきは『アニマの攻撃と火薬の爆発力』をレヴィがかき消したんだよな?
つまりアニマの攻撃+火薬の爆発力<レヴィの神炎という構図ができるわけだ。
……あー、俺ちゃんとんでもない事実に気づいてしまったねぇ! もうアニマに言わずにはいられないねぇ!
「見たか! これが俺の相棒の力だ!」
「なっ!?」
俺が指を突き付けて声を張り上げるとアニマが涙目になって驚く。
「今の火柱はお前の攻撃をレヴィが吹き飛ばしたんだよ! つまぁり! お前よりもレヴィの方が火力も上だし技術も上だということだ! な、相棒!」
「えっ……あー、うん。まぁ結果的にそうなるけど……」
「ええっ!?」
俺の言葉をレヴィが肯定する。
ハハッ! 勝負ありだ、この焼き芋製造機イフリートが! てめぇは家に帰ってやかんのお湯でも沸かしてろ!
「このッ……グレイの癖にッ……!」
わなわなと震えるアニマは歯ぎしりした後に恥辱に耐え切れず
「きょ、今日のところは引き分けにしておいてやる! 勇者はアタシの方が多く燃やしたからな! 次会う時はまとめて燃やしてやるから覚えてろよ!」
「てめぇの生ぬるい温風なんかいつでもレヴィが吹き飛ばしてやるよ! フハハハハハ!」
三下みたいなことを言ってその場から逃げ出した。
完ッ全ッ勝ッ利! ハハハハハ!
俺の高笑いは、一面焼け野原になった拠点でそれはそれは高らかに響いた。
「あー、一応勇者が魔王の四天王の一人を負かした状況なんだよね……。私も喜ぶべきなの……かな?」
読んでいただきありがとうございます!
もし気に入っていただけたら下にある☆☆☆☆☆を埋めてくれると作者としては非常にテンションが上がります。
ついでに投稿モチベも上がり、作品がより良いものになるかも知れません。作者は素直な子なのです。
気が向いたらでいいです。ぜひ評価の方を




