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魔王が勇者を拉致った結果  作者: デンダイアキヒロ
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嫌な予感しかしねぇ

 さて、前回俺たちはゲス姫ことリゼに万雷鯨の捕獲を命じられたわけだが、どうも嫌な予感しかしない。


 一人ぐらい死んでも全くおかしくない。否、全体的な戦力としては妥当なところではあるのだが、何の関係もないアクシデントで誰かが死んでしまうような気がする。

 それだけ、この万雷鯨捕獲団は面子(メンツ)が濃ゆいのだ。

 雑草を煮詰めに煮詰めた薬ぐらいに濃ゆいのだ。


 では、このイカれたメンバー達を紹介しよう。イカれ具合に気絶しても知らないのでご了承を。


 エントリーNo.1、レヴィ。


「あ、相棒。私後方支援したいんだけど。この人たちにあんまり関わりたくない」


 とまぁいまだにダダをこねている神龍。部下としてサラマンダー十匹を従えている。


 戦闘力は勇者を軽く一捻りできるくらいには強い。

 一応言っておくが、勇者は普通の人間よりも遥かに強い。ヒルダがアリンコ感覚でプチプチ潰してしているがちゃんと強いのだ。

 俺としてはこの神龍パワーに期待したいところだ──が、リゼに正体がばれるのは避けたい。

 ゆえに、切り札である完全竜化が使えないレヴィにはサラマンダー達を使った情報戦に期待しよう。



 エントリーNo.2 カムリ


「できるよねみんな……うん、今まで切り抜けて来たんだもの。うん」


 現在動物に話しかけて現実逃避しているメルヘン勇者。今回このパーティーのリーダーを勤める。


 カムリの目的は万雷鯨の懐柔、言い方を変えると友達になることだ。

 国王が無理難題を吹っ掛けた理由とは万雷鯨の住み着いている遺跡の調査がしたいかららしい。文献によると凄い物があるのだとかなんとか。

 なので、万雷鯨と友達になって住みかを変えて貰うよう頼むという。


 そんな巨大な万雷鯨に話が通用するのかとも思わなくもなかったのだが、カムリの家に住んでいる動物達を見てみると、これがなかなかランクが高いのだ。

 高ランクモンスター相手でも懐柔できるならワンチャン万雷鯨も友達にできるかもしれない。


 エントリーNo.3 リンゼッタ&ライラ


「さ、ちゃっちゃと捕獲して下さいな。捕獲したらあとは私がやってあげるわ」

「そういうことだ。リンゼッタ様のご期待に応えられないようなら叩き切るぞ」

「ライラ、あなたもいくのよ。何をいってるの」

「ええっ!?」


 全ての元凶、諸悪の根源。

 万雷鯨を捕獲すると言い出し権力と弱みでそれを実行に移させた。


 なぜここにいるかと言うと「この作戦は私の立案よ、私がいなくてどうするの」だそうだ。

 これを翻訳すると「私がこの作戦に関わればそれをちらつかせて万雷鯨の支配権を奪取できるじゃない」になる。どこまでも強欲なやつだ。


 剣もまともに触れない癖に首を突っ込んできたリゼは完全なる足手まとい──かと言われればそうでもなく、このお姫様の付き人であるライラは帝国の中でも指折りの強者らしい(カムリも言っているから多分事実)。

 きっと、何かの役にたってくれるだろう。

 知らんけど。


 エントリーNo.4 モンゴリアン


「フハハハハ! 万雷鯨とは楽しみだな! フハハハハ!」


 これだけは言わせてくれ。俺は全力で止めた。


 人間の大陸に幅広く展開しているジム『筋肉王国(マッスルキングダム)』のオーナーにしてヒルダの天敵。


 そしてなぜかカムリのお友達だった。

 カムリはムキムキに憧れているらしい。世も末だ。


 今回、モンゴリアンは友のピンチとあって半裸で駆けつけた。

 コイツはパワーだけで言えば俺よりも強いからな。味方になったら頼もしい存在だ。


 しかし、モンゴリアンの目的は万雷鯨の『捕食』である。食べるのだ。

 モンゴリアン曰く、鯨肉というのは低脂質の高タンパク質なので筋トレ最強のお供だと言う。

 それが普通の鯨の体積にして三十倍はあろうかという万雷鯨だ。その肉の量は軽くジムにいる弟子(きんにく)達に振る舞えるだろう。

 万雷鯨を食材として見ているのは強すぎる。


 ──という風に、金稼ぎ、上からの圧力、世界征服、食事、の各々の目的がバラバラすぎる世界最強パーティーが誕生したわけだ。

 多分、このまま魔王(ヒルダ)討伐の旅に出かければ魔王様渾身の開幕ジャンピング土下座が見られる。


「皆さん、あそこに見える雲の渦の真下が万雷鯨の住みかです」


 カムリが奥にあるいかにも難関ダンジョンっぽい臭いがする建物を指差す。

 あそこが今から俺達の戦場となるわけだ。下手したらこの遺跡が跡形も無くなるかもしれないので目に焼き付けておこう。


 ──と


『……だ』

「ん?」「えっ」「ムッ?」

『来るのだ。導かれし者よ』


 頭の中に声が響く。

 それはカムリ、モンゴリアンも気づいたらしく、頭を押さえて首をかしげている。


「レヴィ、何か聞こえなかったか? 導かれし者たちとか聞こえなかったか?」

「いいや、なにも。……もしかして何かあったの?」

「あ……いや、なんか脳内に声が……」

「あー、それは託宣だね」


 レヴィが肩に乗るサラマンダーを撫でながらうんうんと頷く。

 託宣? なんだそりゃ。


「勇者にしか聞こえない特別なお告げだよ。託宣は勇者の強さに比例して聞こえやすくなるんだ。相棒は勇者の中でも特別な勇者だからね。ハッキリ聞こえると思うよ」

「へぇ。そんなものがあるのか」

「普通の勇者なら宿命的に何度か聞いたことがあるはずなんだけど相棒は育ちが特殊だもんねぇ……。実を言うと私がいた神域のふもとにある遺跡でも聞こえるんだよ。託宣はそういった勇者に関連する特定の場所で起こるんだ」


 確かに、俺、カムリ、モンゴリアンの三人には聞こえたがレヴィ、リゼ、ライラには聞こえていない様子。

 レヴィの言うとおり、この声は勇者関連のもので間違いないだろう。

 と、なると


「……なんか遺跡に行ったら勇者的イベントが起こったりする?」

「まぁ……そうだね。魔王を倒すための便利アイテムが手に入ったりするんだろうね」

「俺達に?」

「……うん」


 なんということだ。無駄に無駄な物語が紡がれてしまうではないか。

 この魔王を討伐する予定がない三人にそんなものを渡されてもどうすることもできない。

 せいぜい骨董品として売るのが関の山だ。


「あの遺跡はもともと勇者の試練のためのダンジョンだったのかもしれないね。相棒もいい機会だし、勇者っぽいことしてみれば?」

「やだよ。建物に無理やり押し入ってツボを割るとか。レヴィは俺に犯罪をしろって言うのか?」

「違うそうじゃない」


 レヴィが残念な目を俺に向ける。

 俺、なにか間違ったこと言ったか?

「あーもう、なるようになりなよ。私も人のこと言えないし」と言われて、レヴィにため息をつかれた。

 解せぬ。


「んー、まぁ気のせいですか……。そういえばリンゼッタ様、その万雷鯨を地上に下ろさせる作戦というのは……」

「フフン、よく聞いてくれたました」


 カムリが万雷鯨捕獲作戦の立案者リゼに作戦の説明を頼む。

 リゼは鼻を鳴らして誇るように微笑んだ。


「これを使います」

『こ、これはっ……!』


 リゼが取り出した魔道具にモンゴリアン以外のメンバーが息を飲む。


「あなた達でも初めて見るでしょう?『封命の箱(パンドラボックス)』なんて」


 封命の箱(パンドラボックス)。別名『強制生殺与奪権剥奪装置』。

 たとえドラゴンでも生きたまま封印できてしまう使い捨ての超超高額魔道具だ。


「これを使って万雷鯨を地面に引きずり下ろす。相手はドラゴン以上の魔物だけれど、この箱の吸引力はダイソソ国にある永久に変わらないただひとつのアーティファクトに劣りません。きっとできるはずです」


 この作戦にかなり本気になっているリゼ。

 こんなふざけたパーティーに出資できるなんて、呆れを通り越して称賛に値する。


「りりりリンゼッタ様? それは許嫁であるフィル殿下からのプレゼントでは……」

「何よライラ。私の所有物を何に使おうが私の勝手でしょ?」

「い、いえ。それはもっと有意義な場所で使うべきでは……。例えば珍しい動物を捕まえるなどあるではありませんか。捕まえもできない万雷鯨を地上におろすために使うのはもったいなく思います」

「そうねぇ……それならあのフィルとか言うボンクラをこの中にいれて私の操り人形になるまで放置するぐらいしか」

「それだけは! それだけはお止めください!」


 当然のように非人道的行為に手を染めようとするお嬢様。

 もうダメかもしれん。

 ライラを黙らせたリゼは深い深い笑みを浮かべたまま俺達に言う。


「ここまでお膳立てしてあげたのです。できますよ、ねぇ?」


 ……やっぱり、嫌な予感しかしなかった

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