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魔王が勇者を拉致った結果  作者: デンダイアキヒロ
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ゲス姫リンゼッタ

 しめたぁ!

 なんと言う幸運、神様は俺達を見捨ててはいなかった!


「カムリ! 助けてくれ! 俺達は脅されているんだ!」

「えっ!?」


 俺がそう叫ぶとリゼは驚愕の顔で俺を見る。


 その油断を見逃さず、俺はリゼを前に押し出した。


「カムリ! おまえなら信じてくれるよな!? 全てはコイツの責任! 俺達は巻き込まれただけなんだ!」

「ななななにをいっているんですか! カムリ! 聞いてはなりません! この人は勇者ですよ! 貴方も勇者の素行の悪さを知っているでしょう!? きっと私を貶めようとしているのです! 確かに私はこの人達と行動を共にしましたが今回は無実です! 信じてください!」


 俺とリゼがカムリに向かって必死に訴えかける。


 それに対してカムリはじとっとした目でリゼを見た。


「勇者にそれを言いますか……。確かにグレイさんは勇者ですが、そんじょそこらのチンピラ勇者とは違いますよ? 善良です」

「し、知り合い!?」

「ナイスだカムリ! 見直したぜ!」


 ここ最近で一番のガッツポーズを決めた気がする。


 カムリが俺を選んだことにより、万策つきたリゼが膝から崩れ落ちた。


「さあリゼ、観念しな」


 俺は意気消沈のリゼを抱えて、カムリに突き出す。

 これにて一件落着だ。


 リゼの身柄を受け取ったカムリは俺達に頭を下げて


「ご協力感謝します。グレイさんじゃなければ本気で疑ってましたよ。リンゼッタ様はこちらで引き取ります」

「リンゼッタ様?」


 ちょくちょく気になっていたがリンゼッタ様って誰だ?


 俺がそんな趣旨の質問をするとカムリから驚愕の答えが帰ってきた。


「リンゼッタ様は隣の帝国の第二王女様ですよ。他の国と戦争をするので中立国である僕達の国に護衛と共に一旦避難する予定だったのですが、旅の途中で護衛を振り切って行方がわからなかったんです。まあリンゼッタ様の事なのでしぶとく生きているでしょうと思ってはいたんですけど、まさかグレイさん達と一緒にいたとは。お二人が強いのは僕もわかっていますのでリンゼッタ様がお二人に出会ったのも不幸中の幸いってやつですかね」

「リ、リゼってそんなに大物だったのか?」

「小国の王がかしづく程度には」


 や、やべー。既にめっちゃ大物じゃん。


「ヒルダさんと普通に話せる時点でグレイさんも大概なんですよね。魔王とあんな付き合い方できるのは普通にすごいですよ」

「でも魔王って勇者と対をなす存在じゃん」

「なんかそれを聞くと凄く小物感が出ますね」


 カムリが少し残念な顔をすると、リゼ改めリンゼッタが


「散々なことを言ってくれますね、カムリ。私だって自由になりたいのですよ?亡命だからって籠の中の鳥のように屋敷に押し込められる生活なんてまっぴらです」

「リンゼッタ様は戦争中なのですよ? 欲しがりません勝つまではというくらいの意気込みを見せてください」

「……貴方がこの戦争の妨害工作をしていること、お父様に報告しますよ」

「ッ!?」


 リゼの爆弾発言にカムリの顔色が急に悪くなる。

 おまえ、裏でそんなことやってたのか。二つの国に喧嘩を売るとは。


「り、リンゼッタ様? 一体どこでそれを?」

「秘密です。まあ心配せずとも私が自由に出歩くことを黙認してくれるのなら黙っててあげますよ」

「そ、それではリンゼッタ様の護衛の方々になんといえば……」

「護衛の説得なんていくらでもやりようがあります。弱みと金をちらつかせればね。……仕方ないですね。護衛は私が受け持ちますからカムリはエーゼル王を黙らせてきなさい。貴方の信頼ならできないこともないでしょう?」


 カムリはリゼの提案にため息をついて上を向く。

 悪びれもせずに逆に脅すとはなんてやつだ。


「……分かりましたよ。出来なくても文句は言わないでくださいね?」

「できませんじゃありません。やるのです。私が言うのならできます」

「そんな横暴な……」


 なかなかに無茶な要請を無理やり飲まされたカムリは「ローランド君に言えばいけるかな……いや、流石に無理だ」と頭を抱える。


「せいぜい悩むといいです」


 その姿を見てリゼはほくそ笑んでいた。

 この姫様、性格悪すぎる。


「……あ、そうそう。言い忘れていました」


 とカムリはなにか思い出したように言う。


「護衛の方々が姫様が見つかったら直接屋敷に連れていくように言われていたんですよね。嫌でも連行しますよ」

「げっ」


 仕返しとばかりにカムリは逃げようとするリゼの肩を掴む。

 あとは俺達の出る幕は無さそうだ。人間のことは人間達で済ませてくれ。


 俺はレヴィと一緒にそそくさとその場を離れようと────


「ついでに関係者も」

「「えっ」」




「姫様!ご無事でしたか!」

「いや、めっちゃナーバス」

「ッ!? どこか悪くされたのですか!? 医者を! 医者を!」

「今のこの状況にナーバスなのです。暑苦しいので止めなさい」

「ハッ!」


 リゼの命令に女騎士が畏まって背筋を伸ばして動かなくなる。

 なあ、もうほんと帰っていいか? 茶番以外なにものでもないんだが。


「ライラが見苦しいところをお見せしました。わざわざ来てくださったというのに」

「なあリゼ。普通に喋っていいぞ。逆に気持ち悪い」

「無礼者! リンゼッタ様をその名前で呼ぶな!」


 俺がリゼと呼んだことに激昂する女騎士ライラ。

 そんなライラにリゼはため息をついて


「いいのですよライラ。私が許可したのです」

「ですがその呼び名は婚約者であるフィル殿下にも許していらっしゃらないですか!」

「だってキモいじゃないですか。あんな対して能も無いくせに身分だけで生活している男。私は有能な方は好きですが、そうでない方は嫌いです」

「ひ、姫様。その言葉はくれぐれも殿下の前でおっしゃらないように……。フン、良かったな愚民。姫様のご厚意に感謝するがいい」


 女騎士がリゼの後ろで鼻をならす。

 えらく高圧的だなこの女。イラってくるものがある。


 俺達が顔をしかめると、疲れた顔のリゼが宥めるように


「グレイ様、あまりお気を悪くしないでください。ライラは根っからの真面目なんです」

「姫様、こんなやつに頭を下げる必要はありません」


 態度を変えないライラはさげていた小さな袋を俺の前に投げる。

 テーブルに落とされた袋の中からジャラッという音が聞こえた。


 不思議に思ったレヴィが袋を開けて中身を確認すると金色の円盤がぎっしりつまっている。


「金貨十枚だ。これを持ってさっさと去れ」

「マジすか。ありがとうござます」


 速報、一日目にして目標額の六割強を達成。繰り返す、一日で六割強を達成。

 新記録更新だ。


「ライラさんありがとうございます。これで早く地元に帰れそうです」

「それならさっさと姫様の前から消えろ。二度とその顔を見せるな」


 俺は意識に反して上がる口角を隠しながら席を立つ。

 レヴィはそれを残念な視線で見つめていたが、何も言わず俺に続いて席を立った。

 さっさと帰れるしこの場所から離れられるしで一石二鳥だ。


 そのまま意気揚々とドアに手をかけ──


「お二人共お待ちください。お話がございます」


 部屋を後にしようとした俺達をリゼが引き留めた。

 重々しく、かなり本気な声だ。


 リゼ、俺達はこれ以上おまえに関わりたくないんだが。


「もし良かったら、我が国で近衛騎士になっては戴けませんか? 給金は期待している以上の額を出しましょう」


 リゼが真剣な顔で言う。

 ヒルダが一生できないであろう為政者の目だ。


「姫様! こんな奴らを!」


 このとんでもない提案にライラが早速反抗。


 そうだそうだ! もっと言え!

 俺達みたいなどこの誰とも知らない馬の骨を雇うなんて相当なアホだぞ!

 しかも勇者だぜ!? 何をするか分かったもんじゃない!


 俺達の期待をのせてライラが猛反発するが、リゼは物怖じせずにライラを見やる。


「……突然ですがライラ、貴方は魔法の詠唱破棄を知っていますか?」

「なぜ急に……え、ええ。騎士学校の教本に載っていましたから。確か数少ない大魔道師しか使えないものと」


 リゼがそんな突拍子もないことを言う。

 魔法の詠唱破棄はその魔法を熟知していないと行使することができない技術だ。

 種族で魔法適正がある魔族でさえ初級がやっと。

 ヒルダでさえ中級魔法は集中しなかったら失敗するくらいの超絶技巧だ。


 それと俺達になんの関係が……?


「その通りです。……ですが私はレヴィ様が炎魔法を詠唱破棄するのを見ました」


 ふぇ? レヴィが詠唱破棄?


「ゴブリンをまとめて吹き飛ばしたあの威力の詠唱破棄。確実に王宮魔術師を超えています」


 俺の脳内に「お嬢さん! 助太刀しましょうか?」といういきいきとしたレヴィのあの描写が思い浮かぶ。

 ……やっべぇーあれかー。

 レヴィの能力が魔法と勘違いされてるわ。

 だからと言って説明もしにくい。


 レヴィが慌てて言い訳をする。


「あ、あれは私オリジナルの魔法なんですよ!やだなあ詠唱破棄なんて。そんなもの私ができるわけないじゃないですか。アハハ」

「では、その魔法とやらを今ここで見せてください」


 レヴィから冷や汗が垂れる。


 リゼはあれが詠唱破棄だと確信しているようだ。

 ほんとはもっとヤバイやつなのに。


「む、無理ですよ。下準備が必要なんですから。それはまた別の機会に」

「構いませんよ? 時間はいくらでも」


 この提案にレヴィはハッと息を呑む。万事休すといったところだ。


 リゼがしびれを切らして本題に切り込む。


「さっさと白状したらどうですか? 貴女は詠唱破棄が使えるんですよね?」

「……いいや、使えない」

「本当ですか?」

「嘘はない」


 レヴィはしっかりとリゼの目を見て言う。


 ……それを聞くと、リゼは首をかしげた。


「……はて? 本当のことのようですね。私の勘が外れましたか」


 リゼは思ったよりもアッサリと引き下がった。

 反応から見るに、この部屋のどこかに嘘探知機みたいなものがあるのだろう。王族ならそういう貴重な魔道具を持っているはずだ。


 もし違う質問をされていたら俺たちは危なかったかもしれない。


「ですが秘密は隠している。今回は追求しないであげますが、困ったら私のところに来てください。助けてあげますよ。秘密と引き換えに、ね」


 そういってリゼは嫌な笑みを浮かべた。

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