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第9話:ハイ・カジュアルな日常と、空気を読まない勇者(元・同期)の来店

いつもお読みいただきありがとうございます!

第9話は、大成功を収めるアパレル部門の「ハイ・カジュアル」な日常からスタートします。

シオリやシエラ様とのちょっと大人なラブコメ展開(?)の後は……ついに、あの「空気を読まない元・同期」が最悪のタイミングで来店!?

洗練された空間に現れたダサい勇者たちを、マコトはどうあしらうのか。ぜひお楽しみください!



複合型商業施設【THE HUB】が、領主公認の特区として免税の恩恵を受けてから数ヶ月。



2階のアパレル部門は、異世界における「ファッションの常識」を根底から覆す大成功を収めていた。



「いらっしゃいませ! こちらのヴィンテージ・ドラゴンレザーのジャケットは、残り1着となっております!」

シオリの元気な声が響く。



異世界の冒険者や貴族たちは、これまで「いかに派手で、金ピカで、装飾が多いか」を強さや権力の象徴としていた。



しかし、職人ドランと俺が打ち出したコンセプトは真逆だ。



無駄な装飾を削ぎ落とした洗練されたシルエット。


極上の素材だけが持つ、しっとりとした肌触りと機能性。



日常に溶け込みながらも、どこか上品さを漂わせる**【ハイ・カジュアル】**なスタイル。



動きやすく、かつ圧倒的に「お洒落」なこの服は、瞬く間に感度の高い貴族や凄腕の冒険者たちの心を鷲掴みにしたのである。



「先輩! 新作のシャツとスカート、試着してみました!……ど、どうですか?」



更衣室から出てきたシオリが、少し頬を赤らめながらその場でくるりと回った。



上質なリネン生地を使った、シンプルながらも彼女のスタイルの良さを引き立てる完璧なシルエットだ。



「素晴らしいな、シオリ。生地の落ち感といい、縫製の丁寧さといい、我々のブランドがターゲットとする『大人の余裕』を見事に体現している。マネキンとして店頭に立てば、このセットアップの売上は前日比150%増は固いぞ」



俺が完璧な営業スマイルで絶賛すると、シオリはジト目で唇を尖らせた。



「もー! 先輩はいつも数字とブランド価値ばっかり! 私個人の魅力というか、その……女性としての感想はないんですか!?」



「ん? もちろん、顧客エンゲージメントを高める最高の『看板娘』だと思っているぞ」



「褒め言葉が全部ビジネス用語なんですけど!?」



シオリがポカポカと俺の腕を叩いていると、ふわりと甘い香りが鼻腔をくすぐった。



「あらあら、若いっていいわね。でもマコト、大人の女の魅力には敵わないんじゃないかしら?」



いつの間にか背後に立っていたのは、女神シエラだ。



彼女はドランに特注で作らせた、ボディラインを美しく強調するタイトなレザードレスを見事に着こなしていた。


胸元が危ういほどに開いており、女神というより傾国の美女のオーラを放っている。



シエラは俺の耳元に顔を寄せ、色っぽい吐息混じりに囁いた。



「ねえ、マコト。もしこのドレスの代金を『タダ』にしてくれたら……女神の私から、夜の特別個人レッスン(神託)を授けてあげてもいいわよ?」



「ええっ!? ダメですシエラ様! 先輩にハニートラップは効きません!」



シオリが慌てて割って入るが、俺は涼しい顔でシエラの腰に手を回し、引き寄せた。



「おや。女神様ともあろうお方が、ずいぶんと安売り(ディスカウント)をするのですね」



「えっ……」



不意に距離を詰められたシエラが、予想外の反応に一瞬顔を赤らめる。



「あなたの価値は、そんなものでは測れないでしょう。……ドレスは定価でいただきます。ですが、最高のビジネスパートナーであるあなたには、後で俺から『極上のコーヒーと特別な時間』をサービス(還元)させていただきますよ」



「っ……! も、もうっ、本当に食えない男ね、あなたは……!」



シエラが耳まで真っ赤にして顔を背ける。



顧客の承認欲求を満たしつつ、自社の利益(定価)は絶対に守る。これもまた、トップ営業マンの必須スキルである。



そんな和やかな日常パート(営業活動)を満喫していた、まさにその時だった。



『――おい! この街で一番良い装備を売ってる店はここか!! 勇者様のご来店だ、道を開けろ!!』



ドバンッ!! と1階のカフェの扉が下品な音を立てて蹴り開けられた。



騒ぎを聞きつけ、俺とシオリが2階から吹き抜けの下を見下ろすと、そこには見覚えのある顔があった。

「あれは……」



「カオルさん……! それに、一緒に召喚された営業部の皆も……」



そこに立っていたのは、異世界召喚の直後に俺たちを嘲笑い、真っ先に寝返った元・同期のカオルだった。



しかし、その姿は異様だった。



全身に黄金のトゲトゲが付いた無駄に巨大な鎧を着込み、背中には七色に光るマント。



さらには歩くたびにガチャガチャと音が鳴るほど、過剰な装飾の剣やアクセサリーをジャラジャラとぶら下げている。



洗練された【ハイ・カジュアル】を愛するこの【THE HUB】の空間において、彼の姿は目も当てられないほど「絶望的にダサかった」。



「おい店長! 勇者パーティーの装備を新調してやる! 俺様にふさわしい最高級の剣と鎧を――ん?」



大声で喚いていたカオルが、階段の上から見下ろす俺とシオリに気づき、目を丸くした。



「ま、マコト!? なんでお前がこんなところに……まさか、お前らみたいな無能スキル組、こんな服屋の店員にまで落ちぶれたのか! ギャハハハハ!!」



カオルの背後にいる元・同僚たちも、俺たちの姿を見て下品な嘲笑を上げる。



「トップ営業マンが服の売り子とは笑えるぜ!」



「俺たちなんて勇者パーティーのエリートだぞ! ほら、この装備を見ろよ!」



得意げにトゲトゲのダサい鎧を鳴らす彼らに対し、1階でコーヒーを飲んでいた貴族や冒険者たちは「なんだあの成金趣味は……」「THE HUBの空間に合わない田舎者だな」と冷ややかな、あるいは憐れむような視線を向けていた。



俺はゆっくりと階段を降り、満面の営業スマイルで彼らの前に立った。



「いらっしゃいませ、カオル君。相変わらず……ずいぶんと『コストパフォーマンスの悪そうな』装備をしているね。その無駄なトゲトゲ(装飾)、実用性(ROI)はゼロに見えるが」



「あぁ!? 負け犬の服屋風情が、勇者である俺様に説教垂れる気か!?」



カオルが激昂し、ガチャリと腰の聖剣に手をかけた。



平和な店舗に、暴力の匂いが立ち込める。



「先輩……!」



シオリが不安そうに声を上げるが、俺はスッと右手を前に出し、カオルの目を真っ直ぐに見据えた。



「ここは神聖な商談の場(店舗)だ。もし我々のブランド価値を下げるようなクレーム(暴挙)に出るなら……かつての同期とはいえ、容赦はしないぞ」



トップ営業マンと、空気を読まない勇者。



異世界での「因縁のプレゼン対決」が、今まさに始まろうとしていた。



第9話もお読みいただきありがとうございました!

ビジネス用語でシオリを無自覚に褒め殺し、女神シエラを赤面させるマコトのスマートさ、いかがでしたでしょうか?(笑)

そして次回、ついにダサすぎる成金装備の勇者カオルとの直接対決です!

「マコトの大人の対応にニヤニヤした!」「勇者をどう論破するのか楽しみ!」と少しでも思っていただけましたら、

ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして、本作へのご評価をお願いいたします!

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