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第4話:不当な要求にはスキル【コンプライアンス違反】を。そして最後に笑うのは【Win-Win】の契約だ

いつもお読みいただきありがとうございます!

第4話は、成功者に必ずつきまとう「組織的な嫌がらせ」への対処法です。

理不尽な要求を突きつけてきた悪徳ギルド長を、マコトはどう「料理」するのか?

現代ビジネススキルが異世界の闇を暴く、痛快な交渉劇をお楽しみください!

『情報の拡散シェア』によるオープンから数日。


大衆酒場『ドワーフの金床』は、連日オープン前から長蛇の列ができるほどの超繁盛店となっていた。



「先輩! 3番テーブルのお客様から『みたらし団子』のおかわりです!」



「了解。ガンツさん、原始焼きのペースを少し上げてくれ!」



「おうよ! ……って言いてえところだが、マコト。ヤバいぜ」



囲炉裏の前で炭火を操るガンツが、顔に落ちる汗を拭いながら奥の貯蔵庫を指差した。



「猪肉も、川魚も、酒も……仕入れた在庫がもう底をつく。商業ギルドの連中が、急にうちへの食材の卸しをストップしやがったんだ」



「なるほど。意図的な兵糧攻め(供給カット)ですね」

俺が営業スマイルのまま状況を分析していると、バンッ!!と乱暴に店の扉が蹴り開けられた。



店内が水を打ったように静まり返る。



現れたのは、ギラギラと成金趣味の宝石を身につけた恰幅の良い男と、物騒な長剣を帯びた十数人の荒くれ冒険者(私兵)たちだった。



「ひっ……! 商業ギルド長の、ゴルド様だ……!」



「街の流通を牛耳ってる悪徳商人じゃねえか。なんでこんな路地裏に……」



客たちが恐怖で震え上がる中、ゴルドと呼ばれた男は下品な笑いを浮かべて店内を見渡した。



「はっ! 随分と儲かっているようだな、薄汚いドワーフめ。我がギルドの許可なく、こんな得体の知れない料理で客を集めるとは、街の秩序を乱す行為だ」



「なっ……! ギルドにはちゃんと上納金を払ってるだろうが!」



ガンツが怒鳴るが、ゴルドの背後にいる私兵たちがチャキリと剣の柄に手をかけると、悔しそうに口をつぐんだ。



「そのルールが変わったのだよ。今日からこの店の売上は、みかじめ料として『9割』を我々商業ギルドが徴収する。食材の流通も私が独占管理してやろう。嫌なら……この店は今日で営業停止(物理)だ。この屈強な冒険者たちが、不慮の事故で店を叩き壊してしまうかもしれんからな。ヒャッハッハ!」



典型的な悪徳業者の乗っ取り(M&A)の手口だ。



理不尽な暴力と権力による圧迫。シオリは恐怖で俺の背中に隠れ、ガンツは歯軋りをして拳を握りしめている。

しかし、俺の心は驚くほどに凪いでいた。



クレーム対応、競合他社からの嫌がらせ、理不尽な上司の要求……現代社会の過酷な営業現場に比べれば、彼らの手口はあまりにも「稚拙」で、付け入るビジネスチャンスだらけだったからだ。



俺はゆっくりと前に進み出た。完璧な45度の角度で、ゴルドに向かって一礼する。



「お初にお目にかかります、ゴルド様。本日は弊店までわざわざのご足労、誠にありがとうございます。私、当店のコンサルティングを任されております、マコトと申します」



「あぁ? なんだ貴様。人間風情がしゃしゃり出てくるな!」



「9割のロイヤリティ要求、ならびに強圧的な営業停止措置とのことですが……誠に遺憾ながら、その要求はお受けできかねます」



俺は真っ直ぐにゴルドの目を見据え、透き通るような営業スマイルを向けた。



「明確な【コンプライアンス違反】ですので」

その言葉を口にした瞬間だった。



『――ギィィィィィンッ!!!』



「がはっ!?」「な、なんだこりゃあ!?」



突如、店内で剣を抜こうとしていた私兵たち全員が、目に見えない巨大な「圧力(コンプライアンスの壁)」に押し潰され、床に這いつくばったのだ。



彼らが持っていた武器は、まるで飴細工のようにグニャリと曲がり、使い物にならなくなっている。



「なっ……! 貴様、何をした!? まさか魔法か!?」

ゴルドが脂汗を流して後ずさる。



「魔法? いえいえ、ただの法令遵守コンプライアンスの徹底ですよ。不当な暴力や脅迫は、ビジネスの場において著しく価値を損なう行為ですから。当店はクリーンな労働環境を推奨しております」



俺は笑顔のまま、さらに踏み込んだ。



「さて、シオリ。先ほどの彼らの『脅迫まがいの発言』と、ギルドの流通独占に関する不当な契約状況、データは取れているか?」



「はい先輩! スキル【議事録(音声・映像付き)】で完全にバックアップ完了です! ついでに、ギルドの帳簿のデータも『閲覧』して不正な横領の記録も押さえました!」



シオリが空中に無数の文字列と、先ほどのゴルドの音声データをホログラムのように投影する。



それを見たゴルドの顔面から、一気に血の気が引いた。

「な、なんだその魔法は……!? そ、それを領主に突き出されたら、私は……破滅だ……!」



膝から崩れ落ちるゴルド。



相手の急所を完全に握り、反撃の意思を折る。これこそが交渉の基本だ。



だが、優秀な営業マンは「相手を潰して終わり」にはしない。死体からは一円の利益も生まれないからだ。



「ゴルド様、落ち着いてください。私はあなたを破滅させたいわけではありません」



俺は倒れ込むゴルドの前にしゃがみ込み、彼の震える肩に優しく手を置いた。



「あなたの持つ広大な『流通網』と『食材の調達力』。これは非常に魅力的です。当店には、爆発的な集客力と、最高のプロダクト(みたらし団子や原始焼き)がある。……お分かりですね?」



「お、お前……まさか……」



「ええ。対立ゼロサム・ゲームはやめましょう。あなたが当店に最高の食材を『最優先・かつ適正価格』で卸し、我々の商品をギルドの特産品として街全体に流通させる。我々は利益を拡大し、あなたはギルド長としての名声と、莫大な販売手数料を手に入れる。――完璧な【Win-Winウィンウィン】の関係です」



俺がその言葉――【Win-Win】を口にした瞬間。

ゴルドの脳内に、俺たちと手を組んだことで得られる「未来の莫大な利益と黄金の山」のビジョンが強制的にフラッシュバック(インストール)された。



「あ……ああ……! 素晴らしい……! なぜ私は今まで、こんなちっぽけな搾取にこだわっていたんだ……! マコト殿、いや、マコト先生! ぜひその『専属流通パートナー契約』を結ばせてくれ!!」



先ほどまでの傲慢さは微塵も消え失せ、ゴルドは感動の涙を流しながら俺の手を固く握りしめた。



彼の魂には今、俺への絶対的な信頼と、裏切ることのできない『Win-Winの契約』が強制的に刻み込まれたのだ。



「ええ、共にこの街の経済を回しましょう、ゴルド社長」



俺は完璧な営業スマイルで固く握手クロージングを交わした。



「せ、先輩……たった数分の会話で、街の裏社会のボスを『都合のいいパシリ(下請け)』に洗脳しちゃいました……。先輩の【世間話】、魔王よりタチが悪いんじゃ……」



「失礼だなシオリ。これは洗脳じゃない、お互いが幸せになるビジネスの基本だぞ」



その日の夜。



食材の供給ラインを完全に掌握し、巨大な資本ギルドを味方につけた俺たちの店は、さらに爆発的な利益を叩き出すことになった。



客席の片隅では、いつものエルフの美女・シエラが、大量のみたらし団子を平らげながら満足そうに微笑んでいた。



「ふふっ……力で潰すのではなく、利益で絡め取って自陣の駒にする……。本当に恐ろしい御仁ね、マコト。さあ、次は私(女神)にどんな『商談』を持ちかけてくれるのかしら?」



最強の営業マンによる異世界市場の独占(ドミナント戦略)は、いよいよ都市全体を飲み込もうとしていた。



第4話もお読みいただきありがとうございました!

「敵を倒して終わり」にせず、利益で縛って「使い勝手のいいパートナー」に変えてしまうのがマコト流のWin-Winです。シオリちゃんの監査能力(議事録)もどんどん進化していますね!

「マコトの交渉術にシビれた!」「悪徳商人がパシリになるの最高!」と少しでも楽しんでいただけましたら、

ページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価いただけると、執筆の大きな支えになります!

【ブックマーク】での応援もぜひ、よろしくお願いいたします!

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