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第16話:納品妨害には【クラウド同期】を。公開処刑のち、最強の物流網(Win-Win)を獲得する

いつもお読みいただきありがとうございます!

第16話は、いよいよ国家規模のコンペ本番!

……と思いきや、敵対商会による古典的かつ凶悪な「物理的妨害(商品の没収と監禁)」が発生。

絶対絶命のピンチを、トップ営業マンは現代のITビジネススキル【クラウド同期】で鮮やかに打ち破ります!痛快なカウンターをお楽しみください!



第一皇女への【事前の根回し(エレベーター・ピッチ)】を完璧に成功させた翌日。


王立品評会の前夜。



俺とシオリは、コンペに出品する『12年物のウイスキー樽』と『エグゼクティブ・モデルのスーツ』を台車に乗せ、品評会会場である王城の搬入口へと向かっていた。



「先輩、皇女殿下の感触は最高でしたね! これなら明日のコンペは楽勝です!」



「ああ。だが、競合他社ライバルがこのまま黙って指をくわえているとは思えない。……そろそろ『妨害工作』が来る頃だ」



俺がそう呟いた直後だった。



王城の裏口に続く薄暗い路地で、行く手を十数人の武装した帝国兵が塞いだ。


その中心から、金羊毛商会のベルナルド専務が下品な笑みを浮かべて進み出てきた。



「お待ちしておりましたよ、THE HUBの責任者殿。……おや、それが品評会に出品する商品ですか?」



「お疲れ様です、ベルナルド専務。ええ、我々の最高傑作です。何か御用で?」



俺が営業スマイルで応じると、ベルナルドは勝ち誇ったように一枚の羊皮紙(書類)を突きつけてきた。



「帝国関税局からの『緊急監査命令』だ。貴様らの持ち込んだ商品に、帝国法に違反する密輸品が含まれている疑いがある。よって、品評会が終わるまで商品は我が商会が管理する『税関の地下倉庫』にて一時的に差し押さえる!」



「なっ……! で、デタラメです! 私たちの商品に違法なものなんてありません!」



シオリが抗議するが、帝国兵たちがチャキリと槍を構え、俺たちの退路を完全に断った。



「黙れ! 逆らえば国家反逆罪でその場で斬り捨てるぞ! さあ、大人しく地下倉庫へ同行してもらおうか!」



なるほど。権力と法律を悪用した、古典的だが極めて凶悪な『物理的な納品妨害』だ。



ここで力ずくで抵抗(暴行)すれば、向こうの思う壺。コンペに参加する前に【コンプライアンス違反(犯罪者)】として処理されてしまう。



シオリが「先輩、ここは強行突破を……!」と小声で言ってきたが、俺は静かに首を振った。



「……承知いたしました。監査のプロセスには従いましょう。どうぞ、商品をお調べください」



俺は一切の抵抗を見せず、ベルナルドの指示に従って、帝都の片隅にある頑牢な『税関の地下倉庫』へと連行された。



そして、冷たい石造りの牢屋の中に、シオリと共に押し込まれたのだ。



ガチャンッ!! と、重い鉄格子が閉められ、厳重に鍵がかけられる。



「ふはははは! 傑作だな、THE HUBの責任者殿! あっさりと罠にかかりおって!」



鉄格子の外で、ベルナルド専務が腹を抱えて笑っている。


彼の足元には、俺たちが持ち込んだはずのウイスキー樽とスーツが乱暴に転がされていた。



「貴様らが第一皇女殿下に接触したという情報は掴んでいた。だが、品評会に『商品』を持ち込めなければ、そもそも失格(プレゼン不可)なのだよ! ここは我が商会が管理する絶対防壁の金庫。明日の品評会が終わるまで、そこで指をくわえて見ているがいい!」



ベルナルドは勝ち誇った顔で商品を没収し、倉庫の重い鉄扉を閉めて去っていった。



「せ、先輩! どうしましょう、商品を取られた上に閉じ込められました! 明日の朝には品評会が始まっちゃいます!」



シオリが鉄格子をガチャガチャと揺らしながら涙目になる。



「落ち着け、シオリ。競合他社からの『物理的な納品妨害』など、昭和のビジネスモデルだ。……だが、彼らは一つ決定的なミスを犯している」



「ミス、ですか?」



「ああ。現代のビジネスにおいて、プロダクト(商品)を『物理的な現物』だけで管理するなど、リスクヘッジが甘すぎるということだ」



俺は鉄格子の冷たい床に座り込み、ネクタイを少し緩めた。



「シオリ、お前のスキル【議事録】の中に、ウイスキーとスーツの『完全な構成データ』はバックアップされているな?」



「はい! 原子の構造から魔力の波長まで、クラウド(脳内)に完璧に保存済みです!」



「よし。なら、明日の本番までここでゆっくり仮眠(休憩)をとろう。明日は忙しくなるぞ」




◆ ◆ ◆




翌日。ロマーナ帝国・王城の大広間。



王族や大貴族たちがズラリと並ぶ中、『王立品評会ナショナル・コンペティション』が華々しく開催されていた。



「――ご覧ください! 我が金羊毛商会が誇る、純金糸を十万本使用した『黄金のドレス』! そして、百年寝かせた『幻の赤ワイン』でございます!」



ベルナルドが壇上で誇らしげに商品を掲げる。



ワイロ(事前工作)を受け取っている貴族たちは「おおっ!」「これぞ至高!」とわざとらしい拍手喝采を送った。



だが、中央の審査委員長席に座るレオノーラ第一皇女だけは、退屈そうに頬杖をついていた。



「さて、次は新興のTHE HUBの番ですが……おや? 姿が見えませんね。恐れをなして逃亡した(不戦敗)とみなし、我が商会の優勝ということで――」



『バンッ!!』



ベルナルドが勝利宣言をしようとした瞬間、大広間の重厚な扉が開け放たれた。



「大変申し訳ございません。道が少し混んでおりまして(※地下倉庫からの脱出)」



俺はシオリを連れて、完璧な営業スマイルでレッドカーペットを歩き、壇上へと上がった。



「な、なぜ貴様らがここに!? 鉄格子はどうした!?」

ベルナルドが幽霊でも見たように顔を引きつらせる。



「ああ。少し急いでいたので、スキル【直行直帰ショートカット・テレポート】を使わせていただきました」



「ば、馬鹿な! だが、貴様らの『商品』は我が商会の金庫の中だ! 手ぶらでプレゼンなど――」



「手ぶら? いえいえ、商品はすでに『持参』しておりますよ」



俺はシオリに目配せをした。シオリが一歩前に出る。



「シオリ、商品の展開を。――【クラウドからのダウンロード(現物同期)】」



ピキィィィンッ!!



シオリの瞳が発光し、彼女の【議事録】に保存されていた完全なデータが、俺の言霊(ビジネス魔法)によって空間に物理的な実体を持って強制出力された。



光の粒子が集束し、壇上に『12年物の琥珀色のウイスキー樽』と、『エグゼクティブ・モデルのスーツ』が全くの無傷で出現したのだ。



「な、なんだとォォォッ!? 現物が、何もない空間から出力されただと!?」



驚愕するベルナルドを尻目に、俺は優雅にウイスキーをグラスに注ぎ、レオノーラ皇女の前に差し出した。



「お待たせいたしました、殿下。THE HUBからのプレゼンです。……もはや、余計な言葉(説明)は不要でしょう」



レオノーラ皇女は、待ってましたと言わんばかりに笑みを浮かべ、琥珀色の液体を口に含んだ。



芳醇な香りが広間に漂い、皇女がうっとりと目を閉じる。



さらに、ドラン特製の【ハイ・カジュアル】なジャケットを肩に羽織ると、そのあまりの軽さと洗練されたシルエットに、ワイロをもらっていたはずの貴族たちすら息を呑んだ。



「……金羊毛商会のドレスは、重くて肩が凝るわ。それにワインも、ただ古いだけで香りが完全に死んでいる。――勝者はTHE HUB! 彼らに帝国の『独占販売権』と『関税の完全撤廃』を約束します!!」



皇女の高らかな宣言が響き渡る。



公開処刑の完了だ。実力(品質)の差を見せつけられ、ワイロ頼みだったベルナルドは膝から崩れ落ちた。



「お、終わりだ……。金羊毛商会のブランドが……私の地位が……!」



絶望に染まるベルナルド。



ライバル商会を完膚なきまでに叩き潰した。普通ならここで「ざまぁみろ」と去っていくところだ。



だが、俺は倒れ込むベルナルドの前にしゃがみ込み、スッと右手を差し出した。



「ベ、ベルナルド専務。まだ終わりではありませんよ」



「え……?」



「あなた方の『商品の企画力』は確かに古臭い。ですが、帝国全土に張り巡らされた『金羊毛商会の巨大な物流網と倉庫保管のノウハウ』……これは、一朝一夕では作れない素晴らしい財産アセットです」



俺はとびきりの営業スマイルを浮かべた。



「我々と【業務提携】を結びませんか。我々THE HUBが最高品質の商品プロダクトを作り、金羊毛商会がその『専属の物流企業ロジスティクス』として帝国全土に配送する。あなた方はもう商品開発で頭を悩ませる必要はなく、莫大な『配送料と販売手数料』を手に入れることができる。――完璧な【Win-Win】でしょう?」



「なっ……私を、金羊毛商会を救ってくれるというのか……!? お前たちを、地下倉庫に閉じ込めたこの私を!?」



「ビジネスに私怨は持ち込みません。合理的な利益ウィンウィンがあるなら、昨日の敵は今日の最高のパートナーです」



俺の放った【Win-Win】の言霊が、ベルナルドの脳内に『物流の覇者として莫大な利益を得る未来』を強制的にインストールする。



「あ……ああ……! マコト殿、いや、マコト社長ォォッ! このベルナルド、今日からTHE HUBの物流部門として粉骨砕身働かせていただきます!!」



プライドの高い帝国の専務は、大粒の涙を流して俺の手を両手で固く握りしめた。



「ええ、期待していますよ、ベルナルド『配送部長』」

俺は彼を引き起こし、固い握手クロージングを交わした。



ロマーナ帝国での品評会は大成功に終わり、俺たちは「関税の撤廃」どころか、隣国の「最強の物流ネットワーク」を丸ごと自社のインフラとしてタダで飲み込むことに成功したのだ。



客席でその様子を見ていたレオノーラ皇女が、呆れたようにため息をついた。



「敵対勢力を実力でねじ伏せた挙句、自分の商会の手足パシリとして洗脳して組み込むなんて……。あなた、帝国を乗っ取る気?」



「まさか。俺はただ、お客様に最高の体験ハイ・カジュアルをお届けしたいだけの、一介の営業マンですよ」



最強の営業マンの手腕によって、異世界の経済地図は今、劇的な速度で塗り替えられようとしていた。



第16話もお読みいただきありがとうございました!

物理的な商品を没収されても、脳内クラウドから【現物をダウンロード】してしまえばノーダメージ!

そしてコンペで敵を完全論破(公開処刑)した後は、ちゃっかり相手の物流網を【Win-Win】で自社に組み込んでしまうマコトの手腕。まさに魔王よりタチが悪い営業マンですね(笑)

「クラウド同期のチート最高!」「ベルナルドが配送部長になったの笑う」と少しでもスカッとしていただけましたら、

ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援をお願いいたします!

毎日の【ブックマーク】でのご支援も、本当にありがとうございます!

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