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第17話:女神との密談(アフターファイブ)。そして忍び寄る『魔王軍(巨大ブラック企業)』の影

いつもお読みいただきありがとうございます!

第17話は、コンペの大勝を経て、女神シエラとの少し大人な「アフターファイブ」からスタートします。

しかし、順風満帆なTHE HUBの裏で、ついにこの世界最大の「巨大ブラック企業」が動き出します……!

新たな波乱の幕開けをお楽しみください!



王立品評会での圧倒的な勝利から数日後。



ロマーナ帝国の莫大な関税が撤廃され、金羊毛商会を「自社の物流網」として組み込んだ【THE HUB】の売上は、文字通り天文学的な数字ハイパーインフレーションを叩き出していた。



その日の夜。



営業を終え、静まり返ったTHE HUB本店の一階。間接照明だけが仄かに灯る貸し切りのバーカウンターで、俺は一人のVIP客をもてなしていた。



「……ふふっ。帝国という巨大市場の完全掌握。おめでとう、マコト」



俺の目の前で、艶やかなヴィンテージ・レザーのドレスを着た女神シエラが、グラスの中で琥珀色のウイスキーを揺らしていた。



ドレスの深いスリットから覗く白い脚と、少し酔いが回ってトロンとした瞳が、女神というより魔性の女のオーラを放っている。



「ありがとうございます。ですが、まだあなたの提示した『年商2000万G』と『ダイヤモンドランク』には届いていません。これはあくまで通過点マイルストーンです」



俺は静かに、シエラのグラスにウイスキーを注ぎ足した。



すると、シエラはグラスを持ったまま上半身をカウンターに乗り出し、俺の顔のすぐ近くまで息のかかる距離に顔を寄せてきた。



「ねえ、マコト。覚えてる? 以前、私に『極上のコーヒーと特別な時間』をサービスしてくれるって約束したこと」



甘い香水と、ウイスキーの芳醇な香りが混ざり合う。



シエラの細くしなやかな指が、俺のネクタイをゆっくりと引き寄せた。



「これだけの大仕事を成功させたんだもの。今日くらい、コンプライアンスだの利益だの……難しいビジネスの話は忘れて、私に『特別な奉仕サービス』をしてくれてもいいんじゃない……?」



誘うような上目遣い。


女神の直球のハニートラップだ。



並の男なら理性を吹き飛ばされる至近距離。だが、俺はトップ営業マンのポーカーフェイスを崩さず、そっと彼女の手に自分の手を重ねた。



「……シエラ様。私は常に、お客様に最高の体験(UX)を提供することを信条としています」



「っ……マコト……」



シエラが期待に目を潤ませ、わずかに唇を開いた、その瞬間。



「ですから、このウイスキーには最高の『アテ(おつまみ)』をご用意しました。――ガンツさん特製、燻製チーズとドラゴンジャーキーの盛り合わせです。どうぞ、心ゆくまでご堪能ください」



俺は完璧な営業スマイルで、カウンターの下から極上のつまみが乗った皿をスッと差し出した。



「…………は?」



シエラが間の抜けた声を出し、俺から手を離す。



「特別な時間アフターファイブに、極上の酒と最高のつまみ。これ以上の福利厚生がありますか?」



「もォォォォォッ!! あなたって男は!! どこまでいっても仕事人間ワーカホリックなのね!! 鈍感!!」



顔を真っ赤にして怒るシエラ。



俺は苦笑しながら、



「ですが、あなたが私に『試練』という名のチャンスをくれたこと、心から感謝していますよ」



と、自分のグラスを彼女のグラスにコツンと当てた。



「……ズルイ男。そういう不意打ちの『本音』に、女は弱いのよ」



シエラは少しだけ拗ねたようにそっぽを向きながらも、嬉しそうにジャーキーを齧り、ウイスキーを煽った。

「せ、せーんーぱーい!!」



いいムードになりかけたその時、2階のオフィスからシオリがドタドタと階段を駆け下りてきた。



その腕には、抱えきれないほどの書類の山がある。



「あっ、またシエラ様が先輩をたぶらかそうとしてる! 先輩は今、帝国の物流データと新店舗の決算書(議事録)の確認で忙しいんですからね!」



「あら、ただの『接待』よ? 優秀なアシスタントのシオリちゃんには、まだ大人の時間は早かったかしら?」



火花を散らす二人を眺めながら、俺は静かにコーヒーを飲んだ。



順風満帆。ビジネスはすべて、俺の描いた事業計画書シナリオ通りに進んでいる。



――しかし。光が強くなればなるほど、濃い「影」が生まれるのが世界の理だ。




◆ ◆ ◆




同じ頃。



人間たちの住む大陸から遠く離れた、空がどす黒い雲に覆われた『魔大陸』。



その中心にそびえ立つ魔王城の、最上階にある広大な「戦略会議室ボードルーム」。



円卓を囲むように、禍々しいオーラを放つ魔族の幹部たち――『魔王軍・四天王(取締役)』が座っていた。



「……状況は極めて深刻だ。直近四半期の『人間界からの恐怖エネルギー徴収率』が、前年同期比で80%もダウンしている」



眼鏡を押し上げながら冷徹な声で報告したのは、四天王の一人であり、魔王軍の最高戦略責任者(CSO)である堕天使・ルシフェルだった。



「特に、ルイーダの街およびロマーナ帝国の周辺。我々の尖兵として送り込んだはずの魔物たちが、人間の街を襲うどころか、あろうことか『配送業者』や『飲食店のアルバイト』として人間に雇用ヘッドハントされているという異常事態だ」



「フザケるな!! Sランクの黒竜まで『マスコット』にされただと!? 魔族の誇り(ブランド)をなんだと思っている!」



筋骨隆々の獣人の将軍が、円卓を拳で叩き割った。



「黙れ。原因は明確だ。人間界に突如現れた【THE HUB】という謎の複合企業。こいつらが、我々魔王軍の『恐怖と破壊』による市場独占ビジネスモデルを根本から破壊しているのだ」



ルシフェルは空中に、THE HUBのロゴマークと、マコトの顔写真をホログラムで投影した。



「勇者などという時代遅れの武力集団は脅威ではない。だが、この『マコト』という人間の経済侵略は、我々魔王軍の存活基盤キャッシュフローを完全に枯渇させる」



ルシフェルは漆黒の翼を広げ、残忍な笑みを浮かべた。



「我々魔王軍は、世界最大の暴力装置メガコーポだ。生意気な新興企業には、徹底的な『敵対的買収(破壊)』をもって市場から退場してもらおう。……全軍に進達。THE HUBの流通網を物理的に切断し、責任者マコトを血祭りにあげろ」



人間界の経済を支配しつつある最強の営業マン・マコト。



そして、圧倒的な武力と恐怖で世界を蹂躙してきた巨大ブラック企業・魔王軍。



絶対に相容れない二つの巨大な『ルール』が、今、激突の時を迎えようとしていた。



第17話もお読みいただきありがとうございました!

シエラ様からの直球の誘惑ハニートラップを「極上の福利厚生つまみ」で躱す、ブレないワーカホリックなマコトでした(笑)。

そして、ついに姿を現した「魔王軍」。魔物をヘッドハントされて業績悪化に苦しむ彼らとの、異次元の経済戦争ビジネス・バトルがここから本格化します!

「魔王軍がブラック企業なの面白い!」「シエラ様とのやり取りが好き!」と少しでも楽しんでいただけましたら、

ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして、ご評価をお願いいたします!

毎日の【ブックマーク】での応援も、本当にありがとうございます!

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