第14話:熟成期間は【納期短縮】でスキップ。異世界初の琥珀色(ウイスキー)と最強の戦闘用スーツ(エグゼクティブ・モデル)
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第14話は、巨大商会とのコンペに向けた新商品開発!
ウイスキー作りに立ちはだかる「熟成(10年以上の歳月)」という絶対に越えられない時間の壁を、トップ営業マンが規格外の【納期短縮】で吹き飛ばします!
完成した最強の戦闘スーツとともにお楽しみください!
「マコト……! 見ろ、蒸留器から液体が滴ってきたぞ!」
【THE HUB】の地下工房。ガンツが汗だくになりながら、銅製の奇妙な装置を見つめて歓声を上げた。
彼の得意とする「ドワーフの火酒(極上の芋焼酎に近い醸造酒)」をベースに、熱を加えてアルコールと香りの成分だけを抽出する。
ガンツの完璧な火加減コントロールにより、ポタポタと落ちてきた無色透明の液体は、鼻を突くほど強烈だが、果実のような甘い香りを放っていた。
「素晴らしい。アルコール度数は60度を超えているはずだ。だが、これはまだ『完成』じゃない」
俺は透明な酒が入った樽を撫でた。
「ウイスキーの本当の魔法は【樽熟成】にある。木材の成分が酒に溶け込み、荒々しいアルコールが丸みを帯び、複雑な香りと美しい琥珀色へと変化していくんだ。……ドランさん、例のモノは?」
「おう。待たせたな」
工房の奥から、職人のドランが重厚な木樽を転がしてきた。
「樹齢千年の『トレントの神木』を乾燥させて内側を焼き、隙間は俺のヴィンテージ・ドラゴンレザーで完全に密閉した特注の樽だ。液漏れは一切しねえし、神木の香りが存分に移るはずだ」
「完璧なパッケージングです。さあ、原酒をこの樽に詰めましょう」
トクトクと透明な酒が神木の樽に注がれ、しっかりと栓がされる。
だが、ここでシオリが【議事録】のデータを空中に投影し、青ざめた顔で首を振った。
「先輩……やっぱり計算が合いません。王立品評会は『1ヶ月後』ですよね? 先輩が言うような『琥珀色の深い味わい』にするには、最低でも10年、12年という途方もない熟成期間が必要です!」
「そうだな。本来のモノづくりにおいて、時間は絶対的なコストだ。1ヶ月では、ただの木の匂いがついたアルコール水にしかならない」
俺はネクタイの結び目をスッと直し、木樽の前に立った。
「しかし、我々はビジネスマンだ。圧倒的に不利な納期を突きつけられた時、ただ指をくわえて待つ(諦める)のは三流のやることだ」
俺はとびきりの営業スマイルを浮かべ、木樽に向かってパンッ!と柏手を打った。
「クライアント(王族)の期待を超えるため、あらゆるリソースを使って――【スケジュールの前倒し(納期短縮)】を実施します」
ピキィィィィィィンッ!!!
言葉(ビジネス用語)を発した瞬間。
地下工房の空間そのものがグニャリと歪み、樽を中心にして凄まじい魔力の渦が発生した。
「な、なんだ!? 樽の周りだけ、景色が……春夏秋冬が、とんでもない速度で切り替わって見えるぞ!?」
ガンツが尻餅をつく。
俺の放った【スケジュールの前倒し】は、指定したプロジェクト(今回は樽の熟成)にかかる時間を、異世界の法則を捻じ曲げて強制的に「圧縮・早送り」するチート魔法だ。
「さあ、PDCAサイクルを高速で回せ……1年、3年、5年……よし、12年物の完成だ!」
わずか数十秒後。
魔力の渦が収まり、静寂が戻った工房で、俺は木樽のコックを捻った。
トクトク……。
グラスに注がれたのは、先ほどの透明な液体ではない。
まるで夕日を溶かしたような、深く、美しく、とろけるような【琥珀色】の液体だった。
「こ……これは……!」
甘いバニラとハチミツ、そしてトレントの神木がもたらす重厚な樽の香りが、工房中に爆発的に広がる。
ガンツが震える手でグラスを受け取り、一口飲んだ。
「…………っ!!」
目を見開いたガンツの瞳から、ボロボロと大粒の涙がこぼれ落ちた。
「俺の火酒が……こんな、こんな神様が飲むような深い味になるなんて……。喉の奥で、何十種類もの香りが花開いて消えていく……。マコト、お前は……酒の神様か?」
「いえ、ただの営業マンです。これで、金羊毛商会の『幻のワイン』を打ち負かすプロダクト(弾)は完成しました。……次は、アパレル部門だ。ドランさん」
「フッ、待っていたぜ。俺の最高傑作を見て驚くなよ」
ドランが布をバサリと取り払うと、そこには洗練の極致とも言える衣服が並んでいた。
深いネイビーと漆黒を基調とした、細身のジャケットとスラックスのセットアップ。
一見すると、高級な仕立て屋が作った「ただの上質な普段着」だ。
あの勇者カオルが着ていたようなトゲトゲの装飾も、金ピカの金属も一切ない。
「シオリ、着てみてくれ」
「はいっ!」
更衣室から出てきたシオリの姿に、俺は満足げに頷いた。
美しいシルエットが彼女のスタイルを引き立てており、動きやすさも抜群だ。
「素材は極薄に加工した黒竜の鱗と、ミスリルの極細糸。見た目は完全に『街着』だが、物理防御力も魔法耐性も、あの勇者のダサい黄金鎧の『10倍』はある。そして重量は10分の1だ」
ドランが誇らしげに胸を張る。
「素晴らしい。これぞ我々THE HUBが提唱する、次世代の戦闘用スーツ――【エグゼクティブ・モデル】だ。どんな過酷な戦場でも、決してエレガントさを失わない大人のための戦闘服」
シオリがジャケットの裾を翻し、嬉しそうにその場でターンを決める。
「先輩、これ凄いです! 全然重くないのに、守られてる安心感が半端じゃないです! これなら品評会でも、絶対に負けません!」
異世界初の12年物ウイスキー【琥珀の革命】。
そして、最強のハイ・カジュアル戦闘服【エグゼクティブ・モデル】。
「さあ、コンペの準備は完全に整った。金羊毛商会の古臭いビジネスモデルを、我々の圧倒的なプロダクトで過去の遺物にしてやろう」
俺はグラスに残った琥珀色の酒を飲み干し、決戦の地であるロマーナ帝国・王立品評会へと向かう準備を始めた。
第14話もお読みいただきありがとうございました!
数年・数十年の時間を数秒に圧縮する【スケジュールの前倒し(納期短縮)】、もはや魔法を超越したビジネスの極致ですね(笑)。
勇者の鎧より強くて軽いスーツ「エグゼクティブ・モデル」と「12年物ウイスキー」という弾が揃い、いよいよ決戦の準備は完了です!
「納期短縮チートすぎる!」「スーツ着て戦うのカッコいい!」と少しでも楽しんでいただけましたら、
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