表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
14/17

第14話:熟成期間は【納期短縮】でスキップ。異世界初の琥珀色(ウイスキー)と最強の戦闘用スーツ(エグゼクティブ・モデル)

いつもお読みいただきありがとうございます!

第14話は、巨大商会とのコンペに向けた新商品開発!

ウイスキー作りに立ちはだかる「熟成(10年以上の歳月)」という絶対に越えられない時間の壁を、トップ営業マンが規格外の【納期短縮】で吹き飛ばします!

完成した最強の戦闘スーツとともにお楽しみください!



「マコト……! 見ろ、蒸留器アランビックから液体が滴ってきたぞ!」



【THE HUB】の地下工房。ガンツが汗だくになりながら、銅製の奇妙な装置を見つめて歓声を上げた。



彼の得意とする「ドワーフの火酒(極上の芋焼酎に近い醸造酒)」をベースに、熱を加えてアルコールと香りの成分だけを抽出する。


ガンツの完璧な火加減コントロールにより、ポタポタと落ちてきた無色透明の液体ニューメイクは、鼻を突くほど強烈だが、果実のような甘い香りを放っていた。



「素晴らしい。アルコール度数は60度を超えているはずだ。だが、これはまだ『完成』じゃない」



俺は透明な酒が入った樽を撫でた。



「ウイスキーの本当の魔法は【樽熟成】にある。木材の成分が酒に溶け込み、荒々しいアルコールが丸みを帯び、複雑な香りと美しい琥珀色へと変化していくんだ。……ドランさん、例のモノは?」



「おう。待たせたな」



工房の奥から、職人のドランが重厚な木樽を転がしてきた。



「樹齢千年の『トレントの神木』を乾燥させて内側を焼き、隙間は俺のヴィンテージ・ドラゴンレザーで完全に密閉した特注の樽だ。液漏れは一切しねえし、神木の香りが存分に移るはずだ」



「完璧なパッケージングです。さあ、原酒をこの樽に詰めましょう」



トクトクと透明な酒が神木の樽に注がれ、しっかりと栓がされる。



だが、ここでシオリが【議事録タイムスケジュール】のデータを空中に投影し、青ざめた顔で首を振った。



「先輩……やっぱり計算が合いません。王立品評会は『1ヶ月後』ですよね? 先輩が言うような『琥珀色の深い味わい』にするには、最低でも10年、12年という途方もない熟成期間リードタイムが必要です!」



「そうだな。本来のモノづくりにおいて、時間は絶対的なコストだ。1ヶ月では、ただの木の匂いがついたアルコール水にしかならない」



俺はネクタイの結び目をスッと直し、木樽の前に立った。



「しかし、我々はビジネスマンだ。圧倒的に不利な納期スケジュールを突きつけられた時、ただ指をくわえて待つ(諦める)のは三流のやることだ」



俺はとびきりの営業スマイルを浮かべ、木樽に向かってパンッ!と柏手を打った。



「クライアント(王族)の期待を超えるため、あらゆるリソースを使って――【スケジュールの前倒し(納期短縮)】を実施します」



ピキィィィィィィンッ!!!



言葉(ビジネス用語)を発した瞬間。



地下工房の空間そのものがグニャリと歪み、樽を中心にして凄まじい魔力の渦が発生した。



「な、なんだ!? 樽の周りだけ、景色が……春夏秋冬が、とんでもない速度で切り替わって見えるぞ!?」



ガンツが尻餅をつく。



俺の放った【スケジュールの前倒し】は、指定したプロジェクト(今回は樽の熟成)にかかる時間を、異世界の法則を捻じ曲げて強制的に「圧縮・早送り」するチート魔法だ。



「さあ、PDCAサイクルを高速で回せ……1年、3年、5年……よし、12年物の完成リリースだ!」



わずか数十秒後。



魔力の渦が収まり、静寂が戻った工房で、俺は木樽のコックを捻った。



トクトク……。



グラスに注がれたのは、先ほどの透明な液体ではない。



まるで夕日を溶かしたような、深く、美しく、とろけるような【琥珀色】の液体だった。



「こ……これは……!」



甘いバニラとハチミツ、そしてトレントの神木がもたらす重厚な樽の香りが、工房中に爆発的に広がる。



ガンツが震える手でグラスを受け取り、一口飲んだ。



「…………っ!!」



目を見開いたガンツの瞳から、ボロボロと大粒の涙がこぼれ落ちた。



「俺の火酒が……こんな、こんな神様が飲むような深い味になるなんて……。喉の奥で、何十種類もの香りが花開いて消えていく……。マコト、お前は……酒の神様か?」



「いえ、ただの営業マンです。これで、金羊毛商会の『幻のワイン』を打ち負かすプロダクト(弾)は完成しました。……次は、アパレル部門だ。ドランさん」



「フッ、待っていたぜ。俺の最高傑作マスターピースを見て驚くなよ」



ドランが布をバサリと取り払うと、そこには洗練の極致とも言える衣服が並んでいた。



深いネイビーと漆黒を基調とした、細身のジャケットとスラックスのセットアップ。



一見すると、高級な仕立て屋が作った「ただの上質な普段着ハイ・カジュアル」だ。


あの勇者カオルが着ていたようなトゲトゲの装飾も、金ピカの金属も一切ない。



「シオリ、着てみてくれ」



「はいっ!」



更衣室から出てきたシオリの姿に、俺は満足げに頷いた。



美しいシルエットが彼女のスタイルを引き立てており、動きやすさも抜群だ。



「素材は極薄に加工した黒竜の鱗と、ミスリルの極細糸。見た目は完全に『街着』だが、物理防御力も魔法耐性も、あの勇者のダサい黄金鎧の『10倍』はある。そして重量は10分の1だ」



ドランが誇らしげに胸を張る。



「素晴らしい。これぞ我々THE HUBが提唱する、次世代の戦闘用スーツ――【エグゼクティブ・モデル】だ。どんな過酷な戦場ダンジョンでも、決してエレガントさを失わない大人のための戦闘服」



シオリがジャケットの裾を翻し、嬉しそうにその場でターンを決める。



「先輩、これ凄いです! 全然重くないのに、守られてる安心感が半端じゃないです! これなら品評会でも、絶対に負けません!」



異世界初の12年物ウイスキー【琥珀の革命】。



そして、最強のハイ・カジュアル戦闘服【エグゼクティブ・モデル】。



「さあ、コンペの準備は完全に整った。金羊毛商会の古臭いビジネスモデルを、我々の圧倒的なプロダクトで過去の遺物にしてやろう」



俺はグラスに残った琥珀色の酒を飲み干し、決戦の地であるロマーナ帝国・王立品評会へと向かう準備を始めた。



第14話もお読みいただきありがとうございました!

数年・数十年の時間を数秒に圧縮する【スケジュールの前倒し(納期短縮)】、もはや魔法を超越したビジネスの極致ですね(笑)。

勇者の鎧より強くて軽いスーツ「エグゼクティブ・モデル」と「12年物ウイスキー」という弾が揃い、いよいよ決戦の準備は完了です!

「納期短縮チートすぎる!」「スーツ着て戦うのカッコいい!」と少しでも楽しんでいただけましたら、

ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてご評価をお願いいたします!

毎日の【ブックマーク】での応援も、執筆の最大のエネルギーです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ