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〝金銀花〟は止まらない  作者: 白神 怜司
第3章 Blood Moon

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【雅班】上層攻略は方針会議?




 ――――雅班。


 まだ新しい雪乃が作った装備を装着した一行は、それぞれに特徴的な服装をしている。


 雅は、膝下まである茶色いブーツに、スリットの入ったロング寄りの黒いタイトスカート。上着は淡い黄色のブラウスだ。

 その上に、雪乃が勝手に〝研究者〟というテーマイメージから作った白衣風のロングコートを羽織る形になる。


 一方で雪乃は、今回は膝下まである焦げ茶色の編み上げブーツに裾を入れたジーンズ風のパンツに、上着は厚手の生地を用いたカウボーイシャツに、テンガロンハット。

 そう、言うまでもなく〝ウェスタンガール〟系をテーマにしている。しかも一本鞭から着想を得たものだ。もはやコスプレを楽しむJKのそれであった。


 一方、聖奈は雪乃に作ってもらった、〝修道女〟がテーマ。

 彼女のダンジョン因子は【支援魔法】というなかなかに珍しいダンジョン因子で、第1スキルが【補助魔法】、第2スキルが【聖域構築】などであることなどを聞いた雪乃が、「聖職者、つまりはシスター!」という誤ったインスピレーションから作られた防具セットである。


 修道服を意識して作られているものの、地味過ぎてつまらないという理由で黒い膝下まである編み上げブーツに、下地を白にして上を黒にして、左足の全面、太腿のあたりからスリットを入れて裏地の白が表に来るように縫って模様をつけた、フリルシアーレイアードスカート。

 上着は修道女感を増すために、黒のタイトなシャツに、上から首元に白を広げ、フリルを施したショートケープだ。


 地味にコスプレというか舞台衣装っぽくて、聖奈と雪乃がきゃっきゃして決まったデザインである。


 一方菜桜は、〝忍者風〟だ。

 これは菜桜からの強い要望で作られることになったのだが、意外とシンプルに身軽なものにまとまった。


 足は草履――といきたいところであるのだが、それはさすがに防御面がカバーできないので膝下まである黒いブーツ。黒いスパッツを履いて、上着は太腿まである紫色の甚兵衛羽織に、腹部には帯を巻いている。もちろん額当てつきである。

 こういったダンジョン装備があるはずもなかったため、さっきからよく分からないポーズで「にんにん」と言っていた。


 そんな菜桜が聖奈と並ぶと、和洋折衷を通り越えて調和というものをかなぐり捨てるような構図になるのだが、そういうところは一切気にしないスタイルであるらしい。



「……なんかちょっと、衣装の統一感って大事かも」


「それな」


「個性だからいいんじゃないかしら~?」


「……忍者は譲らない」



 どういう組み合わせを選べば、〝修道女〟と〝忍者〟に、〝科学者〟と〝ウェスタン風〟が混ざるのだろうか、と雅も改めて思う。

 雪乃もまた、こうして並んでみたところ、配信を観る視聴者がいれば、きっとコスプレイベントか何かだと思われるに違いないと確信した。


 個々のクオリティは高いのに、こういうところでズレが生じると全体が残念に思われるのではないだろうか。


 とは言え、今回はいいだろう。

 そもそも今回は〝魔女の饗宴〟と〝金銀花(カプリフォリオ)〟の合同依頼であるし、派手であればある程に話題にもなりやすい。

 目立てば目立つ分だけ、探索者協会に踏み潰されずに済むかもしれない。


 それに、雪乃には今の探索者配信は変わるべきだとも思う。


 実際に『魔導防具(マギア・ギア)』を作るに当たり、雪乃も参考になればと探索者配信を幾つか見ていたのだが、そちらはもう没個性の装備ばかりだ。

 だいたい似たような装備、同じ部位を守ることになるため、似たようなシルエットになってしまうのである。


 JKギャルの雪乃に、没個性なんてものは許せるはずもない。

 もっと色々な服とかデザインがあってもいいじゃん、と思う。


 故に、雪乃は服作りを猛勉強した。

 それはもう、本格的な服作りの本からコスプレの衣装作りの本まで、人生でこんなに勉強したことはないというぐらいに。


 そうして今回、個々に似合うものをイメージに合わせて作ったことで、雪乃としても衣装作りの勉強は進んだ。今後はシンプルなものばかりではなく、少々凝ったものにもトライしたい所存であった。


 要するに、今後〝金銀花(カプリフォリオ)〟と〝魔女の饗宴〟が着せ替え人形扱いされるという意味でもあるのだが、それは甘んじて受け入れてもらうつもりである。



「……雅、そろそろ【鍛冶】持ちが欲しい」


「え、なんなん、急に」


「あーしのスキル範囲だと、基本的に布地しか使えないんよね。だから鍛冶とか系のメンバー探さん?」


「……あ、そういう意味? まあ、確かにゆっきーの能力に合わせた加工ができる【鍛冶】持ちがいたら、服のデザインに合わせて作ったりできるかもかー」



 唐突な雪乃の言葉を聞いて、雅もその意図を察した。

 たとえば今回のようにコンセプトのある装備の場合、その上から既存の胸当てだのなんだのをつけてしまうと、装備の個性が潰されかねない。


 であるのなら、その個性に応じた防具を作るべきだろう。

 なんなら防具に見えないものが防具みたいになったり、変形したりするのもありかな、とSFアニメを見て着想を得ていたりもする。



「せーなんとかなおなおんの知り合いに【鍛冶】持ちいたりしない?」


「ん~、さすがにいないわねぇ~……」


「【鍛冶】持ちは大体大手に拾われる。そういう意味だと、多分〝不明因子〟持ちを青田買いした方がいい。それに、【鍛冶】持ちはイキりが多いから注意」


「あー……ね」



 ダンジョンに潜るための防具を作れるということで、大手クランからも声をかけられる【鍛冶】のダンジョン因子持ちは、自分が選ばれた存在であると鼻にかけるような者が多い。

 もちろん、職人として修行をする内にへし折られることにはなるのだが、そうして職人としての実力を磨く内に、今度は矜持を履き違える者なども出てくるのだ。


 そういう人間は往々にして扱いづらく、ビジネスライクに付き合いきれないケースが生じることもある。


 そういう意味でも、〝不明因子〟で青田買いする方が確かにイチから育てていけるだろう。

 菜桜が言っているのはそういうことだろう、と雅も納得した。



「それに、あーしの作る『魔導防具(マギア・ギア)』みたいに特殊効果が生えるようなのがよくない?」


「普通の【鍛冶】みたいな魔力障壁じゃなくて?」


「んー、そうじゃなくてさー。こう、小物とかであーしの鞭みたいに操れる効果とかあったらかっこよくね?」


「それ! ほしい!」


「なおなおん大興奮じゃん」



 レッサースライムを鞭で叩き潰してみせた雪乃が、鞭を引き戻し、そのまま自分の周囲を囲うように広げて指差した。

 なるほど、確かにその方が色々と面白そうではある。



「ってなると、【鍛冶】じゃなくて小物を作れるような感じの方がよくね?」


「それだったら、彫刻とか彫金とかかしら~? そういう系の〝不明因子〟持ちを探すのも面白そうね~」


「んー、おけおけ。ちょいお父さんとお母さんのとこに訊いておくー」


「なおなおんはどんなの欲しいん?」


「鎖鎌。あと、風景に溶け込む布とか手裏剣。苦無も」


「あーね。忍者一式ね」


「ん!」



 ブレない菜桜の要望はともかくとして、雪乃は聖奈を見やる。

 そんな雪乃の視線に気が付いて聖奈がおっとりと笑って小首を傾げるが、雪乃が見ているのは聖奈の衣装である。

 白と黒、そこにアクセサリーをつけたりもすれば、見た目的にもやはり悪くない。修道女なら十字架とか、架空の女神像がついた十字架擬きとかもいいだろう。



「せーなんは?」


「私はそうね~、装備品っていう意味じゃあまり今は思いつかないわね~。あ、でも、個人的には遠距離に〝独自魔法〟を飛ばせるようになりたいわね~」


「あー、そーいやせーなん、〝独自魔法〟は自分の手のひらのちょっと先ぐらいまでしか出せないタイプだっけ」


「えぇ、そうなのよね~。それがもっと自由に飛ばせたりしたら、もしかしたら便利かな~って思うのだけれど~……」


「んー、難しそう。けど、そういうのを装備とか小物とかでフォローできたら、幅は広がりそう」



 ぶつぶつと呟きながら、雅が考察を始めつつ片手間に『発火薬』を投げ、雪乃が衣装の構想を話しながら鞭で叩き潰していく。


 ――装備のおかげで普通よりもよっぽど強いし、さっさと上層行っちゃった方が良さそうね~。


 そんなことを考えながら、聖奈は二人の育成計画を修正し、菜桜と顔を見合わせて頷き合った。

 早くレベルアップして、できれば私服にも色々細工してほしいのだ。

 夏の暑さと冬の寒さをオシャレに乗り切りたい聖奈と、忍者一式が早く欲しい菜桜は本気であった。



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